表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命管理局『黒の騎士団』  作者: 東雲 紋次郎
アラサーマジシャン
22/183

運命の夢想曲


朝起きると、さっそく僕は異変に気づいた

お姉さんが家に居ない


「・・・お姉さん・・・?」



今日はお仕事も休みだし

いつもならお姉さんはまだ寝てる時間だし

何より胸騒ぎがする。


あの時と・・・同じ気配を感じる・・・。


僕は急いでヴィヴおにいさんの携帯に電話をしたんだけど

全然繋がらない・・・。



「明るいのは・・・怖いけど・・・!」



今僕は行かなくてはいけない、お姉さんの所へ

そんな気がする。


だけど・・・。



「明るいよぅ眩しいよぅ怖いよぅ・・・。」



街の隅っこの物陰に避難してしまった・・・。

そもそもお姉さん、どこにいるんだろう・・・。


「大丈夫かい?僕?」


後ろから人間の声がする・・・。

こいつは・・・!僕が血を求めたら

「吸血鬼だ!」と言って木の棒で殴りかかってきた

怖いお兄さん・・・!!



「吸血鬼のこどもじゃないか、明るいのは苦手なんだろ?これを使いな。」



・・・そう言うと、怖かったお兄さんは

真っ黒いフード付きのローブを渡してくれた


その顔はとても優しかった・・・。



「お姉さん、どこにいるんだろう・・・。」


「おや坊や、迷子かい?」



話かけて来たのは・・・よく子供をいびって遊んでいる

近所の不良・・・!怖い!!



「アンジュさんちの子か、アンジュさんなら昨晩サーカスに向かったよ。」



不良のお兄さんは、優しく道を教えた後・・・。

横断歩道を渡るおばあさんを優しく誘導していた・・・。


・・・おかしい、何かおかしい。


せかせか歩く人ばかりだった街並みも

穏やかに歩むひとばかりになって。


あんなに毎日ガミガミ怒ってた喫茶店の店長さんも

どんなミスでも許してくれてて。


しまいには・・・。



「吸血鬼の子じゃないか、お腹がすいてないかい?血を分けてあげよう。」



・・・おかしい、気味が悪い・・・。

血は美味しく頂いたが・・・。

皆から何かが無くなっている、皆・・・。


楽しそうで、幸せそうで・・・余裕もある。


「よぉグラシア。」


「・・・リッパー!」


「おれ、復讐はやめたよ。憎んだって何も始まらない、全部許して前だけ見ていくことにしたんだ。」


「・・・ほぇ?」


「いっぱい人間を殺したのも、警察の人に謝ったら笑って許してくれたよ。」


「・・・何・・・で・・・?」


「おれ、仕事始めたんだ、料理屋さんの手伝いだ。あそこの店だから今度食いに来てくれよ。」



一晩で全部丸く収まってる・・・。

皆優しくなってる・・・。

こんなのおかしい・・・。


とにかく僕はサーカスへと急いだ。

そして、そこで、見てしまった。









変わり果てたお姉さんの姿を




「お姉さん!?しっかりして!?」


「・・・ニクイ・・・クルシイ・・・コロス・・・ユルサナイ・・・。」


「・・・!?お、お姉さん?!」


お姉さんは顔色を悪くして

目の色が完全に死んでいた。



「ソレはもう、感情に耐えきれず壊れちゃったただの人形だよ。」



くくく、と笑うピエロ・・・そして、その後ろには・・・。

・・・僕を僕として認めず。

僕から僕を引き離し・・・。


こんな姿に変えてしまった張本人が。

僕は思わず飛びかかった。


「カノン・・・!お前!なんでここに!!!」


「・・・久しぶりだね、クリス・・・いや、グラシア。」


「お前のせいで・・・!僕は・・・!」


「ごめんね、もう少し早く気づくべきだった・・・僕の正体に・・・。それより。」



・・・カノンが指差した方には・・・さっきのピエロとお姉さんが。

ピエロが仮面をとると・・・そいつは・・・。



「ヴィヴおにいさん・・・?」


「アンジュ・・・?」


「おはようヴィヴ・・・これまで君がしたことを、全部思い出そうか?」



ドクン


ヴィヴおにいさんの心臓の鼓動がきこえたようだった。




「・・・!僕が・・・!アンジュを・・・こんなこと・・・・!?」


ヴィヴお兄さんが取り乱し始めた。

一体何事なんだ・・・?



「うわあああぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」



プツン、と糸が切れたみたいにヴィヴお兄さんは倒れてしまった。



「・・・彼らは世界を救ったんだ。」


「世界を・・・?」


「ヴィヴは、黒幻ってやつに操られててね・・・彼女にこの世界の『負の感情』を全て注ぎ込んだのさ。」


「カノン・・・?それ、どういう・・・。」



いや



わかってしまった。


世界中の人が優しくなっていたその理由がこの二人なんだ。



「アンジュは君を守りたかったんだよ。だから自分が犠牲になった。」


「嘘だ・・・。」


「ヴィヴは絶望の余り死んでしまったか、仕方ない、必要な犠牲なんだ。」


「嫌だ・・・!」


「ごらん、グラシア。」



二人の体がから藁が生えてきて、二人を包んでいった

二人の体はミイラのように干からびて


藁は大きな人の形に・・・。

大きな、藁人形に・・・。



「あれがこの世界の、負の感情・・・呪いの塊だ。あんな醜い心は一つにまとめてしまったほうがいい・・・もちろんあれは僕が持って帰るよ。」


「どうして・・・こんなことを!!!」


「・・・僕も彼女も、君を守りたかったから。」


「・・・カノン・・・!!!!殺してやる!!!」



僕の全力の噛み付きも、デコピン一つで吹っ飛ばされてしまった

やっぱり、運命には勝てないのか・・・。


「グラシア、君はこの世界を生き抜くんだ・・・そして、大人になったらまたここにおいで。」


「・・・!!なんでそんなこと・・・!!」


「そうすれば君は黒の騎士団になれる。」


「はぁ!?なんでそんなこと・・・!!」


「それが君の運命だから。」



・・・こいつは何を考えてるんだ・・・。

僕を拒絶したかと思えば、僕を守りたかっただと?



「・・・ごめんね、あの時・・・君を受け入れてあげられなくて・・・君を、クリスから消してしまって。」


「・・・僕は運命に選ばれなかった、それだけだろ。」


「でもその、運命は僕だから・・・。どんなに君に恨まれてでも・・・。」



カノンはすぅっと消えていった

僕には追いかけることすら叶わない


僕だって、例え弱い心でも

ダイヤモンド=スター=クリスタ4世だったのに

おなじクリスだったのに


恨みたいけど恨めない。





「罪滅ぼしがしたかったんだろうな・・・。」


なんとなく、それは解る・・・でも、あんまりにも悲劇的じゃないか。

それなのに悲しくない、辛くも苦しくもない。


きっと僕も『負の感情』をとられたんだろう


こうして僕は

争いも何もなくなった世界で

不幸な人など誰ひとりとしていなくなったこの世界で

一切の曇のない幸福な感情だけがある世界で

世界中が支えあって


大人になるなで何不自由なく



幸せに暮らしたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