運命の余興曲
・・・俺は嘘をついた。
友達にも、苦労太にも・・・。
カラクサや桜井さんだって、ずっとずっと騙し続けてきた。
本当は・・・俺は・・・。
軽子ちゃんが好きだ!
クリスマスだって誘われたっていったけど
俺が誘ったんだよ!めっちゃ緊張した!
だけど俺は、今・・・クリスマスデートをしているのだ・・・!
そして今いい感じの雰囲気の公園だ・・・!
ここで告白しなければ!俺は男だから!!
「な、なぁ・・・軽子・・・俺さぁ。」
「な・・・何よ・・・?」
「お、おれ・・・その・・・本当は・・・お前の事・・・。」
生唾を飲み込んだ・・・その時だった。
「あっれぇー?てっちゃん何してるの?」
「なぁ!?ななな夏斗!?なんでここに!?」
家に住まわせて貰ってる、大学生の・・・従兄弟の夏斗
い、今は仕事中のハズじゃ・・・!?
「仕事早く終わったからさぁー帰ろうと思ったらてっちゃんが見えたから。」
「じゃ、邪魔すんじゃねぇ!!いま!あの・・・その・・・もう!!なんでもない!」
「ん?なに・・・?まぁいいや、もう遅いから帰ろ?」
「ふ、ふふふ・・・そうしましょ、てっちゃん。」
「・・・軽子が言うんなら仕方ねぇな・・・家まで送るよ。」
「何言ってんの!小学生二人が歩いたって一緒だよ?僕が軽子ちゃん送ってくから、家帰ってな?」
・・・完全に告白するタイミングを逃した!!
しかも格好つけそこねた・・・!
ったく!夏斗め!許さん!
・・・家に帰ると・・・クリスマスケーキがあった
ああ、そうだ・・・夏斗には軽子とデートって言ってなかったっけか?
可愛らしいケーキ・・・それで早く仕事終わらせたのか。
夏斗・・・桜組の為に、ライバルの鬼雷組の組員になって
スパイ活動をしているのだ。
そんな危険な上に、屈辱的な、仕事をしながら
両親が亡くなった俺に、いつも気遣って。
「・・・はぁ、今回だけは許してやるか・・・。」
独り言をつぶやきながら
この家に来てから夏斗が撮っていた俺の写真を見ていた。
プリンを食べている俺・・・。
ゼンと喧嘩してる俺・・・。
桜組の皆と写ってる俺。
・・・そこには夏斗の姿はない。
・・・夏斗は自分の写真を残してなくて・・・。
「・・・俺ばっかじゃんか。」
プルルル・・・
電話がかかってきた、なんだろう?
カラクサからだ・・・夏斗、まだ帰ってないんだけどなぁ。
「カラクサ?どうかしたのか?」
「哲也!大変だ・・・!夏斗が・・・!軽子ちゃんが!」
「・・・夏斗と軽子がどうかしたのか・・・?」
翌日・・・俺は軽子ちゃんの葬式に参加していた・・・。
「・・・夏斗の容態は・・・!?」
「まだ眠ったままだ・・・。」
・・・夏斗は、軽子ちゃんと一緒に何者かに襲われたようだったそうだ。
アイツは、喧嘩なんかできないような・・・気弱なやつなのに
必死になって抵抗して・・・軽子ちゃんを守ってくれたみたいで
彼女を庇うように倒れていたらしい・・・。
「全く・・・軽子は桜組の子供なんかと一緒だったのか・・・。」
「ヤクザの抗争に巻き込まれたんでしょう?」
「軽子・・・かわいそうに・・・。」
俺は今白い目を親族に向けられながら
大好きだった軽子ちゃんに手を合わせていた
・・・軽蔑されて当然だ。
俺と一緒でなければ、軽子ちゃんは・・・。
俺なんかが好きにならなければ・・・。
「ごめんなさい・・・。」
葬式の最中、思い出していた。
俺が、人を殺した、あの日の事を
あの人たちの家族も、悲しんだだろう。
一人で一人に、悲しんだ人がいっぱいいたんだ。
そして、その悲しみが今回の抗争を起こしてる。
そのせいで、軽子ちゃんは命を落として
・・・夏斗だって・・・助かるかわからないんだ・・・。
「哲也・・・!夏斗が・・・!!早く来い!」
「・・・カラクサっ・・・痛いっ・・・!」
腕がちぎれるかと思うくらい
カラクサに引っ張られた
カラクサだって夏斗の親友だもんな・・・。
連れて行かれた病室で・・・夏斗は座って、しょんぼりしていた・・・。
「・・・ごめんなさい・・・ぼく・・・守りきれなかった・・・。」
「お前が生きてただけで十分だよ・・・!!」
「だけど・・・鬼雷組に・・・バレちゃったみたいで・・・。ぼく、ぼく・・・。」
「もういい、寝てろ・・・ほら、哲也も連れてきたぞ・・・。」
「・・・てっちゃん・・・。」
感情がぐちゃぐちゃになっていた
軽子を守りきれなかった夏斗に腹が立った
鬼雷組に腹が立った
悲しかった
だけど・・・。
夏斗が生きていて嬉しかった
夏斗が悲しそうな顔をしていて悲しかった
不安そうな顔を見て不安になった
俺は夏斗に抱きついて、大泣きしてしまった。
「・・・ごめん、ごめんね・・・てっちゃん・・・。」
「・・んで、なんで謝るんだよぉ・・・!お前は頑張ったんだろぉ・・・生きてたんだろぉ・・・。」
「・・・うん、うん・・・そうだね・・・また君に会えて、よかった・・・。」
・・・鬼雷組は夏斗がスパイしていた事に気づいた
これはもう、抗争がまた起こるのは避けられないだろう・・・。
とにかく不安で・・・また人が死ぬのが俺は嫌で。
疲れ果てて眠ってしまうまで
俺は夏斗に泣きついていた・・・。




