12.自称ヒロイン現る!
出来上がっていくかわいいぬいぐるみに囲まれてアリーシアは幸せだったが、歳の離れた兄達は幸せそうなアリーシアを愛でるだけで、一緒に遊んではくれなかった。
そこでアリーシアは兄達と気軽に楽しめるものとしてけん玉を作った。最初の形はビルポケに近いものであった為、簡単に遊べたが極め癖のある兄達は自分達で改造して皿を作ったり難易度を上げた。
そうなるとアリーシアは手先の器用な庭師に協力を仰ぎ、けん先と穴を加えてけん玉の完成形を作り、体が覚えていたけん玉の技を披露して兄達を悔しがらせた。
屋内遊びに飽きると外に出て割れないシャボン玉を作ったり、庭に穴を開けボールを入れる回数を競ったりと
兄達とも沢山遊んだ。
アリーシアは公爵家のみんなに愛され、慕われ、
魔法に関する事以外は着実に自分を取り戻していった。
公爵家の中で完結し充実した生活を送っていたが、王家のお茶会をきっかけに徐々に世界が広がった。
学園に通い友人も出来て、順調に進学して…
アリーシアのぬいぐるみや小さなキーホルダーはあれから人気が人気を呼び、王都のお店や商人が扱う様になっており、小さい子や年頃の女性にも、平民貴族関係なく流行した。
そんな風に穏やかに学園生活をおくっているアリーシアのもとに、一人の女生徒が現れた。
「ねぇ、あなた転生者なんでしょ?」
アリーシアが珍しく一人で図書館で調べ物をしていると
不躾に話しかけられた…知らない生徒だ
「??あの…ごめんなさい…どなたかと勘違いを…」
「とぼけないでくれる?王子達や兄弟侍らせて、こんなのまで作って…とっても流行ってるそうじゃない?上手くやったわね、あとは誰を攻略するつもりなの?」
失礼が過ぎる…突然過ぎる未知の襲来にアリーシアが返事も出来ず、目の前に投げ出された可愛いぬいぐるみを…あ、黒猫可愛いわ…などと意識を飛ばしていると
「フフ…ヒロインが現れて焦っているのかしら?残念だったわね、王子達とはまだ婚約もしていないみたいだし、攻略途中のようだけど諦めた方がいいわよ!ここでは私が主役で、王子達もあなたの兄弟も皆私の事を好きになるんだからっ!」
本格的にどうしようかとアリーシアが困っていると、
本棚の陰から男子生徒が現れて声を掛けてきた。
「セイリオス公爵令嬢様、お話中に失礼致します…何かお困りではないでしょうか?」
「あっ!ラシュカール様……あの、…わたくしにもよく分からなくて…どうしたら良いのでしょう…?」
「はい、承知致しました。すぐにジュリアン様の所へ
参りましょうね。何もご心配いりませんよ。立てますか?」
「ちょっと!ジュリアン様の所へ行くのなら私も行くわ!それにこの子にはまだ聞きたい事があるのよ?勝手に連れて行こうとしないでよ!あらっ、あなた確かジュリアン様の腰ぎんちゃくの……って近くで見るとあなた結構イケメンじゃない、そうだわっ…」
「名前も名乗らず失礼な名無しさん?この方はこの王国の第三王子であるジュリアーノ殿下のご学友で優秀な側近であり、ボールドウィン侯爵令息のラシュカール ボールドウィン様です。あなた様の爵位もお名前もわかりませんし、いくらここが学園であろうとも、あなた様のボールドウィン侯爵令息様にに対する言動は見過ごせるものではありません。今すぐに謝罪なさい…」
「なっ!急に何よっ!さっきまでキョドッてたのに…本性を現したのね?みんなの前では猫を被って……」
「黙れ、女…それ以上口を開くな…さもないと一族まとめて消すぞ!」
「ひっ!……やめてよっ…そんな事出来るわけ…」
「出来るのです、この方も…そしてわたくしも…それだけの力と権力を、わたくし達の"家"が持っているのです…」
「はっ、結局は権力を振りかざしてんじゃない!覚えてなさいよっ!」
そう捨て台詞を残し、足を踏み鳴らして去っていった…
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