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4、昼食。



マルエヌが悪戯を成功したような顔で尋ねて来ます。


「驚いた?驚いた?」

「驚いた、驚きましたよ。」

「でしょう♪招待するときに主催者が誰か知られないようにお願いしたんだから♪サプライズ成功ね♪」


マルエヌがお願したのなら、その情報は限りなく洩れない。

何故かみんな、兄弟や使用人たちはこの幼女マルエヌに優しすぎる。



「アルちゃん、何か変なこと考えなかった?なかった?」

「そんなこと考えてませんよ、みんなマルヌエお姉様が大好きだな~っと思っただけです。」


「そう?♪そっか~、みんなに好かれてるのか~♪」



マルエヌの見た目が8歳の時から変わらないのは14…37だったかな?

王族1437不思議の一つとされています。

まあ、この数字は初代国王から増えてますから、正確な数字はもう誰にも分かりません。



「僕もこの昼食の主催者も目的も知らされてなかったからね。」

「ヨクちゃんは気付きそうだし、招待があればちゃんと来てくれそうだもん。」

「まあね、テムディッシュ兄様もアルフレッドもこんなことしないからね…メルルも。

なら、こんなことしそうなのは自ずと誰か分かるし、それに兄弟の中で一緒の時間は僕が一番だろうからね。」


「ヨムクートはもう少し疑え!そして警戒しろ!俺は誰とも知れない招待に欠席するつもりだったんだ…。」


「テムにぃはそうだろうと思って、私が直接引っ張って来たんだよ?アルちゃんもそうなる可能性があったから、そっちはリアちゃんにお願いしてたんだ~♪」


「マルエヌお姉様。今回はこのような場にご招待して頂き感謝致します。」


ジュリアのことが話に上がったところで、ジュリアは挨拶を行います。

こういう話の腰を折らずに話に入るタイミングが上手い。


「リアちゃんありがとね~、アルちゃん連れて来てくれて。」

「いえ、私もお兄様と一緒に昼食が出来るので嬉しいです。去年はお誘いしても、友人との親交を深めろと言われて断られてましたから。」


「アルちゃん、めっ!めっだよ。女の子のお誘いを断って悲しませるなんて、女の子を悲しませるのは私が許さないからね。」


「アルフレッドの女泣かせは有名なのに何故か女の子に人気なのよね…か、顔はこの、良いと思うけど…こんなに生意気なのにね。不思議だわ。私の中では王族…今いくつかしら?」

「さぁ?あれは正確な数字がもう分からないからね…1436くらいじゃないかな?」

「まあいいわ、王族の不思議に入ってもおかしくないと思うのよ、実際今朝も女の子泣かせたんでしょ?」

「そうなの?」

「らしいわよ?涙流しながら裸で駆ける女の子が居たって話題になってたから。」

「アルちゃん、めっ!女の子泣かせたらダメって言ったじゃないの!」

「すいません。」

マルエヌさん。言ったのはさっきだと思います。

理不尽ですが、この場は素直に謝ります。


「アルフレッドも王子である自覚をもって―――



流石にあの時は僕がアルフレッドになったばかりで、アルフレッドの記憶もなく、余裕がなかったんです。


父の住居が中央宮殿、そこから北と南の離宮で子供たちは7歳まで育てられます。

7歳の誕生日で男はそれぞれ屋敷を与えられ、そこで生活を始めます。

第一から第三王子までは広く大きな屋敷を、それ以外は屋敷とは言っても…僕からすれば大きんですけどね…小さい屋敷で生活します。


まあ、何が言いたいかと言えば、各個人に屋敷を与えられるのに、そこでの出来事がすでにメルルに知られるということは…使用人の中に紛れているということです。お喋りな人が…。


なので、その辺は細心の注意を払ってます。

僕のこの、ミーシャ曰く無駄な設定もそのお喋りさん対策の一つです。

何故これにしたのかについては納得出来ませんけど…。



特に俺には迷惑にならないようにしてくれ。」


「あ、はい。申し訳ないです。」

「えらく殊勝ではないか。まあ日頃が日頃だから余計にそう感じるのか?」



テムデッシュの話は聞いてませんでしたが、素が少し出てしまいました。

これは更生計画の一歩を踏み出せるか?…あ、ミーシャの目が怖いです。

………ミーシャのお陰で一歩目を踏み留まりました。

ミーシャが怖かった訳じゃないですよ?



