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105.


 アリーシアはレミントンの座るソファーの前に立ち、おもむろに抱きしめた…。「なっ!」とレミントン本人も周囲も驚く中…


「レミントン様、沢山沢山危ない目に遭い…沢山沢山辛い思いをして…沢山沢山…思い悩まれたのですね……それらの経験や思いを、わたくし達は推し量る事すら出来ません…しかし今その事を知りました。知り得たからには手を差し伸べる事が出来ます。なので…どうかわたくしに…心を委ねてください…。」


そう言ってレミントンの頭を優しく包み込み意識を集中させる…キラキラと輝く光に包まれ始めた頃、レミントンは行き場のない両の手をアリーシアの腰に回してその胸に顔を埋めた…。


その優しい光と神々しさはレミントンを癒し…オリビアも涙を流しているが…約…二名は…拳を握り締め奥歯をギリギリと鳴らしていた……。



光が収まり…瞳を涙で濡らし、頬を赤らめた顔を上げたレミントンはソファーから立ち上がり、アリーシアを抱き締めた。


レミントンの胸ぐらいまでしかないアリーシアはその身体にすっぽりと包まれ…「きゃっ」と声をあげる。


それまで動く事を我慢していた約二名が飛び掛からん勢いでレミントンを引き剥がそうとするが、レミントンはより腕に力を込めてアリーシアを抱きすくめる。


「ああっ!アリーシア様!私の聖女様っ!貴女の力を分け与えてくださったのですね!私の中でアリーシア様を感じますっ!」


「レミントン!貴様アリーから離れろっ!」

「レミントン様っ!その様な事を仰ってアリーシア様にくっつくのはおやめくださいっ!」


三十歳手前のこの国の高位司祭に対して遠慮がなくなった瞬間である…。


アリーシアはレミントン達を落ち着かせ、自分の事を話した。魔法ではなく聖力により妖精達と繋がり…そして聖女の力が使える事、妖精信仰が残るこの国の実態を知り、なんとか妖精達を助けたい事…それらを簡潔に告げ、一つ質問をした…。


「レミントン様…一つ確認といいますか…お尋ねしたい事があるのですが…」


「なんでございましょう?私にお答えできる事ならば何なりと!あぁ…でも申し訳ございません、その前に私からも一つお願いがございます…」


キョトンとするアリーシアと、苦虫を噛み潰し…更にすり潰した様な顔の二人…そしてそんな二人を見てハラハラするオリビア…。


「そんなに難しい事ではありませんから、そんなに警戒しないでください。…特にそちらのお二人…

アリーシア様、私に対する敬語をお止めくださいませんか?私は今アリーシア様の聖力が流れ込み…その聖なるお力に触れ、更に与えていただきました。そんなお方にその様に丁寧に話されると…恐縮してしまい、私は口をひらけなくなってしまいそうです…。ですので!どうかもう少し気安く…そして私との距離を縮めてはいただけませんか?」


「えっ!?…」

(困ったわ…歳上の…地位のあるお方に気安くだなんて…でも、お口が開けなくなるって…会話してもらえなくなってしまうのかしら?…困ったわ……それに、なんだかレミントン様が先程からシリウスが甘えてくる時と同じ感じが漂ってる気が……気のせいよね?それに…両サイドのお兄様とラシュカール様が…怒っている?……)


「如何ですか?私のこのささやかな願い、聞き届けていただけますか?」


「その…」と、アリーシアが困っていると


「フフフ…レミントン司祭?おかしいですね…先程私と二人でお話しした時の約束はお忘れになったのですか?それならば思い出せる様再度お話をしましょうか?二人で…。ね?」


ジェイソンがその長い足を組み人差し指で膝の上をトントンと軽く叩いている…


いち早くジェイソンを抑えようとラシュカールが口を開いてある提案をした。


「アリーシア様が聖女様と知ってしまった以上仕方ない事でしょう…アリーシア様も公の場で以外では許されては如何ですか?しかし気を許すのは話し方だけです。レミントン様もそこは弁えてくださいますね?」


アリーシアも兄の変化を感じ取り、ラシュカールの提案を受け入れた。


「レミントン様…これからも、よろしく…ね?…力を合わせて、がっ頑張りましょう…ね!」


「フフフ…はい。勿論ですアリーシア様…レミントンと呼んでいただいてもよいのですよ?」


「そっそれは!無理でご…無理よ…でもっ会話はなんとか頑張りますわんっ!っっ!…頑張るわっ!」


ジェイソンは片手で顔を覆い溜息をつきながらもアリーシアの可愛さに自分の膝を砕ける程握りしめ、


ラシュカールはソファーに倒れ込み、語彙力の無くなったアリーシアの噛み噛みを反芻して悶えていた。


オリビアは生温かく優しい眼差しでアリーシアを見つめ…自分が守らねば!と再度己に誓った。


問題のレミントンはみんなの視線が外れている事をいい事にアリーシアの頭を、撫でくり撫でくり…撫でまわした。


当のアリーシア本人は…誰も指摘してくれないのが尚更居た堪れなくて…両手で顔を覆って俯きレミントンにされるがままになってしまっていた…。



一方、その頃…(閑話)


「ジェイのやつ…俺を置いて行きやがって…

もしかして…転移の魔道具が完成してるのを隠してるんじゃあないだろうな?……クソッ!なんでこんなにヴァナルガンド絡みの仕事が多いんだ!いっそ潰してアリーシアを呼び戻した方が早いんじゃないか?」


ん!今何か嫌な感じが……まさかっアリーシアの身に何かあったんじゃ……」


慌てて席を立つエドワードを側近達が止める。


「殿下!大丈夫です、何かあればジェイソン殿のからすが知らせてくれます!」


「何かあったからでは遅いだろうがっ!えぇい離せっ!俺は行くぞっ、なんでジェイソンが許されて俺はだめなんだっ!」


(いや…あちらは兄君で、貴方は第二王子…)


「殿下、おっお願いいたします!第一王子であるアデルバート殿下が視察でいらっしゃらない今、貴方様まで隣国へ向かわれたら陛下がお倒れになりますっ!」


「陛下のあれは演技だっ!騙されるな!たとえ倒れてもセイリオス公爵がいる。この国は安泰だ!」


「そんなご無体な……」


それから側近達の苦肉の策で、アリーシアの姿絵がエドワードの執務机の上に飾られた。それが思った以上の効果を発揮してくれたので…エドワードの執務室にアリーシアの姿絵が少しずつ増えていったとか…いないとか……







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