シンバー地区 ➖1➖
「…もっと色々と聞きたいところではあるが…まあいい。そちらの世界の技術は計り知れないと言うことはわかった…。それよりも紅、貴様がこの世界に召喚された時、あまり驚いていなかったようにも思えた。あれはどうしてだ?突然このような場所に呼ばれたのなら、私ならば平常心ではいられない状況だ、それでも冷静でいた…それが気になっていた」
「あの程度の目眩し、何度か体験したこともあるからな」
「…?どう言うことだ、そちらの世界に魔法なんてないはずだ」
「それも兵器の力だ。超強力な即効性の催眠ガスを食らったことがある。少量を吸い込んだだけでも瞬時に眠らされるものだった」
「そうなのか…似たようなことをできる魔法はこちらにもあるがな…それ以上に強力なのかも知れない。…紅ともあろうものが眠らされるなんて大した兵器なのだろう」
「その時は今のようなフルフェイスのメットも被っていなかったからな。これを付けていれば微粒子の細菌だろうが通さない」
「す、凄いな…」
「その催眠ガスで一度眠ると数時間は起きないものだった。…だが、俺はそう言うものにも耐性を持つ身体になっている、それで数分後には目を覚ますことはできた。…その時には車両の中に収容されていて、どこかへ運ばれている途中だったなんてこともあった」
「…そうなのか。しかし、そこで殺されなかったのも運が良かったのだな」
「…ああ、俺のこの身体に興味を抱いている人間は多かった、解剖目的だったので生かされていたのだろう。だが、甘く見られていたようでそこまでの拘束はされていなかったおかげでその場は助かることができた。…それから、他にも視覚や思考を混乱させる兵器なんかに対応してきた。だから、ここへ来させられた時もそれほど驚きはしなかった」
「そう言うことなのか…その冷静さ、いくつもの死線をくぐり抜けた賜物というわけだ…」
そんな話をしている中、二人とドッドはその森林を抜け出していたのだ。
そして、紅の目の前には3メートルほどの高さの白い壁のような物が、左右の横へとずっと奥の方まで続いていて、少しずつ曲がって円を描くようにその場所を囲んでいるそんな所に着いたのだ。
その壁の奥には大きくて古びたような建物やらが、いくつか建てられているのをその場からも確認できた。
この中が街のような場所になっていることが紅には見て取れたのだ。
「着いたぞ…ここがシンバー地区だ。…私の生まれ故郷でもある」
「ここがその場所なのか…」




