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5、襲撃。



・・・僕だけ除け者⁉



煙が凄い勢いで広がり周囲を包みだしてます。

煙幕と言うやつですね。バル○ンじゃないようです。

バ○サンだと…中に居る僕たちは害虫ですね♪



っと、冗談を考えてる場合じゃありませんでした。

これは注意しなければなりません。

煙幕は視界を閉ざします。なので、音を頼りに攻撃を仕掛けてきます。


「キャー!」

「⁉、なんじゃこりゃ!」

「に、逃げ―――痛っ!」


叫ぶ声を頼りに何らかの攻撃を仕掛けたようです。



次は逃げ道です。あのアルミ缶っぽいのが転がってきた方が入り口側です。

この煙から逃れる為には外に出るのが普通ですが、これは火事などではありませんから、安易に外に逃げれば死を意味します。


「助かった…………きゅっ?…………………。」

…ドサッ。

「キャー!」

「た、助けてくれ!」


だって、逃げ道は確実に待ち伏せされてます。



最後はこの煙です。

毒とか痺れるとかの作用まではないようですが、吸い過ぎるのは良くありません。

だから、姿勢を低くしますが、襲撃側もそのことは承知しているので、僕の周囲で床に何かが刺さってる音が聞こえます。




「アルフレッド様。」

「ミーシャ、隠れてなくてもいいの?」


僕が匍匐前進で、最初の位置からみんなの方へ移動してるときに、ミーシャも匍匐前進して僕の方に近づいてきました。


「いいです。この煙で、こちらも敵も誰が何処に居るのか把握出来てません。

襲撃者の攻撃は先程アルフレッド様達が食事されていた場所に集中してるようです。」


「そうなんだ…あ、みんな酷いんだよ。僕だけ除け者にされた。」

「それは自業自得です。」

「そ、そんなことない…でしょ?」

日頃の行いとかいうやつ?更生計画…頑張ろう。


「おそらく、アルフレッド様がお考えのようなことではなくて、ご自身の先程まで居た位置を思い出してください。」



「………あっ。」



「無駄に恰好付けようと、サロン全体に声が届くようにと少し中央に寄り過ぎましたね。」


「おふ。」

やってしまいました。


「まあ、そのお陰で、あの煙幕缶に気付くのが早かった訳ですが…。」

「だ、だよね。」


「ええ、アルフレッド様のファインプレーです。あの歓声で、敵の予定を狂わせたのだと思われますから。」

「そうなの?」

「あの大歓声で、中で何か起こったと思って慌てたのと―――っと、これ以上はこの場を無事に凌いだ時にお話しましょう。」


「そうだね。でも、僕たちを狙った襲撃なのかな?」

「そうだと思われますが、正直何処の手の者なのかまでは分かりません。」

「第二の動きが―――」


ピュンという音が聴こえたかと思ったら、僕とミーシャの側に矢が刺さります。


「毒は仕込んでないようですね。これ、渡しておきます。」

「これ……………盾⁉準備してたの⁉」

「しっ!」


つい大声を出してしまいました。

僕が大声を出したせいで、ここに攻撃が集中します。

が、それを盾で防ぎます。



「念の為に用意しておいて正解でした。槍ではなく矢でしたが…今回はアルフレッド様のお陰です。」

「因みに…何処に隠してたの?」

「秘密です。」


「………そう。何か投擲できる物持ってない?」

「先程の食事の時に使ってたナイフとフォークがございますが…ナイフをどうぞ。」

「何でそこで迷ったの?」

「フォークは私が口を付けてますから…。」

「投げるんだから、そんなこと気にしなくてもいいのに。」

「舐められたら困りますので…投げる前に。」

「そ!」


大声で否定しようとして、状況を思い出したのとミーシャに口を手で押さえられたことで、大声を出さずに済みました。



「静かに!今日のアルフレッド様は何処か変ですよ?あ、何時も変でした。」

「一言余計だよ。」


「それでそのナイフをどうされるのですか?」

「スルーですか……このナイフはこうするの!」


僕は窓がある方向へ、ナイフを投げます。


「ギャー!」

「あっ。」

誰か居たようです。しかもその叫び声の方向に矢と思われる風切り音が集中します。



「………何やってるんですか、身代わりですか?鬼畜ですね。」

「そんなことしないよ!ただ窓割って、煙の逃げ道を作ろうかと思っただけで…悪いことしちゃった。死んでないと良いんだけど。」


「難しいかも知れませんね…それでどうされますか?」

「どうされますか?って言われても、この状況じゃ、マルエヌたちに合流するもの危険だし、」


「そうですね。護衛の者達に逆に攻撃される恐れがありますね。」


