104.
レミントンの母で前王の愛妾
| *レミントン(29)
前王 |
(異母兄弟)
| |
皇太后 *現王(41) ☆第一王子(幽閉)20
・現王妃 ☆アンリエッテ(王女)18
|(異母兄弟)
・側妃 キャルム(第二王子)18
そこから打ち明けられたレミントンの話は、彼が言う様に衝撃的な内容であった…。
レミントンと十二歳年の離れた異母兄である現国王は政略的な婚姻を結んだが、相手の女性はその意味をきちんと理解しており…国の為に私利私欲を捨て王妃としての責務をきちんと果たせる人であったのだが、
国母となった現国王の母親である皇太后は…我が子が国王となり目標を果たしただけでは満足しなかった…
王城に居座り、王妃を虐め…実権を渡さず権威を振りかざし、城を…国を我が物かの様に振る舞った…。
まだ若い国王夫婦も経験が浅い上に、母親という情が邪魔をしていた為…皇太后の増長を止められず、火消しや揉み消しなど、後手後手に回っていた…
気に入らぬ者は手にかけ、政敵や苦言を呈する者にも容赦をせず、慈悲なく牢に入れ…また処刑も頻繁に行われていた。
そんな時…かつての家臣達に泣き付かれた前王であるレミントンの父親は…共に暮らすレミントンとその母親に別れを告げ、城に戻り…そして…
我が正妃であった皇太后の首を刎ね…自らもその剣で自害した…。皇太后を好き勝手させた責任を取ったのであろう…と、誰もが前王の行動を責めず称えた。
対外的に、急病によって亡くなった皇太后の後を追って、以前より療養中であった前王も急逝したと周知を図った。真相を知らぬ者達はそれを美談として悲しみに添え…哀悼の意を表した。
先立つ覚悟であった前王はレミントンを、信頼のおける貴族達と養子縁組を済ませており、出生ロンダリングとも言うべきか…レミントンが将来を自由に生きられる様に手配されていた…
さらに前王はレミントンの母親へと、ヴァナルガンドの現王である…もう一人の我が子へと手紙を残し渡していたのだった。
レミントンの母は深く悲しんだが…前王の決断と深い愛情を幼いレミントンに伝え、貴族籍とはなったが教会で神学を学ばせた。
そして両親を一度に亡くした現王も、この時初めて異母弟の存在を知った…。いや…当時耳に入ってはいたが、他の側妃の子らと同様に消されたと思っていたのだ。
そうはならず…自分の父親から愛され守られていたその母と子に、思う所はあったが…手のつけられなかった皇太后の悪行に終止符を打ち責任を取った父親の事を、最期は国を選び…現国王である自分を守ってくれたのだと信じた。間違いなく自分にも父親と息子の絆があったのだと…。
しかしその手紙の最後に…弟であるレミントンは王族の籍を抜けており継承権も手放してはいるが…
『妖精の愛し子』であるから…意志を尊重し見守る様にと残されていた。
いきなりの事で、驚き困惑したが…既に王位につき、後継者である王子も生まれていた現王は、レミントンの所在を確認して把握はしたが、父親である先代の意志を引き継ぎ静かに見守ったのであった…。
それから月日は緩やかに流れ、神学を学んだレミントンは神官となり王都から離れた所の教会に属して、救いを必要とする人達の為にその身を捧げていた。
しかしその頃からヴァナルガンド王都周辺では、なぜか魔物が増え、瘴気の発生頻度が上がり深刻な問題とされ始めており、孤児院の視察に王都を出た王妃の馬車が襲われてしまった。
優秀な護衛達に護られ、大事には至らなかったが…魔物の襲撃に遭った王妃は魔物の噂を聞くたびに部屋からも出れず怯える様になった。
現王は王妃を安心させる為、弟レミントンの話したのだが…それを第一王子に聞かれてしまっていたのだ…
瘴気や魔物の問題が出始めている時に、妖精の愛し子の存在を知った王子が焦り…己を支持する者達を集めやらかしてしまった事でジェイソンの制裁を受けたのであった…。
レミントンは、自分の甥にもあたる第一王子の事を思い眉を寄せる…
「私にはなんの力もないというのに…」
幼い頃の記憶が曖昧である事、最近では気配を感じる事も姿を見る事も出来なくなってしまった事…これまで学んで身に付けた神聖力で、多少の治癒力があるだけで…何も出来ない自分の無力さを告白した。
「せめて聖女様のお力にとアルヴィナ様の言われるがままにお世話をしていたのですが…このままでいいのかという思いの葛藤があり……そんな時に…アリーシア様のお姿を見て、お言葉をいただき、心が震えたのです…。」
そう言って悲しそうに微笑むレミントンは、アリーシアの兄であるジェイソンよりも幼く見えて…泣いている様にも見えたのであった…。
間があいてしまい申し訳ありません!
少しずつ再会いたしますので…ブクマ外さずにいてもらえると嬉しいです…




