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3、視点を変えると違って見える世界。



気が進まないですが、学園では普段自分の側に近づけないミーシャを呼びます。


「おい!愚図!」

なんでアルフレッドはこんな面倒な設定にしたんでしょうか?ミーシャを呼ぶのも大変です。


「は、はい!い、如何なされましたか?アルフレッド様。」

怯えながら、ちょっと近づくのが怖いと言った感じで、ミーシャが僕の所にやって来ます。


「ごめん。ちょっとミーシャのルートで調べて欲しいことがあるんだ。」

「急ぎでございますか?」

「うん。僕の方も学園が終わってからになるだろうけど…ディノス侯爵家について調べて欲しいんだ。」

「ディノス侯爵でございますか?確か海に面した領地で海産、海洋で富を得られてる方…中立だったと記憶しておりますが?」


「そのディノス侯爵家の現当主と次期当主、それと…初代まで遡って調べて。一応こちらのルートでも調査させるけど…予想が正しかったら、僕のルートは機能しない。」


「何処まで調べられますか?」

「可能な限り。特に隠し子とかをね。」

「隠し子でございますか?………畏まりました。それでは午後は少しお暇させて頂きます。」

「うん。お願い。」


他の人から見たら、ミーシャに何か言って脅えさせ、ミーシャも泣きそうな顔して応答している感じに見えるでしょう。

本当、ただの罰ゲームです。


「なら…さっさと行動しろ!この愚図!」

「きゃっ!」


僕が軽くミーシャの頬を叩いたら、ミーシャは派手に倒れ込みます。


「ふん!さっさと行け!」


なんとも多くの感情を含んだ視線を浴びてますが…これ、更生計画上手く行くのかな?





ミーシャを呼ぶ前の授業中に記憶の擦り合わせを行いました。

その結果、ディノス侯爵家と主人公のことを調べるという結論に至りました。

正直、この結論に至ったとき、全身に鳥肌が立ちました。

だって、プレイヤーとして見て来たものが、アルフレッドだと違うものに一変してしまうんです。


あのゲームの主人公は飛び抜けた設定がありません。

戦闘が得意という訳でもなえれば、頭もずば抜けて良い訳でもなく、権力も……一言で言えば普通。

まあ、普通の等身大の男の子が、好きな子の為に命やら知恵やらを振り絞って最後にハッピーエンドを掴み取る。というのが良いと言えば好いんですけどね…。


そこは置いといて、主人公はディノス侯爵の隠し子とされてますが、母親について一切触れられてません。

幼少期も伯父と叔母に育てられたとか、山育ちだから食べられるキノコは知ってるとかです。

プレイヤーからすれば、主人公の設定なんて、物語に関わって来なければ、余程変な設定でなければそこまで気にしませんし、ヒロインルートではヒロインの事情とかがメンイで、主人公の生い立ちとかは殆ど関係してきません。



では、視点をアルフレッドにすると、この主人公…怪しすぎるんです。

何処から湧いてきた!って言いたくなるほど怪しいんです!