「かと言って、外に出るのは自殺するようなもんだしね…。窓とか割って逃げても、どうせ待ち伏せされてるんだろう?隅の方で大人しくしてるよ。」

「それが賢明ですね。もう少しすれば学園のガーディアンが動き出すでしょうし―――」


ミーシャと意見を纏めているときに、テムデッシュの声が響き渡ります。

向こうの状況把握が終わったのでしょう。


「俺は第二王子のテムデッシュだ!学園生徒は静かにして、身をできるだけ低くしろ!その内助けが来る。」



拡声の魔道具を使ってるのでしょう。

声が響いてます。

あ、この世界、魔法はありませんが、魔道具っぽいのは存在しています。



「悪手ですね。おおよその場所がバレました。」


そうミーシャが呟いた言葉は正解のようで、テムデッシュの言葉に静かになったサロンにカーン、カーン、カンカンカンっと音が聞こえます。

ボールを投げて、バウンドの間隔が短くなっていくような感じの音です。

その音の方向に視線を向けると、僕の血の気が引く感じがして、体が勝手に動いてました。


アレはダメだ。アレだけはここで発動させちゃダメだ。

そんな考えが自然と僕の体を支配します。

ミーシャが何か言ったような気がしますが、その言葉は僕に届きません。


僕はそれに向かって駆けながら不思議な感覚に囚われます。

事故の瞬間などにスローモーションになると聞きますがその状況です。

……………あれ?スローモーションというよりも、僕の以外の周囲の時間の経過が遅い?

いや、今はそれどころじゃない!


アレは爆弾です。僕の、いや、アルフレッドの母親の命を奪った物と同じ物です。

あの小ささで、このサロンぐらいは吹き飛ばせる威力があります。

僕はただ、ただ、我武者羅にあの時の惨事を防ぐ為に駆け、それを掴んでそれが飛んできた方向に向かって投げます。





……………あれ?知ってる天井だ。





「お目覚めですか?」

「ミーシャ?何で僕は自分の部屋に戻って来てるの?」


「記憶障害なし。思考も出来てますね。何処まで覚えていらっしゃいますか?」


「憶えて……………ああ、マルヌエが主催の昼食会に参加して、襲撃されて煙が…それから、それから……………あれ?何があったんだっけ?………ああ、ミーシャが盾を渡してくれたんだ。

それから………テムデッシュが生徒に呼び掛けて、カーンって音が聴こえて……………あれ?そこから記憶がない?」


「そこまでは憶えていらっしゃるのですね。その後、アルフレッド様は駆け出して…………倒れてました。」


「ぁ……………ああ、あれは何だったんだろ?周囲がスローモーションになってた。」

「それについては私も存じ上げません。煙幕のお陰で、近くに居た私ですら何があったのかよく把握できておりませんから。

ただ、アレが知られれば大騒ぎどころのことではないことだけは確かです。」


「そうなの?死を目前にしたときにスローモーションになるってやつじゃないの?」


「………そういうことは実際にございます。私も経験してますし、そういうのを技として昇華したものも存在しております。」


「そうなんだ…。」


「白刃取りというのをご存知ですか?」

「うん。知ってる。素手で、敵の刃を挟んで防ぐやつでしょ?」

「よくご存じで。あれはそれを利用した技の一つでございます。」

「あ、そうなんだ。」


「アルフレッド様のアレは正直に申し上げますと…私も言葉では説明できないのですが、私が見たままをお話します。

アルフレッド様が立ち上がりました。消えました。以上でございます。」


「……………なにそれ?」


「だから言葉で説明し難いとお伝えしたのです。学園ガーディアンが到着したことで、襲撃者、もしくは襲撃者達は逃げたようで、煙幕が晴れたときには倒れているアルフレッド様が発見されたという状況でございます。」


「そう……………⁉、ば、爆弾は!アレはどうなったの!」

「……………。」

「何かあったの⁉」


「ミーシャからは伝え難いでしょうから、代わって私がご報告いたしましょう。」

「居たのか…スラウス。」

「はい。最初からいましたよ。気配は消してましたが。」

「そうか…それで?」


このスラウスという人物はミーシャと同じ一族で、ミーシャと同じく僕個人で雇ってる人物です。

ミーシャは年齢が同じなので学園で護衛をしてもらってます。

護衛なのに普段は寄せ付けないようにしてるんですよ…意味あるんでしょうか?

それ以外の時はメイドしてます。お喋りさんとか覗き見さんとかの発見の為ですね。


スラウスは別口で影から護衛をしてもらってますが、ミーシャ同様離れて護衛してくれてます。

アルフレッドにとって護衛とは側に居る存在ではないようです。




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