運命の遁走曲
「それで、軽子の奴がさー。」
「・・・てっちゃん、その子の話よくするよね?」
「・・・だって・・・あ、あいつ、ムカツクからっ・・・。」
「軽子ちゃんの事好きなの?」
「は、はぁぁ!?べべべ!そそ、違うし!別に!そんなんじゃねーよ!!」
ゆでダコみたいになってるてっちゃんをからかいながら
僕たちは帰り道を歩いた。
・・・黒の騎士団に、とうとう見つかってしまった僕は
もうあちらに戻らなくてはいけなくて。
ゆっくり、話ができるのも今日が最後なのかもしれなくて。
ああ、戻りたくない。
このまま、てっちゃんと同じ時をすごしたいのに。
年下だったてっちゃんは、すっかり成長してしまって。
ぼくより、身長も随分高くなった。
「・・・ゼンちゃんは、僕と身長変わらないのになぁ・・・。」
「苦労太はともかく・・・ゼンって背伸びねぇよなぁ。」
「てっちゃんと同い年なんだよね?6年生って言ってたよね?」
「それで129センチしかないらしいからな・・・あ、でも今の時期チビな奴って中学で伸びるんだって。」
「・・・てっちゃんも年があけたら中学生かぁ・・・。」
早いなぁ、初めて会った時はあんなに小さかったのに
ふと、目の前を見ると、黒髪の怪しげな少年が立っていた。
「やぁ、少年達!ホットミルクでもどうだ?」
「わぁ、最近涼しくなって来たから嬉しいね、てっちゃん。」
「何言ってんだよ!もらっちゃダメだろ!怪しすぎるわ!」
そう言って警戒するてっちゃん
むむ、確かに言われてみれば・・・。
かと、思うとてっちゃんは急に飛び上がって
後ろに向かって回転蹴りを放った。
後ろを見ると、大きな氷柱を持った・・・。
こいつは、狼男の子供・・・!?なんでこの世界に!?
「いっててー・・・おうおう!失敗してんなよ!ミルカー!」
「まさかホットミルクが通用しないとは・・・。」
「君たちは・・・?!一体・・・?」
気配を感じた
よく、見知った気配を
黒の騎士団員の誰かが
僕に近づいてきたのが解った。
「・・・やぁ、黒歌。」
「君はっ・・・!!黒雷!?」
「お前っ・・・!!鬼雷組の組長!?」
「え、てっちゃん知ってるの?」
「いかにも・・・ボクが鬼雷組の組長・・・黒雷だ・・・。」
「え、はぁぁぁあ!?」
なんで!?
黒雷がヤクザの組長やってるのさ!?
しかもなんだか電気をバチバチ言わせて臨戦態勢じゃないか!
どういうことだ!?
「その少年を渡してもらうよ、黒歌。」
「え、い、いやだ!」
「その子には死んでもらう!ショコラ!!」
「おう!容赦はしない!」
狼男の少年は冷気を放ち、氷柱は巨大な氷剣になった。
その剣がてっちゃんを襲う・・・!
嫌だ!死んで欲しくない・・・!!
そう望んだ。
ガキィィン!
その剣を、受け止めたのは・・・。
巨大な、死神の鎌だった。
「っぶなー・・・ちょっと!何してんのさ!黒雷!!」
「うるさいぞ溝鼠死神・・・僕だって仲間を殺されたくは無いんでね。」
「こ、黒死!ねぇ!どういうこと!?」
「一回安全な所にその子を連れてってから説明しますっ!」
そういうと黒死は死神の鎌を持ち直し
強く握り締めた。
そして黒死が地面に鎌を指すと
魔法陣が現れた。
「えっと・・・『我がオフューカス・カイの名において命ずる・・・!!』」
「か・・・かっこいい!」
「え!えへへ・・・『汝の力を此処に示せっ・・・デューク!』」
てっちゃんに褒められて照れる黒死
相変わらず可愛いな・・・。
黒命が惚れるわけだねうん。
僕にはちょっとよくわかんないけどね・・・。
「ククク・・・お呼びでしょうか黒死様・・・?」
「僕らが逃げる時間を稼いで!デューク!」
魔法陣から、頭から蛇を生やした、目隠しされた少年が現れた・・・。
なにこれ怖い・・・。
「おう?!デューク!?なんで此処に!?」
「はぁ!?その声はっ・・・!?兄貴っ・・・?!」
「ええ!?ショコラ君兄弟いたの?!」
「コイツと、妹がひとりいるぞ。」
「ち・・・!相手が兄貴だったら絶対に負けらんねぇ!!」
唐突に始まる兄弟喧嘩・・・。
こそこそと逃げる体制を整える黒死・・・。
うまく逃げれそうだな・・・。
てっちゃんもなんとなく逃げたほうがいいのは察してくれたみたいだ。
「喰らえっ・・・!メデューサの眼!!」
デュークくんが目隠しを取ると、ショコラ君は慌てて氷の壁を創った。
うわぁ、なんだかすごい戦いだなぁ。
「アイス・ミラー!!」
「うわっ・・・!」
「あっ!目を合わさないで!!」
黒死の叫びも虚しく鏡のようにツルツルな氷に映ったデュークくんと目を合わせてしまったてっちゃんは
なんと石に変わってしまった・・・!!
「ななな!どうしよう!?」
「落ち着いて黒歌・・・!時間が経てばもどるし・・・今は好都合かも!」
確かに、非現実的な事が起こりまくってるし・・・。
夢だったとかそんな感じにまとめてしまえるかもしれないな・・・。
うん、それでいこう。
「おうおう!お前の目さえ見なければ!石にはならない!」
「ち・・・調子に乗るなよ兄貴!世界を食い尽くす、このデューク・ヨルムンガンド・ナイトの力を思い知れぇ!!」
「おう?!おれ、おれは!世界を凍らす!ショコラ・フェンリル・ナイトだぞ!?」
「ちょっと!君達!兄弟喧嘩してないで黒歌達を追わないと・・・!!」
ヒートアップする兄弟喧嘩は黒雷が止めてくれるだろう・・・。
その間に何とか逃げ延びた僕達・・・。
「・・・はぁ・・・で、黒死・・・どういうことなの?」
「ふぅ・・・あれ、黒雷が、なんだかその子を殺そうとしてるみたいでさ・・・。」
「はぁ!?何で、てっちゃんを・・・。」
「それは、わかんないけど・・・僕はその子を、寿命まで死なせる訳にはいかないんだよね。」
「・・・ぼくも、てっちゃんに死んで欲しくない・・・!」
・・・どうやら僕らの利害は一致したようだ・・・。
「・・・僕はその子が死なないように、全力で守るよ、黒歌。」
「・・・僕は、君のその仕事と・・・てっちゃんが死なないことを望むよ、黒死。」
「とりあえず、君はその子のそばにいて・・・あとは僕に任せてよ!」
「うん・・・ありがとう、黒死。」
・・・こうして、僕はもうすこし、てっちゃんのそばにいられることになった
また、僕が望んでしまったから・・・てっちゃんを、面倒な事件に巻き込みながら・・・。
それでも、黒死とボクがいれば・・・。
てっちゃんを、絶対に守りきれる・・・そう思った。




