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1.始まり

はじめまして、

この作品を選んでいただきありがとうございます。


初投稿作品ですので、何かと至らない点も多々あるかと思いますが少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 花の香りと子供達の可愛らしい声に、その場にいる誰もが穏やかな表情でお茶会を楽しんでいる。


 10歳までの子供達が集められ、それぞれ思い思いに過ごしており、男の子同士で騎士団の話で盛り上がっている所や、淑女教育の大変さを分かち合う女の子のテーブル、流行りのスイーツやお互いの興味のある事で情報交換をしている男女混合のテーブルなど、幼いとは言えそこは確かに社交の場であった。

 ただ一カ所を除いて…


「はぁ……疲れたわ…」

 

 盛り上がっているテーブルから少し離れた所にあるイスに1人で座り花を眺めているアリーシアは疲れた顔でそっと溜め息をつき、7歳とは思えないほど物憂げな表情で今日のお茶会について考えていた。


 この国の貴族の子供達は今日のお茶会を楽しみにしていた。

 王子王女を含めた伯爵以上の高位貴族の子息令嬢による王家主催のお茶会、ここで様々な繋がりを持ち顔を売る。気が合えば婚約まで話がいくこともある為、子供達の親にとっても大事なお茶会をこの少女は煩わしくも感じ、めんどくさいと出席するのを渋って両親や兄達を驚かせたのは、このお茶会の招待状が王家から公爵家へと届いた一ヶ月前の事であった。



「はぁ、お父様?体調不良で欠席する事は出来ませんの?」


「はっ?アリー?何を言っているのだ?」


 いつもは冷静沈着で表情筋があまり動かず周囲から氷狼公爵と呼ばれ国の宰相としてとても優秀で陛下より信頼を得ているアリーシアの父親は、濃い青の髪色にシルバーの瞳で、その狼に例えられる鋭い顔を珍しく驚きの表情に変え娘アリーシアに問いかけた。


「だって、準備をするのも…知らない子達と話すのも、王城に行くのも……いいえ、家から出るのだって面倒なんですもの」


(そう言ってシュンとする我が娘のなんと可愛らしい事っ!)

 そうなのだ、氷の狼は見た目だけで娘溺愛のただの親バカであったのだ。口には出さないが。


「ンンッしかしアリー?面倒とはいえ我が公爵家はこの国を代表する貴族である事は知っているだろう?」


「……わかっていますわ。でも、今回のお茶会には王子様達も参加されるそうですし……参加される方達の人数もとても多いのでしょう?」ーシュンー


(シュンパートツー!!まだ幼いのにきちんとした話し方が出来た上でのたどたどしさ!可愛い!)

「アリー、アルもジェイも参加するのだから心配する事は何もないのではないか?なぁ二人とも」


 そうやって父親に問いかけられた長男のアルフレッドは、父親似のクールな表情の銀髪で父親と同じシルバーの瞳、アリーシアより6歳上で13歳。

 次男のジェイソンこちらは青空の様な明るい青い髪色で琥珀色の瞳の表情穏やかな5歳上の12歳。


 この国の第一王子、第二王子と同い年で幼馴染みである二人は、今回のお茶会の年齢制限から外れてはいるのだが、いわゆる側近候補というかお目付け役というか、友達枠での強制参加となっているそうだ。


「父上、確かに私達も参加する(させられる)のでアリーの事は心配ないですし、高位貴族としての義務もあるかと思いますがアリーが嫌がるものを無理矢理には……ジェイ、お前はどう思う?」


「そうだね、アリー、初めての人達ばかりで不安なのはわかるけど友達を沢山作る機会でもあるんだよ?」


「確かに、兄様達が参加されるのであれば安心感もありますし…心強いのですが、その…わたくし女の子のお友達もおりませんし…あの…その……お友達になっていただく方法も…わかりませんの……」ーウルッー


(((ンーーーッ!!

    モジモジからの潤んだ上目遣いッ!!)))

              ー父親プラス兄二人ー


 悶絶する我が家の男達3人を横目で見つつ、真っ直ぐな銀髪に琥珀色の瞳をした絶世の美女を現役でいけそうなアリーシアの母親キャサリンは、香りの良い高級な紅茶を一口飲んだあと、次男のジェイソンそっくりの柔らかい表情で


「ねぇアリー、今回参加しなくても来年でも再来年でも10歳になってからでも大丈夫よ、でもあなたの礼儀作法は7歳とは思えないほどしっかりしていますし、話し方も気弱に感じる時以外はきちんと話せるでしょう?

少々自分の事に無頓着で面倒くさがりな所もありますが、何より私達家族の自慢の娘なのだからどこに出ても自信を持って堂々としていていいのよ、それにお友達を作るなら早い方がいいわ、心配しなくてもアリーなら周りがほっとかないと思うのだけれど、だからもう少し考えてみてはどうかしら? ね?あなた達もそう思わない?」ーコテンー



(((この母にしてこの子ありーのアリーシア)))



この家の男どもは3人揃って…

見た目は完璧なのだが中身はちょっとアレだった……



「ふう、そうだな。キャシーの言う通りだ、アリー?もう一度よく考えておきなさい」


「アリーは私達を頼って、母上の言う通り自信を持てば良い」


「フフッ、アリーは僕達の自慢のお姫様なんだから何も心配いらないよ!だからアリーの気持ちが決まってから返事は出そうね」


「……はい、そうさせていただきます。お父様お母様、兄様達も……心配かけてごめんなさい。でも…でも…ありがとうございます!」ーモジッニコッふわっー



((( 天使降臨ンーーー!!! )))

       ー両親と兄二人プラス壁際の使用人達ー



公爵家のサロンにて家族と王家主催のお茶会について話をして自室に戻ってきたアリーシアはソファに座り専属メイドのエミリーに甘い紅茶を淹れてもらいのどを潤していた。


「自信なんて…ないわ……」


 そう呟くアリーシアはフワフワの銀髪に紫色・・の大きな瞳、陶磁器のような滑らかな白い肌、紅をひかずとも赤くムチュッとした可愛らしい唇…そうなのである、とてもとても可愛らしいのだ!


