32話 大和、地獄へようこそ の巻
―――
――
―
聡里と会った湖で大和は自身の想いを明かしていた。
「と、まぁ自分はその目標にむかって足搔いているんです。
誰もがそれの達成については否定的ではありますけどね」
「なるほどな……
ところでお前は毎日ここで自主トレを行っているのか?」
「……?
はい、一応日課として今居候させていただいている宍道の家からランニングでここまで来て、そこから体術の基礎トレの反復をしています。
今まではそれで終わっていたんですけど、新たに魔術のレベルを上げるように授業で習った“魔力の展開”をトレーニングに加えています」
魔力の展開とは自身の魔力と属性を練り合わせて新たに作り出した魔力を外に放出することである。
その魔力はそれぞれの属性と融合しているため、火であったり、水であったりといった性質が含まれている。
この展開される魔力の量と質が、多くそして洗練されているほどより魔術に活かされてくるのである。
「ほう、なら一度魔力の展開を私に見せてみてくれ」
「分かりました……」
聡里の言う通りに大和は魔力の展開を披露する。
だがそれは誰が見ても失笑するようなお粗末な展開であった。
「ふむ、お前の属性はたしか“土”だったか。
まず、量が少ないな。それに質もひどい。
この土では正直何も作ることはできないだろうな」
聡里の歯に衣着せぬ批評に大和はただただうつむく。
確かに目の前で展開された魔力は片手に収まる程度の砂の塊であり、言い訳のしようもないものだった。
「よし、ここで会ったのも何かの縁だ、これからここでお前のトレーニングを見てやろう」
「えッ!?」
突然の聡里の提案に困惑する大和であったがそんな大和を無視して聡里は言葉を続けた。
「ああ、お前のその強くなろうとする姿勢は感服に値する。
そして天才でない凡人のお前が早く強くなりたければ、やはり適切な指導があったほうがいいだろう」
「そ、それはそうかもしれませんが……
先生の立場的に問題になりませんか……?」
「ふん、そんなことをお前が気にする必要などないさ。
私が担当しているクラスの出来の悪い生徒を特別に補習しているだけだ。
それにこんな時間帯であればそもそも他人に見られることも少なかろう」
大和からすれば自力で頭打ちになっている状況でこの提案はありがたい。
懸念材料とすれば聡里にこの早朝からの自主練を強いることに対する精神的な負い目であろう。
がまぁそれも聡里が良いと言っているからいいか。と大和はあまり深く考えず、その提案を受け入れた。
「それでしたら先生、お手数おかけしますがご指導のほどよろしくお願いします」
その言葉を口にしたことが、地獄行きの切符を手にした瞬間だったのである。




