16.迫り来る恐怖
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生徒会室が混沌と化している頃…渦中のアリーシアは
元凶のリリーに捕まっていた…
人気の無い静かな花壇…一人でスケッチをしていた
アリーシアは、この少し寂れた場所がお気に入りだった…
静かで小さな噴水もあり、花壇の先の奥まった所には
ガゼボもあったからだ。なので、たまに来ては花の手入れをしたり、噴水の周りの草を刈ったりと、友人の増えたアリーシアであったが、ここへくる時は一人で足を
運んでは少しずつ辺りを整えていた。
快適空間で一人の時間を過ごしていると話し声が聞こえてきた。
「ええそうよ、アリーシア様にそう言われたの…
ジュリアン様にお会いしたいって言っただけなのに、
子爵家を公爵家の力を使って潰すって…そうなったら
私を養女にしてくれたお父様にも申し訳ないし、
これ以上何かされると怖いから…
この話は絶対秘密にしてね…!
それと、貴方達も気をつけた方がいいわ…
あの方魔法が得意な女性は嫌いなんですって、
ほらっあの方のお兄様は二人とも魔法が得意だけど
ご自分は使えないから…きっと嫉妬するんだわ……
お互い気をつけましょうね、」
足音が遠ざかっていく…
きっと数名の女生徒が人気の無い場所で
他人に聞かれたく無い話をしていたのだろう…
『私の名前が出ていたわ…知り合い…?いいえっ…
私の友人達にそんな方はいないわ!皆様優しくて、
素晴らしい方達だもの』
"ガサッ"…自分の居ない所で、理由もわからない悪意を向けられていた事を知ったアリーシアは、ショックでその場に座り込んでしまった。
「誰かそこにいるのっ?」
『え…全員校舎に戻ったのでは?……離れたいけど…
…動けない…』
「なーんだ、噂のアリーシア様じゃない!」
「貴女…この前の図書館の…」
「ええ、貴女に脅された リリー カーター、爵位は
子爵よ!今度はきちんと名乗ったし、これで満足から?」
『満足かと聞かれても…それに私脅したりしていないわ…そもそもこの方…どうして私にこれほど悪意を向けてるのかしら…先程のもこの方が周りの方を煽動されていた様だし…』
「なんで黙ってるのよ!全く…これだから世間知らずのお嬢様は……まぁいいわ、あなたとは話がしたかったからちょうどよかった、今日こそはキッチリ答えて貰うわよ!……あなた転生なの?それとも転移?どっちなのよ?」
「待ってください…ほ…本当になにを仰っているのか…
てんせい…?天性?確か以前もそんな事を…
どういう意味なのですか?…」
私がヘタリと座り込んでしまったまま、彼女を見上げてそう聞くと、さらに興奮した様に声をあげた
「まぁたそうやってっ!!かわいこぶってっ!!
前世の記憶があなたにもっ、あるんでしょうっ?!
知らないとは言わせないわっ!あのぬいぐるみだって
キーホルダーだって、そんなの今までなかったって
街の人達も言ってたし、他にもあなたが発案者だって
されてるものが沢山あったもの!
私だって前世を思い出したのにっ!!
色々しらべて慌てて学校に入ったら…
王太子は卒業してるし…あんたはうろちょろしてるし…
でも設定は絶対私の方がヒロインっぽいもの!だから知っている事を教えなさいっ!」
「 …確かに…私は小さい頃から、私の知らない事を私は知っていていたり、急に経験した事もない事を思い出したり…出来なかった事が出来たり…とても不思議でした。でもそれがなんなのか、どうしてなのかは…
私にもわからないのです!」
「嘘よっ!シナリオやイベントとかあるんでしょ?
知ってて、知らないふりして…今までおいしい思いしてきたくせに、ここに来て悲劇のヒロインにでもなるつもりなの? あぁ…でもあなた…魔法は使えないんでしょう?残念ねぇ。私は使えるのよ?だから…
この世界が例えゲームや小説の世界ではなくて、
シナリオがないとしても、今度は私が前世の知識で…
ゲームみたいに攻略してみせるわ!…そうなると…
魔法も使えない、記憶も曖昧なあんたなんて…
例えモブだとしても、邪魔なだけなのよ、お願いだからこれからは大人しくしておいてくれる?
さもないと……」
彼女はそう、言いたいことだけを言って噴水の水を空中に浮かべた…そして、
「あなたには到底わからないだろうけど、水の魔法って凄く便利なのよ?手や体、傷口の洗浄…料理に掃除に…何にだって使えるし、1番役にたつ魔法だわ!…
それに嫌いな相手にイタズラしたり…こうやって大きくして顔を覆ってしまえば…」
私を蔑みつつ…嫌な笑いを浮かべながら水を小さな水滴にして飛ばしてきたが…急に彼女の手のひらに浮かんだ水の球が大きくなっていった……
『怖いっ!!だ…誰か!助けてっ……!!」
私は得体の知れない不安と恐怖を感じ…ギュッと自分の両膝を抱き込んで目をぶった…
「きゃあっっ!!なっ…なんでっ?!!!!!!」
私には衝撃も何もなく、急に彼女が悲鳴をあげたので、
目を開けると、彼女が水浸しになっていた…
それはもう、頭から全身…『何が…起きたの?…』
「…嘘っ…まさか失敗するなんて…!覚えてなさいっ」
ずぶ濡れで校舎に戻っていく彼女を呆然と見ながら
「忘れたくても…忘れられないわ……」
と、何が起きたかわからなかったが…腰が抜けた状態で暫く動けずに、その場で蹲って震えていた…。
関わり合いたくないし、近付きたくもないから
勝手にお好きにどうぞ、と言えないのがアリーシアなんですよね〜…(不憫…)
近いうちにスカッとズバッと言える主人公を書きたいと思います。




