9話 大和、猪との戯れ? その1 の巻
ーーー
ーー
ー
ガサガサッ
「……ん」
木の葉が擦れる音で大和の意識が覚醒する。
どうやら考え事をしている最中に張り詰めた糸が緩んだのか、少々うたた寝をしていたようだ。
「ふぅ、どうやら少し寝ちゃったか。
だけどさっきより体力は少し回復できたな。
とにかくなんとかしてここから戻らないとな」
体力とともに気力も幾分回復したのであろう、頬を軽く両手で叩いて気合を入れ直す。
ガサッガサッ
「ん…!?」
先程から聞こえ続ける木の葉の音に不信感を抱き、音の聞こえる方角を注視する。
ガサッガサッガサッ!!!
とその時、草むらの先から体長4mはあると思われる1頭の巨大な猪が飛び出してきた。
「……!!
まだ俺を追いかけてきたのかよッ
完全に撒いたと思ったのに……」
どうやら大和の怪我の原因はこの猪に追い回されたことにあるようだ。
“ブシューッブシューッ!”
その猪はようやく目的の獲物を探し出せたことに興奮しているのであろう。
鼻息は荒く、その目は血走ったまま大和を凝視していた。
「ったく、どうやら一度目を付けた獲物は逃がさないってわけか。
どうせ逃げてもまた追いかけられるんならここできっちり片を付けてやるっ!」
大和も覚悟を決めたのであろう、半身になり腰を落とし迎撃する構えをとる。
(…こいつの攻撃方法はその牙を利用した突撃だ。
ただ普通の猪よりもはるかにでかく、そして速い。
さっきはそのでかさと速さに面食らってかわし切れずにかすってしまったけど、その攻撃自体が直線的なのは間違いない。
まずはきっちり攻撃を見極め、かわし際の一撃でこいつを仕留める…!)
呼吸を整え、思考を整理し、勝利への道筋を模索する。
その間も猪からは目を離さず一部の隙も見せない。
猪も大和の気迫を感じ取ったのであろうか、がむしゃらに突進する様子はなく、大和から数m離れた場所から隙を伺っているように見える。