貴族は周囲の目を気にします。だから着飾って自分は凄いんだぞーって周囲にアピールします。

なのに隠し子とか…一応、養子として体裁を整えて、隠そうとはしてますが、アルフレッドからすれば、調べればすぐに分ることです。

殆ど意味がありません。

それでも学園に通わせる時点で、何か目的があるのは確定です。

アルフレッドからすれば…主人公ってヒロインに近づいて何か企んでる不審人物に見えます。

その上、ただヒロインを口説いてるだけなんで、更に不気味に見えてきます。



さて、ミーシャに依頼したし、こっちは帰ってから―――

カランカラン♪

っと、午前最後の授業開始前の鐘が鳴ります。これが終わったら昼食です。



午前最後の授業…。


「アルフレッド!これを解いてみろ。」

「これで良いだろ?」

「ぐぬぬぅ…正解だ。」


この教師、僕を目の敵にしています。まあ正解を正解と認めてくれる分良い教師ではあります。

僕としては教師の両肩に手を置いて、涙流しながら「頑張れ。」と言ってあげたいところです。



この教師は去年まで彼女が居ました。同じ学園に務める女教師です。

去年、僕は女教師に誘惑されました。

残念。女教師は僕の攻略に失敗しました。

そして女教師は学園を去って行きましたとさ。

お終い。

そういえば、去年の途中から弟たちの家庭教師が一人増えました。



現実は恐ろしいんです。ハニトラに選ばれる人の条件は2つ、逆らえない立場の者であること、急に姿を見なくなっても問題ない者であること。

この2つです。


怖いですね、恐ろしいですね。



では何故、弟たちの家庭教師なのかと言えば…灯台下暗しというやつです。

逃げた相手が自分の直ぐ側に居るというのは盲点です。特に僕たちの場合は王宮ですから尚更です。

それに、自分の周囲は信頼する人たちで固めますから、更に近場には目を向けません。

まあ、近くに目を向けても、その視線の先が違うんで、今更一人、二人、知らない人物が増えても気にもしません。

特に王位争いに関係ない弟たちとかはね。


何故これを語ったかというと、アルフレッドは女に興味がありません。

別に男に興味があるという訳ではなく、アルフレッドにとって女とは要警戒対象であって、恋愛対象ではないんです。

今朝のリンスさんの件とかありますけど…あれが第二派のだとすると腑に落ちないんです。

リンスさんは子爵令嬢で学園でも知られている才女です。

だから、急に姿が消えると不審に思う人が現れます。

リンスさんはハニトラの要件を満たしてないんです。

だから、一応第二派のあの莫迦に利用されただけだという結論に至った訳ですが…ミーシャが意味深な返しをしてくれたので、少し不安になってます。


そして、そんなアルフレッドは現在、ジュリア以外のヒロインには全く興味がないです。


そのジュリアも…。



「お兄様!」

「ジュリアか…どうした?」

「お昼に向かわれるのでしょ?ご一緒させて頂きます。」

「ああ、場所が高等部だからな…気後れでもしたか?」

「そんなことないですぅ~。お兄様一人では可哀想だと思ってお誘いしただけですぅ~。」

「そうか、それならエスコート…ん?今日の昼食にジュリアも参加するのか?」

「はい♪招待して頂きました。」


「誰から?」

ジュリアを狙ってるのはメルフィスだ。あいつはロリコンの上にジュリアの家とその母親の実家を派閥に引き入れたいと思ってるからな…。


「マルエヌお姉様からです。」

「げっ…。マルエヌも参加するのか?」

「はい♪マルエヌお姉様とメルルお姉様もご一緒です♪」


うへ~、学園の王族勢揃いだ…面倒だ。

何か起こるか?

僕はジュリアの頭を撫でながら、チラッとミーシャに視線を向けると、ミーシャも難しそうな顔してます。

ジュリアは僕に頭を撫でられて子犬のように嬉しそうに尻尾を振ってます。

…尻尾はありませんけど。



というように、ジュリアは異性としてではなく妹ポジションです。




ジュリアの頭を撫でてあげて、招待されてる高等部中央サロンまで五人で移動します。

ジュリアは僕が一人で、と言いましたが、僕はミーシャ。ジュリアは従者が二人付き従っています。





「お待ちしておりました。アルフレッド様。シュリア様。こちらへ。」


出迎えてくれたのは中央サロンの使用人。

記憶に無い顔ですが、高等部には年に4回ほどしか足を運ばないので記憶に無くても仕方ありません。


「後ろのは俺とジュリアの従者だ。」

「畏まりました。」

「お連れの方はこちらへどうぞ。」


「いや、私達は護衛も兼ねておりますので。ジュリア様のお側で控えさせていただきたく。」

「従者用の席を用意しておりますので。」


何か言い合いになって来ました。


「ああ、良し。ちょっと待ってろ。」

どちらも引けない部分みたいなので、僕は先に来ている兄と姉の下へと向かいます。



「おい、お兄様、お姉様方。今回の主催者は誰だ?」



そう、僕ことアルフレッドは兄たちと昼食をすることは知ってはいても、主催者が誰かまでは知らなかったんです。

その上、姉たちも同席することすら、さっきジュリアに聞くまで知らなかった。

これは、その辺りを注意しているミーシャですら、さっきの難しい顔を見る限り知らなかったと思われます。



「アルフレッドは変わらないね。」

「そうよ!もっと私を敬いなさいよ!」


「へいへい。失礼しました。ヨムクートお兄様。メルルお姉様。では改めて、主催者はどなたでしょうか?立場と年齢からしてテムデッシュお兄様でしょうか?」


「いや、俺ではない。俺はこんな催しは開かない。」


嫌そうに答えてくれますが、これは僕が、というのもあるでしょうが、この状況の所為でしょうね。

僕たちの食事スペースから離れて他の生徒も普通に食事や雑談してます。

当然、僕たちを護衛する者たちが居ますが、テムデッシュはこんなことしません。

テムデッシュが選民意識が強いので、このような催しを開くなら普通に他の生徒を入れないようにして僕たちだけにします。


「ということは…マルエヌお姉様ですか…。」

「そうよ♪大正解のアルちゃんにはキスのご褒美を上げましょうね♪」

「遠慮し―――」

「ふぇ…。」

「あ、いえ、有り難く頂戴させて頂きます。」


マルエヌが泣きそうになったので、慌てて訂正します。

いつもこうです。


「もう。アルちゃんは意地悪なんだからー、ぷんぷん!はい。こちらにいらっしゃ~い♪」


いらっしゃいと言われ、大人しく頬にキスを貰ってから本題に入ります。


「従者の席をこの近くに―――」

「ダメだ!」

「テムデッシュお兄様には聞いてませんよ。」

「何だと?」

「主催者のマルエヌお姉様にお伺いしてるんです。主催者の。」


「むっ。」


「良いわよ?テムにぃは相変わらず人見知りなんだね♪」

「ちが!もういい好きにしろ。」


お分かりの通り、この場のヒエラルキーのトップはマルエヌです。

あれには兄弟の誰も勝てません。

と、アルフレッドは思ってます。

そして僕の方にはマルエヌとメルルはゲームに登場して来てませんから情報がないのでよく分かりません。



主催者のマルエヌから許可をもらったので、直ぐに従者用の席の準備が行われます…。





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