会場までの道のり。
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師匠が神官長から収穫祭へ行く許可を貰って帰ってきて、すぐに出発しようとした時、ミレに止められた。
「ルミナ、その服で行くのはやめた方が良いと思うんだけど」
「え、服?」
「そうですね。かなり高級な生地を使っているようですから……」
そういえば持っている服って全部、侯爵家ご用達の有名店からオーダーメイドしてたんだっけ。
いつも当たり前のように着ていたから、全く気にならなかった。
ミレや師匠の言うとおり、高級な生地の服を着ていたら、どこかのお金持ちのお嬢さまと思われてしまう。
お金の持っていそうな人間ってことで、お店でカモにされてしまうかもしれない。
そうでなくても詐欺に合いそうな気がする。まあ、お金は持ってないけど。
「背格好も似てるし、あたしの服で良かったら着る?」
「貸してくれるの?ありがとう、ミレ」
「じゃあ、あたしの部屋に行こう」
ミレに腕を引っ張られて部屋を出て行こうとした時、ふと師匠の服が気になった。
まさか神殿の仕事でもないのに神官服を着ていくんじゃないんだろうかと思った。
扉の前で踏みとどまると、師匠の方に振り返った。
「師匠も着替えるんですよね?」
「もちろん、着替えますよ」
「それなら着替えが終わったら、師匠のところに戻ってきますね!」
「わかりました」
師匠と別れてミレの部屋に着くと、見習いの巫女らしくかなり狭い部屋だった。
本来なら見習いのうちは相部屋らしいけど、今のところ見習いの人数が少ないからと1人で使っているらしい。
ミレは服を仕舞っている箱から数着の服を取り出すと、広げて私と見比べた。
「う~ん……これでいいかな?はい、ルミナ」
「ありがとう、ミレ」
控えめな紺色のリボンが胸元に付いた白いワンピースと、リボンと同色のカーディガンを渡された。
いつも着ている服と違って生地が少し硬いけど、気になるような硬さじゃなかった。
それよりも友達から服を借りるというのが、なんだか親友っぽくて嬉しい。
さっそく着ているドレスを脱いで、借りた白いワンピース着て、紺色のカーディガンを羽織った。
「ど、どうかな?」
「うん、すごい似合ってる!ルミナって、何を着ても似合のね」
「そうかしら……」
お店の試着とかで褒められるよりも、ミレに褒められる方がなぜか嬉しくて、少し照れくさい。
ミレも見習い用の巫女服から私服に着替えると、一緒に師匠のところへ戻った。
扉を叩いて返事を確認した後、扉を開けると私服に着替えた師匠がいた。
肩に垂らしていた白銀の長い髪は、いつもと違って後ろに束ねていた。
神官服も似合っていたけど、青を基調にした普段着も十分に似合ってる。
外見が良いと、なんでも似合うんだと感心してしまった。
「師匠、普段着もばっちり似合ってますね!」
「ルミナ、さっきのあたしと同じこと言ってる」
ミレの言葉に、そういえばも同じことを言われていたっけと思い出した。
「今なら、ミレの気持ちがわかるわ」
「ふふっ、なにそれ」
思わず、しみじみと呟くとミレは楽しげに笑った。
師匠とミレの腕を引いて神殿の外に出ようとして、ふいに気づいた。
このままだと、馬車の従者に見られてしまう可能性がある。
そうしたら、きっと母に報告されてしまう。
「師匠、裏口ってありません?」
「裏口ですか?」
「その、正面口から行くと馬車の人に見られてしまうと思うんです」
「ああ、なるほど。そういうことでしたら、こちらに……」
師匠が先を行くように歩きだしたから、その後を付いていった。
廊下を歩きながら師匠が教えてくれたんだけど、どうも荷物や食料を運ぶ時に使われる入り口があるらしくて、正面口は礼拝する人や客人用に分けて使用しているらしい。
つまり裏口というよりも、従業員用に入り口に近いのかもしれない。
従業員入り口、もとい裏口から出ると裏通りに出た。
「狭いせいかな?人通りが少ないような……」
「少し入り組んだ道ですから、表通りよりも遠回りになってしまうんですよ。そのせいで、あまり使う人がいないようですね」
「ああ、だからなんですね。遠回りになるんなら、使いたくないですし」
それに薄暗く狭い道よりも、人通りのある道の方が安心感もあると思う。
裏通りを歩いて行こうとした時、道が全くわからないことに気づいた。
「えっと、どこに進めばいいの?私、いつも馬車だからわからなくて……」
「収穫祭なら、広場が会場になっているから……だいたい広場に繋がる大通りの辺りに出れば大丈夫のはずだけど」
「わかったわ、大通りを目指すのね」
とりあえず師匠とミレを連れて、にぎやかな声がする方に真っ直ぐ進んだ。
聞こえてくる声が大きくなればなるほど、会場が近づいているような気がして、なんだか楽しくなってくる。
明るい道が見えると、かなりの人通りが見えた。
「あ、人が沢山いるわ!きっとあそこが広場かしら?」
「そうですね、あの辺りで合っているはずですよ」
早くたどり着きたくて、足早に進んでいくと大通りに出れた。
道行く沢山の人々と、いくつかの露店。
楽しげな笑い声が辺りに響いていて、お祭りに来たという気分が一気に沸き起こった。




