神聖術習得への一歩。
首ちょんぱ仲間という妙な仲間意識で、目の前のすごく整った秀麗な顔を見つめてしまった。
攻略激難の隠しキャラだけあって、やっぱり目の保養になるくらいに見た目が良い。
長い睫に決め細やかな肌は透き通るようで、なんだか良い香りのしそうな白銀の長い髪に、惹きつけられる金色の瞳は人外の美しさだった。
「あの、レッドフィールさま?」
「え、ああ。ごめんなさい、少し考え事をしていて……」
思わず絵画を鑑賞するように見つめていたことに、やっと気づいた。
そういえば彼も、このまま何もせずにいるとルミナエリスのように首切りになってしまうんだったっけ。
なんとかして、首切りエンドから回避させたい。
ふとレミがレヴィアスさまは、とても優秀だということを言っていたのを思い出した。
「あの、レヴィアスさまは書庫を管理しているんですよね?」
「そうですが……」
私が神殿の書庫の本を読みたいのは、神聖術のことが書いてあるからで、その神聖術も初心者向けから高難易度の上級者向けと色々と種類がある。
つまりこの先、初心者用を覚えた後に上級者向けを目指す予定だから……教えてくれる人が必要になるはず。
「もしかして、書庫の本を一通り読めるんですか?」
「神殿で取り扱っている本でしたら……」
神殿にある本ということは、ここにある本はすべて読めるということ。
つまり今の私が読めない古代文字も読めるはず。
高難易度を習得するためには、そのうち古代文字も必須になってくると予想した。
「そ、それでしたら古代文字も読めます?」
「もちろん、読めますが……」
レヴィアスさまは、私の考えがよく解らないという感じに戸惑っているように見えたけど、それよりも私は神聖術を習得したかったから気にしないようにした。
「あの、私……神聖術を習得したいんです!それで、よければ教えていただければと……」
「神聖術を?ですがそれは、神官や巫女など神に仕える者が使う術ですよ。公爵家の令嬢なら、一般的に使う属性魔法を習得された方が……」
レヴィアスさまの言うとおり、神に仕える人間が使う術で、信仰心が強ければ強いほど力は強くなるらしい。
一般的に高難易度の術を使えるということは、神の奇跡の御技を使えるということになる。
だからこそ、神職には必要不可欠なものということになっている。
神職に携わる人間に必要なもので、それ以外の人間は生まれ持った属性の魔法を使うために必要がない。
でもこの神聖術、見えないパラメーターの信仰心が、どれくらいあるかの確認ができる。
いっそうのこと、神殿に入り巫女になればいいのかもしれないが、さすがに第1王子の婚約者が神殿に入り巫女になったとなれば、レッドフィール家になんらかのお咎めがあると思う。
さすがにそんな親不孝みたいなことはできない。
「おっしゃるとおり、私の家は公爵家です。そして私には婚約者がいるのですが……だからこそ、神殿に入るということはできません」
たぶんレヴィアスさまは、侯爵令嬢が神聖術を覚えてどうするのかと遠まわしに言っているんだと思う。
まさか正直に隠しパラメータの信仰心が気になるので、習得したいなんて言えない。
まあ、ゲームの時と違って他のパラメータも見えないからなんと言えないけど、信仰心のパラメーターだけは大事だから確認したい。
パラメーター確認のほかに、神聖術で何ができるかと考えた。
そういえば属性魔法は、自分の身を守るための攻撃系だったけど……神聖術は、他者を助ける回復や浄化系だったこと思い出した。
ゲームヒロインは、ゲーム後半で神聖術を覚えてルミナエリスを浄化しようとしたけど、ルミナエリスには効かなかったんだっけ。
「私は……困っている人の、役に立ちたい。それだけではダメですか?」
ふいに自然と出てきた言葉が、自分でも不思議だった。
どうして私はこんな言葉を言っているんだろうと考え、自然とミレを見てしまった。
ミレは驚いたように私を見ていたけど……なぜかミレと初めて会った時のことを思い出した。
今にも泣きそうな顔で私を見ていたミレは、今となっては大事な友人になっている。
他愛もないことを話して、笑いあって驚きあって……身分なんて、気にならないくらいの仲になっている。
「ルミナ……そんなことを考えていたなんて……」
「うん、属性魔法は……自分の身を守る魔法だけど、他者を守るものじゃないもの」
視線をレミからレヴィアスさまに移すと、レヴィアスさまは少し困ったように微笑んだ。
攻略しなかったから解らなかったけど、神職だけあって基本的に穏やかな性格の人かもしれない。
「そういう理由でしたら、かまいませんが……」
教えて貰えるという事に了解を得たから、私の頭の中では"教えてくれる人→先生→師匠"という構図ができあがった。
つい顔が緩んでしまうが、なんとか笑みを浮かべて頭を下げた。
「ありがとうございます!じゃあ、今日から師匠と呼ばせていただきますね!」
「そ、それは……」
「ルミナは、たまにすごい積極的よね」
なぜか楽しそうにくすくすと笑っているレミは少し気になるけど、それよりも私は時間がないから急ぎたかった。
それに善は急げというし、夕方までには書庫で初心者向けの目ぼしい本を見つけたい。
「じゃあ師匠、早く書庫に行きましょう!」
レヴィアスさまの腕を取ると、扉に向かって歩いた。
扉の前でふと、書庫がどこにあるのか解らないことに気づいた。
立ち止まってレヴィアスさまを見上げると、じっと見つめた。
レヴィアスさまは、なぜか固まったように動かない。
「あの……書庫って、どこですか?」
なぜかレミは声を出して笑い出し、レヴィアスさまは"えっ"と小さく呟いて、呆然とした表情で何度か瞬きをした。