水の勇者
「大変院くん起きて・・・トイレ大丈夫?」
「ん・・・も、もれる。たいへんだぁ~・・・。」
「早く行っといで。」
・・・ふぅ、とりあえずうちの布団に
世界地図を描かれずに済んだな・・・。
子供を泊めるのは大変だな
今夜は徹夜だ・・・。
僕は不死だから寝なくても死んだりはしないけど
死ななくても眠いもんは眠いんだよ・・・。
「お疲れ様、黒雷。」
「ミルカー・・・。」
ホットミルクを入れてくれる、ホットミルカー・・・。
この子確か本名なんか言ってたよな・・・。
なんて名前なんだっけ・・・。
・・・ああ、思い出した。
「ありがとう、ソラくん。」
「なんだ急に、気持ち悪い・・・。」
そう言うと台所で片付けを始めた
なんだ、失礼な奴だな・・・。
おっと、足音が近づいてくるな
大変院くんだろうか、寝室まで連れてかないと。
「平太・・・?何処・・・?」
寝ぼけ眼で現れたのは、神月くんだった。
水の勇者は僕、担任教師じゃないからなぁ
あまり詳しくは知らないんだけど・・・。
「黒雷先生・・・平太、いないの・・・。」
少なくともイメージより言動が大分幼い。
この子ってもっとしっかりしてるイメージだったから
少し意外だった。
普段の彼の姿からは想像もつかないな・・・。
「・・・大変院くんならトイレに行ったよ。」
「・・・せんせ、僕、さみしい・・・です。」
そう言うと抱きついて来た。
・・・かと思えば・・・。
泣いてるじゃないか!
僕の服・・・いや、この際いいか。
シー、とジェスチャーをしてそっと立ち去るミルカー
君のそうやって空気が読めるところは大好きだよ・・・。
「うう・・・平太ぁ・・・。」
「・・・トイレ言ってるだけだから、大丈夫だよ。」
「君が居ないと・・・僕は・・・。」
そういえば、この子達いつも一緒にいるな
あまり離れているのを見たことがない。
しかしこれは・・・依存を感じる。
このままだと色々支障が出そうだけど・・・。
「・・・君達の間に一体何があったの・・・?」
「平太は・・・平太は・・・。」
神月くんは、寝ぼけて泣きながら
ポツリ、ポツリと語りだした・・・。
神月くんは、生まれた時から水の勇者として
それはそれは期待を込めて育てられたそうな
だけど当然、周りは水の勇者を妬んだ
生まれた時から、『運命』という格差をもつこの世界の住人には
よくある話なのかもしれない。
神月君はその典型で・・・
クラスから孤立していたそうだ。
「毎日毎日、泣いて暮らしてました・・・でも、泣けば泣くほど・・・涙が僕の力になるんです。」
それが、水の勇者の性質なのだという
辛い思いや悲しい感情が
その力を強くするのだ。
こうしたいじめなんかも、周りの大人も良しとしていたらしい。
「・・・一人ぼっちだった僕に・・・たった一人だけ、手を差し伸べてくれたのが・・・平太だったんだ。」
「・・・危機察知能力のある彼なら・・・いじめなんかからはさぞかし守ってくれそうだよね。」
「・・・はい・・・だから・・・。」
話疲れて、泣き疲れたのか・・・神月くんは眠ってしまった。
しっかりものの水の勇者も大変なんだなぁ・・・。
「大変だぁー・・・。」
「・・・大変院くん・・・遅かったね。」
「黒雷先生・・・大変・・・。」
「・・・とりあえず替えの下着を用意するからそこで立って待ってて・・・。」
はぁ、これだから子供は嫌いなんだ・・・。
とりあえず神月くんをベットに運んで
大変院くんに替えの下着を履かせて・・・。
寝かしつけたら布団を踏み脱いでいる太陽にちゃんと布団をかぶせておかないと・・・。
・・・大変院くんの後片付けもしないとな・・・。
・・・司は本当に手間がかからないいい子だな・・・。
「・・・やぁ黒時、久しぶり。」
『・・・黒幻ですか。あなたもそろそろ騎士団院に帰ってきたらいかがですか?』
「そうだなぁ・・・気が向いたらね。」
『それで、何の用ですか?』
「いやぁ、黒炎と連絡がつかなくなってさぁ。」
『・・・それは本当ですか・・・?』
「このままだと、上手く物語が進まなくなっちゃうかもしれないんだ。」
『あなたがいるなら大丈夫でしょう。』
「・・・じゃ、多少手荒な事はしていいってことだね?」
『・・・仕方ありませんね・・・あまり無茶苦茶しないでくださいよ。』
黒時との連絡はそこで途切れた
もし黒炎がインベイダーサイドについてしまったら
それこそあの子達じゃ、ボロ負けして世界滅亡のバットエンドだ。
「・・・インベイダーは炎の勇者に倒して欲しかったなぁ・・・。」
ラスボスは主人公が倒すから熱いのに・・・。
全く・・・黒歌は何を考えてるんだ?
全く別の世界にいる上に離れた世界位置なので考えが読み取れないのだ。
「・・・ま、いっか・・・。」
勇者達が力を合わせてインベイダーを倒す
それが物語の目的だ
そして勇者は未来永劫称えられ
その友人達も神として言い伝えられることになる。
重大な神の言葉を残して・・・。
・・・これが終わればこの世界は用無しだもんね
色々捻じ曲げてさっさと終わらせちゃおう。
・・・本当はもっと楽しみたかったけどね・・・。
「さよなら、水の勇者くん・・・。」