 世の全ての世代の女性達に人気を博している公爵家の男達を、そして公爵家の使用人達男女問わず虜にしているアリーシアはなのに何故か気弱なのである。


 その理由は、アリーシアが5歳の誕生日を迎えるまだ前、今よりも幼い頃のある日専属メイドのエミリーに髪を結ってもらっている時にふと呟いたのである、


「なんで私の髪はお母様みたいにまっすぐじゃないのかなぁ?フワフワしててまるで綿菓子みたいだもん」


「お嬢様?綿菓子とはなんですか?それに喋り方が……」


「え?綿菓子ってあのフワフワの、あれ?なんだろ…?…?」


「お、お嬢様!?どうされたのですか」


「わたし…なんだか  頭が… いた い  の… 」


 俯いたまま頭を押さえて汗をかき苦しそう息をするアリーシアを見て慌てたエミリーは、アリーシアをベッドへと運び部屋を飛び出して執事のヘンリーに状況を伝えた。


 長く公爵家に仕えている執事は迅速に医師を手配し、城で宰相をしているこの家の当主に報せを言葉通り魔法で飛ばしながら他の使用人達に指示を出した。



 部屋でうなされているアリーシアの元に駆けつけた母親キャサリンは苦しそうな娘の小さな手を握りしめアリーシアに呼びかける。その横でエミリーもアリーシアの額の汗を拭いながら必死に声をかけている。


 そこへ専属の医師が部屋に到着してアリーシアの診察を始め一通り様子を見た後、原因はわからないが高熱なので予断を許さない事と、熱を下げる為の指示と薬を出して意識も朦朧としているアリーシアに飲ませた。


 医師が待機をする部屋に下がり、薬のおかげか幾分呼吸が楽になりつつあるが時折うなされて何か呟いているアリーシアを、ようやく部屋に入れてもらえたまだ幼い兄達と、城から急ぎ帰ってきた父親が心配そうに見つめている。



 アリーシアが目を覚ましたのはそれから三日目の早朝だった


『ン、身体がダルいわ… あ、朝かしら? 』


 アリーシアがうっすらと目を開け、身体を起こそうと少し動いた時、近くにいたエミリーがそれに気付きベッドへ駆け寄りアリーシアに話しかける。


「お嬢様!目を覚まされたのですね!あゝ神様!女神様!精霊王様!ありがとうございます!」

滂沱の涙を流しながら叫ぶ勢いで感謝の言葉を口にするエミリーを落ち着かせようと声をかけようとするが、声が掠れてうまく話せない。


「 エ ミリー コホッ!コホッ!」


「お嬢様!無理をなさらないでください!すぐにお水をお持ちします」


 騒ぎに気付いた他のメイドや使用人達が迅速に動き、家族と医師がアリーシアの部屋に集まった。医師のもう心配ないが体力が落ちているかもしれないので暫くは安静に、との言葉を聞き、皆一様に安堵しエミリー同様、様々な神々に心から感謝の祈りを捧げたのだった。


 これにより公爵家は使用人達も含め、以前にも増してアリーシアへの過保護が加速したのである…


 しかし当の本人はと言うと……

(お気付きの人もいるかと思うが)

そう、前世を思い出していたのである!ただしなんとなく…なんとなーく曖昧な記憶が、 夢かと思えてしまうような…だけど、知らないはずなのに知っている知識や言葉…それらの説明が出来ないのである。なのでアリーシアは自分自身が納得して受け入れれるようになるまでとても時間がかかった。



 確かに自分の顔なのに違和感を感じてしまい、公爵令嬢として早いうちからの淑女教育から知識、話し方に至るまで確かな記憶があるものの、それとはまた別の大人びた考え方、全く新しいこの世界にはない知識など、まるで別人になってしまったかのように感じてしまう時があり、元々とても真面目で穏やかな性格ではあったものの、その心の内に抱える不安を誰にも話せず、そしてその不安を打ち消す為に様々な事を学び直した。


 無意識に理解し出来る事…例えばカーテシーや食事のマナーなどを、自分でしっかりと理解して行動したかったのだ。ただし前世の(と言っていいのか)性格が影響した……してしまったのである…。


 どんなに勉強してもどんなに頑張っても、マイナス思考で自信が持ず、意思表示が苦手な気弱な陰キャな性格に、今世のビジュアルが乗っかっているので、今では庇護欲刺激しまくりの完璧美少女(無敵)が爆誕したのである!





この、

【天然無自覚気弱小動物系最強美少女】な感じの盛り盛りアリーシアが、なんとなく覚えてる知識からなんとなく発した一言で旋風を起こし、本人の知らないところで着実に信者を増やしつつ、過保護に溺愛されてチートする物語…今はまだ子猫だが、最強さいつよチーターへと成長するのはもう少し先のお話である。




少しでも、

面白かった!続きが気になる!と思っていただけるよう頑張りますので応援していただけたら嬉しいです。


誤字報告して下さった方、ありがとうございます!

エミリーがメアリーになってました!

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