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どうして、自治権を持つ領主は女性を蔑みがちなのか?

「もう少し離れて歩いてくれませんか?」

坂出はリリィと0距離で街を歩いている。リリィは食い込まんばかりの勢いで坂出の左腕と左脇の間に身体を潜り込ませている。

「それと、その格好… 肌の露出が多すぎませんか?」坂出は顔を背けながらリリィに話しかける。

リリィの姿は腕やへそが出ており、下もキワドイことになっている。

「ふぅん… やっぱり魔力ハンパないね」リリィは感心して見せた。

「どういうことですか?」

「傍目には、私はダボダボのボロを着てるように見えるんだよ。 魔力でそうなるようにしてるからね。 だから本当の姿が見えるのは私よりも魔力値が高い人だけなの」

「ボロですか… それはそれで、なんか悪い気がしますね」

「…貴方がいた世界がどうなのかは知らないけど… こっちの世界じゃ普通だよ。 見てみなよ」

坂出は辺りを見渡すと、豊かな装備を付けた男性が多い一方、女性の衣服は質素なものが多い。

そういえば、と坂出は先日の不幸なパーティを思い出す。

男性たちと女性たちの装備は、素人目に見ても明らかに異なっていた。

(確かに、この差は少し気になるな… 先陣を切る人間の装備が厚くなるのは分かるが… 例えばあそこのパーティは… 女性が武道家かな? そんな服装っぽいが至って軽装だ… あんな装備で大丈夫だろうか)

「ちょっと見れば分かるでしょ? この世界では、女性たちは… 虐げられているんだ」

「それは… 見過ごせませんね」坂出は目と目の間に指を置いた。

「ねぇ… お腹すいたな」

「お腹ですか… 確かに私も… けど、私この世界の通貨を持ってないんですよ」

「大丈夫、私持ってるし。 あ、じゃあ、先にギルド行こうか? ゴブリン討伐の報酬もらおーよ」

坂出はリリィに引かれてギルドへ向かった。



ー冒険者ギルド

ギルド受付はリリィに挨拶をした「こんにちは… リリィさんと… 見かけない方ですね」

リリィは「ごきげんよう」とあいさつを返す。

「リリィさん。 この度は大変でしたね。 ご愁傷さまです」

「お気遣いありがとうございます。 彼らのおかげで、私と彼女だけはなんとか助かりました。 感謝してもしきれません」

「後で、保険もありますので手続きご案内しますね」

「ありがとうございます。 お願いしますね」リリィは丁寧にお辞儀をした。

坂出は小声でリリィに声をかける「…どっちが本当ですか?」

「え? いやですわねぇ… 何をおっしゃってるのかしら」

坂出はちゃちゃを入れまいと肝に免じた。

「私は保険の手続きをしてるから、ギルドの登録をしてきなよ。 受付はあっちね」

「あ、ああ。 行ってきます」坂出は受付に声をかけて登録用紙の記入方法を確認した。

登録受付担当者は坂出に笑顔で応対する。

「初めてですか? 以前にどこかで登録していたことはございますか?」

「初めてです。 恥ずかしながら、一切分かりません…」

「そうですか? それでは、まずはこちらの用紙の太い枠の中に必要事項をご記入ください」

そういうと、登録担当は一枚の板を手渡した。

坂出は板をまじまじと見る。

(ふむ… タブレットみたいだな。 板の真ん中を押す… 画面が出てくるのか、言語は見慣れないが、意味は分かるな… 名前、出身地、年齢、スキル、実績、ランク… 戦闘スタイルの所に接近戦や後方支援、僧侶なんてのがあるのか… 職業ではないんだな)

「あの、住所とかは?」

「住所? なんのことですか?」

「ああ、住んでいるところです」

「住んでいるところはコロコロ変わりますからねぇ。 あてにならないんですよ」

「でも、急ぎの連絡とかは…」

「急ぎで連絡することは基本無いですからね。 まあ、何かあったときは出身地に連絡しますから」

「…ああ、そうなんですね」坂出は必要事項を埋めていく。

「スキルや実践、ランクはギルド登録自体が初めての方は飛ばしてくださいね」

坂出は入力できるところを埋めて、受付担当に手渡した。

受付担当は板を受け取り、奥に持っていく。

「それでは、登録をしますので、少々お待ちくださいね」


坂出はリリィの方へ行く。

リリィは受付で報酬受け取りと保険受け取りの手続きをしていた。

坂出がチラリと保険申請画面を見ると、全額あの女性が受け取るように入力されていた。

「…優しいんですね」

「…極悪人だよ」

「いいんですか? 全部渡して」

「いいさ。 私は金に困ってないし」


リリィは表情を見せないようにうつむきながら、板を提出しに行った。

リリィはジャラジャラとお金を両手いっぱいにもって戻ってきた。

そのまま、それを坂出に渡した。

「え… いいですよ。 そんなに」

「そんなこと言うなよ。 全部貴方の手柄なんだからさ。 素直に受け取りなよ… それに」

リリィは続ける。

「それに… 女性がお金を払っても受け取ってくれない店もあるからね」

「…何ですかそれは? どういうことですか?」

「んー。 店によってはね。 単に女性を下に見ている人、自分で稼いでないから受け取らないって人、余裕で払えるほど経済的に豊かな女性は売女ばいた扱いしてさげすむ人。 色々なのよ」

「なんて… なんて失礼で、野蛮な考えですか…」

「特にこの街はひどいわよ。 領主のせいね。 まあ、私はいいところの家に入り込んでるから、そういう人間は別… 特別扱いされるの… もっともそれは政略結婚の材料になるからだけどね」

「なんと女性蔑視で無知蒙昧で、時代錯誤な考えの持ち主か。 生かしてはおけん」

坂出は爪が食い込むほどの力で拳を握りしめた。

「残念ながら、ギルドの依頼に領主討伐はないわよ」

「じゃあ、個人的に行くまで」

「待ちなさいよ。 そんなことしたら、速攻で登録抹消よ」

「え… この世界は弱肉強食の世界では?」

「そうだけど… 権威はあるのよ。 各街の領主は自治の権利を持っていて、大陸共通のきまりをベースにしていれば、結構極端な決まりでも作ることができるんだよ。 まあ、さすがにあまりにひどいものは出せないけどね」

「自治ですか…」

登録担当窓口から坂出を呼ぶ声がする。

「イデさん。 イデさん」

坂出は窓口へ行く。担当者は困ったような表情を浮かべながら坂出に質問をする。

「サカーイデさん。 出身地の神奈川とはどういう場所ですか? 大陸中を探しても見つからなかったんですが…」

「ああ… すみません。 ええーっと、地図を見せてもらえますか?」

坂出は地図を借りて、それを広げる。

(これがこの世界の地図か… 後で買うとして、形はなんか、ユーラシア大陸みたいだな…)

「ええーっと、ごめんなさい。 今ってどこですかね?」

「今は、このコーヤという街です」

「ああ…ありがとうございます。 ええーっと、ここですね。 このフロムという村です」

「ああ、そこですね。 分かりました。 ありがとうございます。 もう少々お待ちください」


坂出は無事に登録を済ませて、登録証と呼ばれるカードを手に入れた。

(文明がすすんでいるのか、遅れているのか… 分からないな。 いや、元の世界と技術も違うようだし、別のものと考えた方がいいかな。 この世界での魔法がどんなものか… よく聞いてみないとな)


挿絵(By みてみん)

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