11.アリーシアの改革のすすめー1ー
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少しずつ増えてきてて、とても嬉しいです。
アリーシアの周囲は劇的に変化した。
友人達も増えたアリーシアは、話し方も雰囲気も気安く
柔らかくなっていったので、最初は遠慮したり萎縮していた生徒達も次第に親しむ様になった。
これまで公爵家の中だけで保有されていたアリーシアの
様々な知識や技術がじわじわと周知されていく…
アリーシアは小さい頃この世界を勉強し直す為、
自作の単語帳や辞書をイラスト付きで作った。
拙いものだったが、家族はそのアイデアと絵を褒めた。
ある日公爵家に雇われたばかりの下働きの使用人が
食糧庫で困っている所に出くわしたアリーシアは
その使用人の為にイラストを描いて箱や棚に貼り、どこに何があるかを示した。
ランドリーメイド達の所では下の兄の風魔法の力を借りて簡易洗濯、乾燥機のアイデアを出して感謝された。
庭師の所でトピアリーを教えたり花やハーブをもらい、兄二人に頼り氷と火と風魔法で良質のオイルを蒸留、抽出し母親にとても喜ばれた。
父親の執務室では城で働く当主の代わりに書類整理、仕分けをしていた家令、執事に付箋やインデックスを活用し細分化する事を提案して効率化に貢献し感謝された。
この世界で生きる人達は今までの様式や仕様が当たり前で、不便さや非効率さも感じてはいなかった。
その為アリーシアの発する疑問、要望そして希望に最初は疑念や驚きもあったが… 公爵家の大人達は使用人達も含めてとても優秀であった為、アリーシアの言う"こんなのあったらいいのに"だとか、"こうなるといいな"に打てば響く様に全力で反応した。
兄達にしても、可愛い妹に相談され遊びの延長で付き合っていたが、魔法の使い方、繊細な調節、鉱石や魔石を使った魔道具への造詣が深まり二人の能力は大幅に
アップした。
この世界の事を面倒くさい、不便だと感じたアリーシアが快適さを求め、ほんのちょっと人助けをしただけ(のつもり)だったのだが………
それは間違いなく公爵家を改革していった。
不便さが解消されていくと、今度は娯楽を求めた。
屋敷から外に出ないアリーシアは勉強や読書を楽しんではいたが、本来の子供の感覚も残っていたので
"遊び"を探したがなかった。なかったのでアリーシアは作った、文字通り1から…(この場合0からかもしれない)。
動物をデフォルメしたイラストを描きそれをぬいぐるみにした。それまで写実的なものや抽象的な絵しかなかったので、その動物達の新たな可愛さに周囲では衝撃が爆走した。
お針子さん達に協力してもらい動物達に服を着せ手足を可動させてと…かわいいに飢えていたアリーシアは止まらなかった…前世でもハンドメイドが得意だったのか、次々にアイデア(記憶と知識)が出てきたのだ。
例えば小さな洋服に既製のボタンは大きすぎる時には
スプリングホックを作った。お気に入りの洋服を作って貰った時は色んな子達に着回したくて、こはぜの留め方と掛け糸を増やす事でサイズ調整をした。もう1着作ったり、縫い直す手間もコストもカットである。
これにはお針子さん達だけではなく、この技術を聞きつけた公爵家お抱えのデザイナーが
「これは改革どころではなく革命だ」と叫びアリーシアの両親と何やら大人の話が進んだらしい。
トピアリ〜低木や植え込みを色んな形に刈り込んだもの
スプリングホック〜ファスナーの上とかにある、
ニッケルや真鍮の小さなホック
こはぜ〜足袋のかかとから足首にある留め具




