真実の演目
第一話 「全ての始まり」
とあるサーカス会場で一人の男がスポットライトに照らされている。
観客席には誰も居ない。
そんな事は気にせず、男は舞台の上で華麗にステップを踏み始める。
同時にコミカルなワルツが流れ始め、ショーの始まりを告げた。
赤い燕尾服を纏い、右手にはステッキを持っている。赤いシルクハットを深く被っているため、表情は確認しずらいが、口角は上がっていた。
男が中央でターンを華麗に決めた瞬間に音がピタリと止み、会場は一気に静かになる。
男は深くお辞儀をし、両手を広げると会場中に響き渡る声で高らかに話し始めた。
怪「レーディース&ジェントルメーン!!今宵は新月、私の時間だぁ。【正義】とは、おのが正しいと信じる【傲慢】【悪】とは、大衆により淘汰される【強欲】【正義】も【悪】も全て、私にとっては【喜劇】にしかならない。」
静かな会場に響く美声。
演劇が始まろうとする。
怪「今宵は新月!闇に飲まれたピエロたちよ!私の【喜劇】の為に、偽って踊り狂え」
ーギギギィー…。
その言葉が合図だったかのようにサーカス会場の扉が開き一人、入って来た。
何も言わずに席に座る。
怪「ようこそ。おいで下さいました。ここは【真実】を見る場所。あなたの脳に刻まれている真実をここでお見せしましょう」
怪「始まりは、そうですね。とある事件が始まった時からですかね。」
怪「あの事件から、全て始まりました。」
怪「男は、ある日とあるラーメン屋で昼食をとっていた。」
怪「時刻はちょうどお昼時」
怪「人も多く、賑わいを見せていた。」
怪「そんな中、ふと顔を上げるとテレビで速報が流れていた。」
怪「そのニュースは最近都内を騒がしている連続殺人についてのニュースであった。」
怪「男は、その事件にどうしようもなく惹かれてしまった。」
怪「この殺人犯は現場に右腕だけを残していた。」
怪「何故?」
怪「男の頭の中その考えで埋め尽くされた。」
怪「止せば良いものを、その事件を一人で調べ始めてしまった。」
怪「被害者達の共通点、事件が起こる場所、時間帯、天候、さらには、洋服の色や形までも調べ上げた。」
怪「…………異常だ。」
怪「だが、彼はどうしても知りたかった。」
怪「何日もかけて調べ上げ、遂に」
怪「男はとある場所に辿り着いた」
怪「着いた場所は何年も前に倒産した廃ビル」
怪「当たりには瓦礫や鉄パイプが置いてあり、到底人が立ち入るような場所ではない」
怪「では?何故こんな人気の無い所を男は選んだのか?」
怪「答えは簡単」
怪「次の殺害場所がその廃ビルだった」
怪「それだけ」
顔を上げる
疑問とも不服ともとれる
苦い表情をしていた
怪「その顔は…」
怪「「答えを知りたい」」
怪「ふふッ」
怪「貴方は「「事実に飢えている」」
怪「心の腹を全て見る事など不可能なのに!!」
怪:「フフフフフ!!」
体をそらせ
顔に手を当てながら高らかな声で歌うように笑う
面白いのか、呆れているのか、怒っているのかは
顔を隠している為分からない
暫く笑うと、咳払いをし、ステージの中央に戻る
怪「いいでしょう!」
怪「そんなにも知りたいのなら!!」
両手を広げ天井を見上げる
それが合図だった
怪人の後ろにスクリーンが下ろされる
客席の真ん中には映写機が
いつの時代のものかは分からない
ガシャンと言う音と共に映像が映し出された
写っているのは大量の鉄骨や、コンテナ
そしてその中心には
手術台のような机が置いてあり誰かが寝そべっている
足の裏が見えるだけなので男か女か子供か大人かは分からない
そして横に1人の人間が立ってた。
長い黒髪が美しく靡く
女性のようだった
怪「これは、とある青年の見た景色そのもの」
怪「では、ご堪能ください。」
深深とお辞儀をし、怪人のスポットライトが消えゆく
その途端に映像が動き出した。