100.一方、その頃…
「それではお集まりの皆さん、よい午後を!」
そう言ったジェイお兄様は、私達と学園の門の外に出ると「ちょっと移動するからね」と言って風魔法を使って大きなお屋敷の前まで移動した。
どうやらセイリオス家所有の屋敷らしく、「食事が整うまで制服を着替えておいで」と言われ…私とオリビア様はお兄様達と別れた。
通された部屋には、色とりどりの可愛いデイドレスやワンピースが準備されており…数も沢山あったので、サイズにも困らなかった。 ただ…
「アリーシア様っ!こちら本当にわたくしがお借りしてもよろしいんでしょうかっ!?」
「もちろんです!そのまま差し上げますから、お好きなのをお選びになってください。」
「まーっ!どうしましょうっ!本当ですの?嬉しいですわっ!キャーッ!なんて事…こちらもっ…待って、こちらも素敵っ!」
オリビア大興奮…。それもそのはず…彼女は伯爵家の後継者として厳しく育てられ、普段の装いにしてもとてもシンプルで…装飾品に関しては、ほとんど身に付けていなかった。
しかしオリビア本人は、幼少期からの反動もあり…綺麗な物や可愛い物が大好き少女なので、この状況は己の日常では味わえない空間なのであった。
その上ジェイソンがアリーシアの為に用意した部屋はソファーやクッションなどにも抜かり無く、可愛いがそこかしこに溢れていた。
「お兄様ったら、わたくしをいくつだと思っているのかしらっ…もうっ」
と言いつつも嬉しそうにぬいぐるみを膝に乗せ、未だ興奮冷めやらぬオリビアと紅茶を飲み…一息ついたところで食堂へと向かった。
久し振りの兄と妹の再会に会話にも花が咲いた。
食事を終え…食後の紅茶がセッティングされたタイミングでアリーシアが口を開く。
「お兄様…帰国の件、本気ではございませんよね?」
「んー……アリーはどうしたい?」
「わたくしは…こちらに来たばかりで何も学んでおりませんし…何も成せてません。それに…何よりこの国の妖精達を救いたいと思っております…。」
「うん、まぁ…アリーならそう言うだろうと思ってた…でも…うちのみんなも、陛下もかなり怒ってたからなぁ…」
「お兄様…?陛下…?えっ…陛下がこの事ご存知なのですか?それにうちのみんなって……まさか…」
「もちろんうちの家族だよ、陛下も同盟撤回ぐらいはするんじゃない?」
「あぁっ……」
ソファーに座ってはいたが、ふらりと傾いたアリーシアの体を隣のオリビアがしっかりと抱きとめた。
ラシュカールはそのオリビアをジト目で見やりながら
「ジェイソン様、あまりアリーシア様の負担になるような事は仰らないでください。ジェイソン様が仰ると冗談に聞こえないのですから…」
「えーっ!王子の前で殺気を放った君からそんな事を言われるなんて!心外だなー!あの時僕はアリーシアを守った君を正当に評価したのにー!」
そんな二人のやり取りを聞きながら、アリーシアは…
(さすがに陛下が動かれる…なんて事はないわよね…きっとお兄様が大袈裟に言ってるだけだわ…)と、少し冷静になってきたので、ジェイソンに午後から予定がある事を伝えると…
「ああ、教会に行くんでしょう?私も一緒に行くから!行って件の不埒者の顔を見なきゃね…。そして何を考えてるか見極めないと!フフフ…」
(お兄様は何故教会だと分かったのかしら…?それにフラチモノ?お兄様…悪いお顔になってるけど大丈夫かしら…)
「ハァー…えらくお早いお着きだと思ったら…そちらが本命でしたか…」
納得がいった…と、ラシュカールは一人頷きながら…お節介だと知りつつも…レミントン司祭の心配をするのであった……。




