捨て犬と極悪人
「サーカス、結構楽しかったねミルカー。」
「ああ、特に空中ブランコなんか大迫力だったな!黒雷!」
黒の騎士団の仕事がせっかくお休みなので
黒歌の仕事っぷりなんてそっちのけで
サーカスを見に来ていた僕たちは
休憩がてらベンチでホットドックを食べていた。
「黒雷、ホットミルクでもどうだ?」
「ん、ありがと・・・そういえば君さぁ。」
「ん?なんだ?」
「僕が歳とらなくなったから気にならなかったけど・・・君も歳とらないよね、黒時の能力をうけてるのかい?」
「いや・・・お前が世界を壊しちゃったからこの先の『時間』が存在しないんだそうだ。」
・・・つまり歳を『とれない』のか、申し訳ない事をしたな
とはいえ僕には他に選択肢はなかったし
今も数百年か数千年後に生まれるであろう
親友を救うべく、黒の騎士団で働いているのだ。
「・・・後悔はする余地もないね。」
「お前はヒドイやつだな・・・。」
「僕、極悪人だもん。」
自分の行動が正義でなく悪なのは百も承知で
それでもその行動をやめるわけにはいかなくて
やっぱり僕は極悪人なのだ。
「・・・なぁ黒雷、アレ・・・。」
「・・・子供?」
「耳が生えてるぞ・・・。」
ホットミルカーが指す方向には
真っ白な髪をした・・・犬の耳をつけた。
犬の尻尾もついた・・・少年・・・。
確かここは魔法使いの世界だったはずだし
こんなのもいてもまぁ不思議ではないのかもしれない。
「ホットミルクをあげてこよう。」
「い、いいのか!?」
「犬だし喜ぶだろう。」
否定しづらいが否定したいらしいホットミルカーを他所に
僕はその少年にホットミルクを与えた。
「おぅ・・・これ、貰っていいのか?」
「喋れるのか・・・うん、どうぞ。」
嬉しそうにごくごく飲み始めた
ほら見ろ喜んだじゃないか
やっぱり犬だな。
よく見ると眉毛に渦のような模様が見える
狛犬か何かだろうか?
「君、こんなところで何してるの?」
「・・・おれ、おれ・・・居場所、ない・・・。」
「捨て犬か・・・。」
「おい黒雷、その解釈で本当にいいのか?」
何を言ってるんだこいつは・・・確かに見た目は9割型人間だが
耳も尻尾も犬だし何より言葉に知能性の少なさを感じる。
間違いなく捨て犬じゃないか。
「じゃあ、うちにきなよ。」
「おい!黒雷!!それはダメだろ?!」
「・・・なんでさ。」
「こいつはこの世界の奴なんだよ!それを連れて行くって・・・!
世界のバランスがあーだこーだ言ってる黒の騎士団的にはアウトだろう!!」
「大丈夫、僕極悪人だから。」
「適当か!!」
うるさいなぁ・・・捨て犬を拾っちゃうのが
悪人の性なんだよ・・・ほら、不良だって拾っちゃうだろ?
こういうのはそういう風に決まってんだよ・・・。
犬耳の少年は不思議そうに聞いてくる。
「い・・・いいのか?」
「はぁ?人の話聞いてたの?いいに決まってるでしょ?」
そう言うと少年は泣き始めた
これじゃあ誘拐犯じゃないか、どうしよう
いや、いいか・・・僕は極悪人なんだもの。
「おれ・・・おれ、フェンリルだから・・・狼男の、村から追い出されて・・・人間からも、追い出されて・・・!!」
「はいはい、わかったよ・・・そう言う話はあんまり興味ないから、名前を教えてくれるかい?」
「・・・う、うん・・・おれ、ショコラ・・・!ショコラ・フェンリル・ナイト!」
「よろしくね、ショコラ君・・・。」
彼の手をとろうとしたその時だった
殺気を感じたのだ
空から舞い降りる殺気を
「危ない!」
大きな刃物をもったスカーフの少年が舞い降りてきた。
そして、同時に斬りかかってきたのだ。
ショコラとミルカーを連れてなんとかかわしたケド・・・地面がボロボロになってる
あれに当たったら粉々だろう・・・痛そうだなぁ。
「・・・お前、黒の騎士団だな?」
「・・・リッパー!?」
「ショコラ君、知り合いかい?」
なんだ、ショコラくんの知り合いか
戦闘なんか柄じゃないし正直面倒だから
話し合いで解決してもらえればすごく助かる。
「おうリッパー!・・・こいつ、いいやつだ!・・・なんで、襲う!?」
「ショコラ、お前は知らないだろうが・・・そいつは黒の騎士団と言ってな。」
「こいつ!悪い奴、違う!」
「そいつが悪くなくてもそいつを殺して俺は黒の騎士団に入らなければいけない・・・そして。」
そう言うと彼は刃物を握り締め・・・。
こちらに突撃してきた。
「この世界の人間を!一人残さず殺すんだ!!!」
・・・えらい物騒な話だな・・・。
でもこいつは止めといたほうが良さそうだ。
「・・・雷降!!」
早い話落雷を作るライフルだ、僕が開発した。
修行の末に『ここまで頑張らなくてももっと楽に戦えないだろうか』と
考え、開発に至った品である。
「・・・く!なかなかやるな黒の騎士団!!だが・・・!」
スカーフの少年は雷をくらってフラフラになりながらも
素早さだけは変わらす飛びかかって来た
仕方ない、ここは一回斬られよう
どうせ不死なのだから、斬られたあとで反撃して
確実に倒してやろう・・・でも。
不死でも痛いもんは痛いんだよなぁ・・・。
「やめろ!リッパー!!!」
その時・・・僕とスカーフの少年との間に
氷でできた壁が出来た・・・。
これは・・・。
「ショコラ、君がやったのかい?」
「おれ、ひやすの、とくい!」
「氷をどけろ!ショコラ!!この世界の人間等!生かしておいていいはずがないんだ!」
・・・ここは・・・。
「二人共逃げよう!」
「逃げるのか!?」
「面倒なんだもん・・・。」
「おう!にげる!にげる!」
逃げたほうが得策だろう
僕だって痛いのは嫌だし・・・。
あいつが人類滅亡を考えてるのだって黒歌がなんとかするだろうし。
そもそもそれが彼の仕事なのかもしれないわけだし。
面倒くさいし・・・。
「お前はいいのか!?迫害されて!お化けというだけで!俺たちを殺そうとする人間達を!このまま生かしておいて・・・!!」
・・・暑苦しいなぁ
最後まで見届けるのも悪くはなかったけど
もう帰ろう、命をねらわれるとゆっくりできないし。
「おれ・・・おれ・・・。」
「・・・君は、あの子についていきたいの?」
「・・・ううん、でも、気持ちわかる。この世界は・・・いきづらい。」
「ふふ・・!そうか!なら俺らと来ればいい!一緒に他の世界を回ろう!」
こうして何故かいい感じにまとめたミルカーによって
僕はショコラの面倒も見ることになった。
どうやら温度を急激に冷やせる能力も持ってることだし・・・まぁ。
そばに置いても損はないだろう・・・。
こんな少年を利用する事しか考えられない僕は・・・。
やっぱり極悪人だな・・・・。




