異世界 ➖4➖
ジャスは、動かない紅の目の前まで走って行き、そして軽く飛び上がり、紅の胴に目掛けて剣を本気の力で振りかざした。
ジャスがこの城内で一番強いことを周りの人達は知っている。
振り下された剣、それが何も防御態勢をとっていない紅に耐えられるはずがないのだと思われた。
誰もがただでは済まない、下手をすれば死ぬのだと確信して固唾を呑んでいたその一瞬、誰もが予期せぬことが起こり、一同は驚きの表情を隠さずにいた。
───紅は、その振り下された剣を右手のみで受け止めていた。
「何っ!?と、止められた!?素手で…だと」
正確には素手ではない。P.Aのスーツを纏っているその腕で掴んでいる。
傷跡や出血は一切見えず、スーツへの損傷も一つもなかった。
相当な衝撃もあっただろうがそれも全てP.Aが吸収しているので、無傷で済んでいる。
呆然としていたジャスだったが、なんとかしようとその剣を引き戻そうとするが、びくともしない。
紅はその剣をがっしりと掴んでいて、何も反動がなかった。
そして徐々にその握る力が強くなっていき、その剣は少しずつ曲がっていった。
「な、なんて力が───」
(パリーン)
そして、その剣が中央部分から真っ二つに折られたのだ。あまりの出来事に兵士達も静まり返っていた。
「貴様…!」
驚いたジャスを前に、その剣を地面へと放り投げた。
「な、どうしてこんな力が…!」
ジャスは驚愕し、そして思っていた。
魔力があるようには感じられない…何かの能力を使っている気配もないのに、この力は一体どこから…。…しかし、私も魔力さえ使って本気を出せば…!
「わかったでしょう、ジャス。この御方は強大な力を有しています。皆様もお分かりになったでしょう?」
リナリアのそんな言葉に城内の人々は向き合って承知したようにして頷き、戦闘態勢を収めた。ジャスも、今は仕方がないと受け入れ、その持っていた折れた剣を下げた。
だが、依然強ばった表情でジャスは問いかけた。
「…しかし!貴様、何故発砲した!」
「当てるつもりなんてない。正確な答えを聞くにはこれが一番手っ取り早いと思ったからだ。…俺はここへ何かの手段で連れて来られたのは理解している、敵視しないわけがない」
「それでも撃つなんて…正常な判断とは思えない。…それに、何も嘘なんてついてはいない、本当のことしか言っていない!」
「異なる世界だの適当なことを言うからだ。次におかしなことを言えば本当に当ててしまうかもしれない」
「おかしなことではない!本当のことだ!」
「…何?」