異世界 ➖3➖
「おい、ここはどこなんだ、本当のことを言え」
「で、ですからここは貴方様のいた世界とは別の世界なのです。動揺されるのも無理がないと思われ───」
(パァーン)
そんな話の途中のほんの一時である、銃声がその空間に響き渡った。
その姫であるリナリアの髪が舞い上がり、リナリアの顔の数センチ横の椅子に、銃弾がめり込んだのだ。
その光景に周りの人々は言葉も出ない状態だった。
その一瞬のことに、リナリアも流石に顔色を変えて怯えていた。
「な、なんてことをするんだっ!!」
王様と言われるそのフェルールが怒鳴り声で憤怒していた。
辺りの兵士であろう人達も、剣を抜いて臨戦態勢をとっていた。
紅は、本当に撃つつもりはなかったがあまりにふざけた答えを出すので堪らずに発射してしまったのだ。
だが紅には、例えここにいる人数を相手にしようが振り切る自信があった。
「本当のことを言え、ここはどこなんだ」
「そ、その…で、ですから…」
リナリアはあからさまに動揺して声も震えていた。
「無礼者がーっ!」
そんな時、そのリナリアの近辺の後方に位置していた何者かが、勢いよく走り出して紅の方へと向かっていった。
鎧に身を纏っていて、頭を覆う兜のようなものを被っていたが、そこから見える顔や声から察するに女性とわかった。
そんな女性が、険しい表情をしながら剣を構えて紅の方へ一直線に突っ込んでいった。
「やめなさい!ジャス!」
そんなリナリアの言葉も無視してジャスと呼ばれるその女性は動きを止めなかった。
突然に襲い掛かろうとするジャス、物凄いスピードで近づいてくるのに対し、紅は咄嗟に体が…いや、強化された脳と神経が即座に反応して、構えていた拳銃でジャスの左足の膝下に正確に発砲した。
しかし、その銃弾はジャスの鎧部分に当たり、それが弾かれ、その弾は城壁まで飛んでいったのだ。
城内の者達は、その瞬時の超高速の銃撃に恐れ、ジャスもその速度に全く反応できずに固まってしまっていた。
だが、ジャスは怯まずに再び向かっていった。
一方紅も、その銃弾を跳ね返す程の鎧に驚いていた。
弾いただと…?この銃、精密に作られた弾丸を込められているというのに…。
微かに傷はついているように見えるが、貫通することもない。並の鎧程度なら貫けるはずだが、相当頑丈な鉄製の素材でできている…。それぐらいならば作れなくもない、しかしそれを全身に纏ってこの速度で走ってこられる…只者ではないようだ。
足を止めて戦闘態勢を鎮めるつもりだったが…どうやら一筋縄ではいかないようだな。