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破滅のエトワール  作者: ペペペルチーノ!
破滅の力を担う剣士
8/23

8 祈りの種族

 


 むかーし、むかしのあるところ、とても強い力をもった人々の集団がありました。

 彼らは世界がより良い方向に変わることを望み、バカげたことに、世界平和を望むような愚か者の集団でした。

 彼らはいつも祈っていたのです《世界はもっと素晴らしく、優しいものであるべきだ》と。

 そんな彼らは、周りから『祈りの種族』とまるで人間ではないかのように揶揄されました。

 彼らは実験を進めました。

 もっと強く、もっと素晴らしく。

 身の丈に合わない願望を持って、優しい世界のために。

 彼らは、強くなりすぎました。

 小さな村が国に勝てるなど、あってはならないことでした。

 歪で小さく纏まった力は、国々から疎まれました。

 そうして、大勢の国が力を合わせてひとつの村を滅ぼしたのです。

 ひとつの敵ができて、世界はほんの少し平和になったのでした。

 これはとてーも、とても、皮肉なお話。


 ◇



《君には、力が必要だ》


 勇者と解散したあと、自分の家に帰った時、『彼』が突然切り出した。


《たったひとりの犠牲も許せない君に。どこまでも守りたいなどと宣う、傲慢で優しい君に》


 もっと、もっとだ、と彼は言う。


《凍結させていた技、そろそろ完成させようか。もう、ほとんどできるんじゃない?》


 ――第一破光・赤修羅の纏い。


 ◇


 ――彼は、圧倒的な力を持っていた。


 僕と同じ灰色の髪と目をし、姿形はよく似た少年が、目の前に立っている。


 ここは、精神で作られた世界。


 ここでは、『彼』は神にも等しい力を持っていた。

『彼』が剣を呼べば、それはただちに生成され、椅子を呼べば椅子が、巨大な森林が出現することもある。


 ここは精神で作られた世界だから、なんでもできる。自分が想像できる限りにおいてなにもかもを創造できる。しかし、所詮ここは現実ではない虚しい世界だ、と『彼』は言っていた。


 ここで、僕と『彼』は何年もの間修行してきている。

 剣士が強くなるための要素は経験だ。しかし、強くなれば強くなるほど、より危険なところで修練を積まなければ伸びしろは少なくなる。そして、危険なところで修練を積み過ぎると死んでしまう。

 僕は、この空間で身の丈に合わないほど難しい修練ができた。死んでも、ここでは死ななかったことにできるのだ。常に、臨界の場で自らを鍛え、経験を積める。

 疲れても『彼』が命ずれば僕の疲れはとれる。傷は一瞬でなかったことになる。

 だから、僕は十七という齢にして、今ある世界では、最も戦いを経験している存在ともいえる。

 全部、『彼』がいたからだ。


 ――しかし、『彼』はいまだに僕の何倍も強かった。


「君には殺意が足りない。優しさなんて捨ててしまえ。君に足りないのは執念だ。君には絶対性が欠けている」


 彼は剣を向けたままそう言った。


「もう一度だ」と彼が言うと、ボロボロだった僕の服は元通りになり、疲れは消える。


 僕には、魔力がない。

 だが別の力が、別のエネルギーがある。それは扱うのがとても難しく、コントロールできなければ自爆必須の強力な破滅の力。


「魔力無効化の本質である破滅の力。魔法を使えない君がもつ最大の力だ。だが破滅の力はそのままでは使えないえエネルギーだ。無色にして万色であるそれを、一定の色に染めて力に指向性を与えて使用しなければならない。君は、赤色が苦手すぎる」


 赤色。

 第一破光・赤修羅の纏い。


 殺意と敵意を飲み込んで反応する無限カウンター。

 プログラミングされた行動が、僕の意思を介さずに最適である動きを決定づける、修羅を纏った形。

 どの方向から武器が振られても、なにをされても、経験として僕はそれに近しいものを知っている。そう言った経験を気として纏い、赤色の鎧は僕の体を動かす。

 故に、一対一の戦いでは最強を誇る、彼の奥義。


「君は義務感や正義感で戦おうとしすぎだ。君のおじいちゃんに言われたことは知っている。飲み込まれてはならない、と言われたことを。でも、それでは強くなれない。エト、なにかを憎め。そうでないと、真の意味では強くなれない」

「そんなもの必要ない」

「綺麗なままでいると?」

「そうだ」

「強情だね、君のおじいちゃんが植え付けた根はなかなかに、深そうだ」


 彼が足を踏み鳴らす。森はすべて消え、あたりは岩が転がった大地。足場はあまりよくない。


「――いくよ」と彼が言う。


 足場が悪いはずなのに、彼はまるでここが平地であるかのように僕に接近してきた。

 強烈な殺意がぶつけられる。僕の赤色の気が、迎撃態勢を取らせる。


 ――閃く太刀筋。


 彼の剣が四方八方から迫ってくる。

 蛇のようにしつこく、そして重力の理をすべて置き去りにする剣。


 右から迫るその剣を、なんとか防いだ。

 体が自動で反転。彼の剣を受け流しながら、自動で回し蹴りまで移行する。

 それを彼は片手で受け止めた。勢いが乗った蹴り。簡単には止められないはずなのに、いとも容易く。


「防御はよくても攻撃がうまく乗れてない。君の赤い気は見せかけだ」


 瞬間、足の感覚がなくなる。


 ――切られた。


 あまりにも綺麗な断面に、痛みすらない。


「もう一度だ」


 叫び声をあげる瞬間、痛みに悲鳴をあげる瞬間、僕の足は元に戻った。


 ――彼は、甘いと思う。

 ――もっと痛みを与えたほうが、効率はいいはずなのに。


 もう一度立ち上がろうとする。

 しかし、彼が「待て」と言った。


 固まってなにかを感覚を研ぎ澄ますかのような動作。

 彼は、ゆっくりと目を開く。


「現実のほうでなにか起きたみたいだ。目を覚ましたほうがいい」

「わかった」


 彼がパチンと指を鳴らす。

 その一瞬で、僕は現実のほうに戻った。

 夢から覚めたみたいな感覚。



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