出陣 ➖6➖
それから、ジャスは紅の近くへ寄ってから頭を下げた。
「悪かった。…見縊っていたようだ、貴様…いや、紅のことを」
ジャスは紅のことを名前で呼び始め、そして表を上げたその表情は少し和らいでいた。
「正直、紅がガーヴァルなどに勝てるわけもないと思っていた。…しかし、これほどの力があるのならば希望が見えてきた」
そう言って、ジャスは右手を前に出して紅の方へ向けた。
「…これからは互いに一丸となって良好な関係でいよう。私の名前はジャス・カトリだ。私のこともジャスと呼んでくれて構わない、よろしく頼む」
そんな名乗りに対して、紅は何も反応をすることはなかった。
「なんなんだ、その手は」
「何って…握手に決まっているだろう!」
「握手…?」
紅は少し考えてからLANDに聞いた。
「LAND、握手っては俺達の世界の文化だろう、それがこの世界にもあるというのか」
「わかりません。しかし、別の世界にその文化がないなどという根拠もありません。不思議な話かも知れませんが、偶然の一致の可能性もあります」
それもそうか…。
「それか、こちらの文化が何らかの形で教え伝わったということも考えられます」
「…どうかなんだ?握手というのは誰から教わった」
「…そんなこと、一般の教養として幼少の頃から教わっただけだ」
…ならば、誰かが最近になってこの文化を教えたという線は薄いのか…?
「それよりもだ!これからも手を取り協力していこうと言っている!」
紅は先程から出されていたその手を無視し、LANDに跨った。
「おい!」
「俺の手は…汚れすぎている」
「…?それくらいの血、私はどうにも思わない」
「…いや、違う。俺は数え切れないくらい命を奪ってきた」
「この程度の数の獣奇、私だって何度も倒したことくらいある」
「俺が元の世界で殺してきたのは同種である人間だ」
「っ!…」
ジャスは言葉に詰まっていた。
「私だって…悪党である人間を成敗したことだってある!紅がどれほどの数を殺してきたのかは知らないが…それでも、戦う兵士の一人ならばそれくらい普通のことだと考えている」
「俺の身体には数々の怨念が伸し掛かっているのを感じている。憎み、嫌われて、それでも立ち向かってくるものを慈悲も無く殺してきた。…敵だって、自分達が生き残る為に戦っていたのだからな」
再びジャスは言葉に詰まり黙っていた。
「この手にはその記録がすべて残っていると思っている。…それは、自分だけが背負えばいい。他人と共有などしなくてもいい」




