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私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(正位置編)

彼女なりの正義(正義の正位置)

作者: 死神の嫁

正しさは、押しつけるものではない

「して、主よ。以下の点から察するに、主はこのことをどう捉える?」

「えっと……本来の意味を考慮するとこうなるけど……」


 彼女の声を聴くと、倫理的に物事を考えられるのは気のせいではないのだろう。


 彼女の名は『正義』の正位置。カード番号は11で、主な意味は『正しい判断・誠実な相手・律儀』である。

 彼女には時々、占いをした際のそれぞれのカードの解釈について意見を求める時がある。常に倫理的に物事を考え、意見を述べてくれる彼女は嫌な顔一つせずにいつも教えてくれるのだ。


「今回の議題をもう一度考え直してみるといい、本来の意味で解釈すると違和感が生じるだろう。ここでは本来の意味に捉われず、別の意味で解釈するとまとまりが出る」

「別の意味って……そう解釈してしまってもいいものなの?」

「ならば聞くが、主は『正義』とはどういったものだと思う?」

「正義……正しい行い、とかかな?」


 私の解答に頷きながら、彼女は続ける。


「その主が思う正義は、他の者も同じように捉えていると思うか?」

「同じように……とは限らないかも。人によって解釈は様々だし、自分が思う正義が人にとっては悪になりうることもあるだろうから……もしかして、そういうこと?」


私の言葉に満足そうにしながら、彼女は少しだけ険しい顔をしながら言った。


「そうだ。基本となる意味は存在するが、それがいつも当てはまるとは限らない。占いに同じ解釈がないのもその一環だな。

私たちカードは、占われる側の心を読み解きそれに合わせて答えを導き出す。ここで出す答えは、その占われる側にとっての答えであって全ての者に対する答えではない。

私もそうだ、正義という名を背負ってはいるが私の思う正義と主たちが思う正義とは異なるだろう。私の名を持って何を証明すればいい? 人によって変わる価値観や正しさは、人それぞれが持ち合わせるからこそ意味を成すものだ。それを私の持つ『概念』だけで変えてしまってよいものなのか?」


 カードたちの中には、彼女のように自分の持ち合わせる意味を主張せず、私たちに寄り添い、同じように考えてくれる子もいる。

 特に彼女は、意見の押し付けをせず、先ず話を聞きだしてからゆっくりと消化してくれる。混乱している事柄を整理し、一つ一つに区切ってから向き合わせてくれるのだ。それが非常に有り難くもあり、時々申し訳なく思う。彼女の本来の仕事に沿っていないんじゃないか、彼女に気を遣わせているのではないかと。


「……何を気にしている、私が望んでしていることだ。主の力になることが、私の本望だからな」

「正義さん……ありがとう。私ね、正義さんが掲げる『正義』の意味は、常に人に対して誠実で優しさと強さを持って接するってことだと思う。正義さんがいてくれるから、私はカードさんたちのことを私なりの解釈ではあるけれど理解できるんだと思う。

最初に正義さんが言ってくれたでしょ? 参考書は買うな、己の目で感じたものを信用しろって。あの言葉がすごく嬉しかった。私なりでいいんだって、その時初めて思えたから」


 彼女の表す意味は、正しさだけではない。誰よりも情に溢れ、個を大事にしてくれる優しさがいっぱい詰まった愛情を持って、接し時には叱ってもくれる。そんな優しく強い、お姉さんだ。


「あ、あまり褒めるでない……次の議題に行くぞ!」


 訂正……優しく強く、照れ屋さんで可愛いお姉さんだ。

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