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異世界 ➖1➖

 ───視界が真っ白になってからどれだけの時間が経ったのかわからない。

 一瞬だったのか、あるいは数時間経過したのか、その感覚もない。


 ───紅は意識がはっきりしてきて、目を開いた。バイザー越しでもその眩しさから視界が見づらかった。


 「おお!本当に成功したのだな!」

 

 男性の声が聞こえた。

 何者だ…?

 聞いたこともない太い声だった。辺りからも騒めいた声が聞こえてくる。


 ようやく目が冴えてきて、周りを確認できるようになった。

 そして、目を凝らして最初に視界に入った人物を見て衝撃が走り、紅は思わず一言口走った。


 「みこと!?」

 「み、みこと…?」


 紅の10メートル程先の前に、黄金に輝く壁の前の中央に、神々しい椅子の席に着いている女性の顔を見てそう叫んだのだ。

 その距離からでも、紅には鮮明にその女性の顔を確認できたのだ。


 尊とは、紅の妹の名前である。

 紅はその女性の顔を見て、咄嗟にその名前が出たのだ。

 最初に見た時、その女性と妹の顔が重なって見えたのだ。


 しかし、紅はすぐに気がついたのだ。彼女が妹ではないことが。

 雰囲気や、顔が妹の尊に多少似ていたので、紅は勘違いしてしまっていたのだ。


 その女性は輝くような金髪、天然のものに見える。

 妹の尊は、紅と同様の黒髪なのでそこは似つかない。しかし、肩下まで伸びている髪型は一緒であった。

 衣服はピンク色の西洋のようなドレスを纏っていた。見るからに、日本人とは思えない風貌だった。


 「あの…大丈夫でしょうか、今の状況理解できるでしょうか」


 その女性は俺の方を見てそう言葉を発した。

 冷静になり、今の状態を目視した。

 普段から冷静沈着な紅も、その光景には流石に動揺していた。


 辺りを見渡すと、そこは大きな敷地内であった。

 全長100メートル程ある豪邸かのような立派な室内であった。その左右の壁の付近には合計で100人以上はいるほどの人間が存在していた。

 しかし、髪の色や衣装から何まで見たこともないような格好だった。

  

 一体どこなんだ…ここは…。

 何かをされたのか…?何か新兵器で気絶させられてここまで連れてこられたとでもいうのか…?

 しかし、色々と妙だ。どうして俺は先ほどまでと同じ状態のままここにいるのだ…。


 紅は、LANDに跨ったままで、そのまま移動させられたかのような状態だったのだ。


 「紅契様…ですね?」


 先程からその女性が質問してくる。


 「合っていますよね?確証はないので実はわからないのですが…」

 「お前…何者だ、何がどうなっている…。ここはどこだ」

 「私はリナリア・カミキと申します。今、あなたのいるこの場所は、元のいた世界とは異なる世界にいるのです」


 異なる世界?何を言っているんだ…。

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