でも、なんて言い訳しようかな…。


「アルちゃんは小さい頃から良い子よ?」

「そんなこと言えるのはマルエヌだけだ。」

「もぅ~、テムにぃは…はい!こんなお話をリアに聞かせても仕方ないわ。お腹空いたし始めましょう♪」

マルエヌが間に入ってくれたので助かりました。



マルエヌの開始の言葉に、サロンの使用人たちがグラスに酒を注いでいきます。

昼からお酒とはいい御身分ですが、僕が知ってるお酒とは違い、度数が低いカクテルという感じです。



「それでは、進級祝いということで♪乾杯♪」



マルエヌの乾杯の音頭で、みんながグラスを軽く持ち上げます。

主催者のマルヌエがそれを飲んだことで、続くように僕たちも飲みます。


これは貴族のお茶会や夜会でもそうですが、毒見なんて無粋ということで、主催者が毒は入ってませんと示す為に先に飲みます。

これでも毒が入っている可能性は否定できませんが、ただの慣例です。


主催者が毒殺されるなら別ですが、招待客を毒殺するメリットがありません。

デメリットしかないので、パーティーでの毒殺は少ないです。


それは何故か、よく推理モノで、パーティーで毒殺されるお話がありますが、あれは現代だから可能なんです。

料理人から使用人、パーティーに来ている招待客、護衛に従者に至るまで、身元はハッキリさせています。


それが何?って思うかもしれませんが、ここが僕とアルフレッドの考えの、世界の違いです。


僕の方は疑わしきは罰せずという思想が染み込んでますが、アルフレッドの方は疑わしきは罰する。疑わしくなくても罰します。

なので、裁かれるのはその場に居た全員、もしくはロシアンルーレットで人身御供です。

そんな自分の身も危険になる方法は選択しませんし、したくないというのが普通らしいです。




昼食をしながら、女性陣は談笑してますが、男の方はヨムルクート以外は黙々と食べてます。

所々、ジュリアやマルヌエ、メルルが話を振って来て、それに相槌、軽い返答ぐらいです。



「アルちゃんは意中の子は居ないの?」


何を突然言って来るんですかマルヌエさん?


「居ませんよ。」

「本当ですか?お兄様。」


え~っと…ジュリアさん?


「しょ、正直に答えて良いのよ?べ、別に噂を広めようなんて思ってないんだからね?」


メルルさん動揺し過ぎです。何でしょうか?メルルさんはもしかしてツンでデレな人なのでしょうか?

それとも噂を広める気満々なのでしょうか?


「あ、僕も気になる。アルは噂が絶えないからね。」

「ふん!」

「そう言われても…俺だけというのは不公平だろ?」

「それもそうよね♪私の意中の人はアルちゃん。アルちゃんを一目見たときに恋に落ちたわ♪」


マルエヌさん?あなたが僕を見たときってかなり幼い時ですよね?3歳ぐらいの頃だったかな?


「私もお兄様です!」


ジュリアさん、ここで便乗して来るのは戴けませんよ?主人公はどうなるのでしょうか?


「わ、わわ私は………よ!か、勘違いしないでよね!特に意中の人なんて居ないから敢えて挙げればってことだからね!」


メルルさん、意中の人の名前を言ったときの声が小さ過ぎて、皆さん聴き取れてませんよ?

……あれ?……しまったー!ミーシャに言われたのに、逃げ道塞がれた⁈

男ならこれで沈黙するのに…この場の女性陣は恐ろしいです。

しかもメルルはよく聞こえませんでしたが、それ以外の二人が俺っていう当たり障りのない所を攻めて来てるし…。



「僕も意中の人なんて居ないけど…アントロワ男爵のところのマリー嬢だね。」


ここでヨムクート参戦!って、あんたが参加したら例えテムデッシュが答えなくても、僕は答えなきゃいけなくなるじゃないですか!


「何々?ヨクちゃんはマリーが好きなの?」

「いや…お母様がマリーと仲良くしなさいって、いづれは僕のつ、妻に…って。」

「そこに愛はないじゃない!」

「そうですわ!」

「そう言われてもね…。」



ヨムクートは意中の人は居ないと言いながらも、しっかり意識はしているようです。

確かにヨムクートはアルフレッドとは別で、マリールートで主人公の邪魔をして来ますがアルフレッド程強行手段は取って来ないんですよね。

ただ、アルフレッドの記憶情報では、マリーは男爵令嬢ですが、アントロワ男爵領に金山があり、お金持ってます。第二王子派はそのアントロワ男爵領の金山が目的みたいです。

ですが、ヨムクートはそんなに無防備なのでしょうか?そんな情報をあっさり流してもいいの?



