死神と堕天使
「今日はお前の最後の腕を神様に捧げるぞ・・・!」
男は笑顔で少女に言う
これが、彼女にとっての当たり前の日常
体の一部を神に捧げ続けなければ
この世界には再び『負の感情』が蔓延ってしまう
・・・負の感情なんて無い方がそもそもおかしいのに
運命が勝手に決めつけたユートピアは
もはやディストピアに成り下がっている。
・・・と、いうのもただの俺の主観なんだけど。
「だるまさんが・・・転んだ。」
「なっ・・・!体が!?」
「悪いけどこの子は渡さないよ・・・あっち向いて後ろ!」
男の体が後ろに向いた
「かけっこしようぜ?よぉい・・・ドン!」
俺がそういうと男はどこかに走り去った
ふ・・・決まったぜ・・・!
「イマイチ決まりませんわね、天使様。」
「・・・かっこよく決めたつもりなんだけどなぁ。」
「あっち向いてほいやかけっこでは、かっこいいとは思えませんわよ。」
クスクスと彼女は笑う
それだけで、俺は幸せでいっぱいだ。
コンコン
ち・・・またきやがったか
今度は俺が直々に出て相手してやる・・・。
「彼女ならもう二度と・・・。」
・・・ドアの前にたっていたのは
とても見覚えのある少年だった。
「やぁ黒血・・・いや、今はもうスパイクって呼んだほうがいいのかな?」
「・・・黒死・・・!どうやってこの世界に!?」
少年は勝手に家にあがり、テーブルに置いてあったパンを貪り始めた
冷蔵庫から勝手に牛乳を取り出すとコップに注ぎ
ハムとチーズを用意し始め・・・って・・・。
「なんで急に食事をはじめるんだ!」
「朝からバタバタしててなにも食べてなくって・・・。結界なら破らせてもらったけど?」
「はぁ!?何で・・・そんなことが!」
「結界を『殺した』のさ。」
そう言うと彼が着ていたローブは
みるみる羽の様な形に変形していき
6枚の・・・悪魔の羽のようになっていった。
「僕は黒死・・・全ての死を管理するものだ、それは命の有無に限らない。」
「・・・アホそうな面なのに・・・?」
「顔は関係ないだろ!っていうかアホそうな顔なんかしてないよ!」
俺はその場ですっ転んだ
ただたっていただけなのに・・・?
「摩擦を殺してしまえば君は立っていることすらできなくなる。」
「・・・なっ・・・・。」
「そこの扉だって、僕が殺そうと思えば・・・。」
木製の扉はみるみるしおれて灰になってしまった
なんでもありかよ
黒の騎士団ってやつは・・・。
だけど・・・まだ戦う術はある・・・!!
「まねっこまねっこドンドン!まねっこドンドンドン!!お前の能力をコピーする!!」
「・・・ほぇ!?」
「何でも殺せるってんなら!お前も倒せるはずだ!黒死の能力を思い知るがいい!!」
緊迫した戦闘中なのに彼女は笑いをこらえるのに必死だ
集中が途切れるから本当にやめてほしい
まぁいい!これで終わりだ!!
「くらえ!『お前の願いを叶えてやろう!!!』・・・あれ?」
「・・・僕の能力は『対価を貰って他人の願いを叶える』事位だからね・・・まぁ、そうなるよね。」
「ふ、ふざけるな!!じゃあ簡単に何でも殺せるのは!どういう理屈なんだよ!!」
「・・・僕は死そのものだって何度も言ってるじゃないか。黒の騎士団・・・死、そのもの。」
「はぁ?!」
どういうことだろうか
全く意味がわからない!
コピーしたはずの能力が使えないなんてそんなんことって・・・。
「僕はねスパイク、『死という現象』が意思を持って動いているだけの存在なんだよ。」
「・・・は?」
「だから本当は『死神』なんかじゃない、神なんて大それたものじゃぁないんだ・・・。ただの、現象。」
「・・・そんな事って・・・あるのか?」
「だから僕は生き物ですらない・・・スパイク、君がいくら天使になったって・・・命ある限りは・・・。」
周りの空気が氷ついた
いや・・・直感的に俺が悟ったのだろう
これは、『死』の感触だ。
まさか・・・黒死は・・・!
「死には所詮抗えない・・・!」
「やめろおおおぉぉぉ!!!」
「全ての者に『死』を、全ての物に『理』を。」
建物が灰になっていく雲が消えていく
鳥が死んでいく
街の人々はドンドン灰になっていく
「デス。」
そう黒死が言い放つと
俺と、黒死と・・・彼女以外
周りの全てが灰になってしまった・・・いや・・・これは・・・。
「世界中の生き物を・・・殺したんだな・・・?」
「その通り・・・君は死んでも記憶を残してしまうからね、交渉の為に死んでもらったよ。」
「交渉のためだけに・・・?!一体どれだけの命を!!」
「・・・そんなことより・・・この世界にはもう灰しかないよ。」
「お前がそうしたんだろ!!」
「・・・そっちの彼女は灰から栄養を摂取できるのかな?」
・・・!!
そうだ、全ての命が無くなってしまったんだ。
この世界の動物は・・・他の命からしか、栄養を摂取できないじゃないか!
「・・・僕は、対価さえ貰えれば何でも願いを叶えられるからね・・・会いたくなったら黒命の宝石で呼んでよ。」
それだけ言って、黒死は去ってしまった・・・。
彼女はただ、この世界の呪いから解放され
不安と言う感情に押しつぶされそうになっていた。
・・・どうして、こんなことに・・・。




