異世界 ➖2➖
紅は全く状況が飲み込めていなかった。
異なる世界、紅はそんなことを信じるはずがなかった。
これは…やはり、また何か新手の兵器の仕業に違いない。
紅は、度々敵国の使う知られざる新型兵器と対決して翻弄されていたので、これもその一種かと考えていた。
しかし、これだけの人数がいて誰も襲って来ようともしない…一体何が目的なんだ。
辺りには腰に下げた剣や、謎の杖を所持しているものもいる。
武装はしているのか…?だが、対抗できるような武器にはとても思えないが…。
臨戦態勢でもなく、皆が珍しいものを見るかのように紅を見ていた。
「あの…紅様?」
状況把握をしている時、リナリアなる女性は不思議そうな顔をしながら紅の様子窺っていた。
リナリアは、どこかしら声までも妹に似ていて、紅は苛立ちを覚えた。そんな思いで顔を顰めていた。
…どうしてこんな人物と妹を間違えてしまったのか…。
いや、違う。間違えたのではない、そこにいて欲しかったと思っていたのかもしれない。
紅は、行方不明になった妹のことをずっと探していたのだ。それで、妹の名前を口にしてしまったのである。
そう、リナリアの顔を見たその瞬間に思い出していた。あの、忌まわしき日のことを…。妹を守れなかったその日のことを。
何度も思い出す…あの時、無力だった頃の紅が妹の手を掴むことができず、尊を救えなかったあの日のことを…。
───いや、そんなことより現状の確認だ。
何者なのだ…この女。日本人とはとても思えない風貌だが、流暢な日本語で喋っている…。
…そんなことを考えている間も無く、主力兵士である紅は思い出していた。
紅は最前線の最中、突然こんな所に登場させられたのだ。
紅がいなければ日本軍の戦力は相当削られる。今はこんなことをしている場合ではないと紅は焦っていた。
紅は、その女性に目掛けて腰に下げた通常サイズである拳銃を手に取り銃口を向けた。
「ふざけたことを言うな、どんなトリックを使ってこんな場所まで連れてきた」
城内の人々は一層騒ついていた。
リナリアも目を丸くして驚いた顔をしていた。しかし、逃げようなんて素振りはせずに真剣な面持ちに直した。
「だっ、誰に銃を向けているのか分かっているのかね!この御方はこの国の姫で有らせられるのだぞ!」
リナリアの左隣の少し後ろに、同様な椅子に座っていた人物がそう怒鳴りながら勢いよく立ち上がった。
濃い髭を生やした小太りの中年であろう男性だった。さっき最初に聞こえたのはこの男の声だ。この男もまた、見慣れない特殊な衣装に包まれていた。
「フェルール様!落ち着いてください!」
「いや!この王様からの直々の命令だ!銃を下げろ!」
姫?王様?またおかしなことを…。