「ん~、ヨクちゃん自身はこの子好いな~って人居ないの?」

「居ないね。」


「そっか、次は…。」


「俺は答えんぞ。それ以前にその様な人は居ない。」



テムデッシュはアリエルルートで邪魔してきます。こちらもヨムクートと同じく、アルフレッドとは別口です。

アリエルは公爵令嬢で、ウォルスター公爵は中立派のトップです。

ゲームではテムデッシュとアルフレッドからの攻撃が凄くて、バットエンドしまくってました。

アリエルとテムディッシュを結婚させ、中立派の取り込みをしたい人が居るようです。実現すれば第一王子派より勢力が強くなりますからね…。


この二人…いや、メルフィスを含めて、この三人の第一夫人、妻を選ぶのは母親とその派閥のトップ連中です。

僕ことアルフレッドは母親が亡くなっているので、そんなことはないのですが…その所為で中立派が僕を何かがあったときの神輿にしたがってるようです。



「むぅ~、テムにぃは立場的に居たとしても答え難いか…。」


あっ、ズルい!


「それじゃあ、アルちゃんの番ね♪」

「………。」


どうしよう、どう答える?どう答えるの正解?


「………ぜ、全員。」

「なに?全員?」

「そう!この世の女性の全てが俺のものだ!」


うぅぅぅ…罰ゲームです。


「ア、アルちゃん…。」

「お兄様!全員ということは私も含まれてますよね⁈」

「す、全て…それって私も…。」


しまった…やってしまった…。

テンパって周囲のことも忘れてたので、この発言を聞いた、周囲の人達から黄色い声と怨嗟の声が聞こえてきます。


「アルちゃん?」

「なんだ、ですか?」

「全員ってことは、私も含まれてるんだよね?」


「うっ……(もう自棄です。)当然でごぜえますよ。」

噛みました。


「それなら…うふ♪主催者は私だけど、この場のお代お願いね♪」

強請られたー!


僕は頭をガシガシ掻きながら考えます。アルフレッドは王子です。この場の食事代くらい出せるゆとりはあります。

どうする?

視線をミーシャに向けると目が笑ってます。

それで腹を括りました。



「オッケー、分かった!払う!」

「お?流石アルちゃん。愛してる♪」


「お兄様。」

「アルフレッドの……。」

「アルフレッド、無理しなくてもいいんだよ?」

「ふん、ヨムクート。王子が一度言葉にしたことを簡単に引っ込められるか。」


それぞれ色々と言ってくれますが、ここからです!更生計画発動!


「この場に居る全員、奢ってやる!」

「「⁉」」

「おぉぉおぉぉぉー!」

「キャー♪」


「だが!女限定だ!」

「ブー!ブー!」


さっきまでの野郎共の歓声はすぐにブーイングに変わります。


「冗談だ!王子である俺がそんな小さいこと言うか!この場に居る全員だ!」


この言葉でしばしの静寂が訪れます。


「おい!」

僕はこのサロンの使用人を呼びます。


「今この場に居る連中の今日の昼食時間の分は俺が払う。そのつもりで。」

「畏まりました。」

「聞いたな!まだ時間はある!飲め!食え!」


僕の言葉が静寂の所為で、その場に響き渡り、そして大歓声が起こります。


更生計画発動出来たかな?今日の授業料として大盤振る舞いのように見せかけてます。

中途半端な解釈をされないように、今日・今・この場・昼食時間の分と明確に伝えました。

うん。みみっちいです。



そう思った僕の視界に何かが転がって来ます。僕としてはよく知ってる見た目なので、カランカランと音が聞こえてきそうそうですが、歓声に掻き消されて僕以外数名しか転がって来た物に気付いてません。


「伏せろー!!!」


僕は歓声を上回るように声を張り上げますが、その声は近くの者にしか届かず、離れた位置で歓声を上げている生徒までは届きません。

視界に転がって来たアルミ缶っぽい物を転がって来た方へといくつか蹴飛ばしますが、数が多い。


転がって来たアルミ缶から煙が出て、その場の声は歓声から一瞬で悲鳴と困惑に変わりパニックに陥ります。

ですが、流石はマルエヌが手配した護衛です。

僕の第一声を聞いた瞬間に自分がやるべき行動をしてます。

僕以外の王族とジュリアを守る為に、近場のテーブルを盾代わりして守ります。



あれ?僕以外?




・・・・あれ?





ジュリアは王族ではありませんが、アルフレッド達からすれば兄弟姉妹のようなものです。


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