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運命管理局『黒の騎士団』  作者: 東雲 紋次郎
アラサーマジシャン
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お子様ヴァンパイア


「な、なにこれ・・・。」


「歯磨きよ、あんたの歯を綺麗にしてるの。」


「なんれ・・・?」


「汚い歯で私に触れるなってことよ、ほらあーん。」


「あぁーん・・・。」


よし・・・歯は綺麗になったわね・・・。

私だって多少は吸血鬼の知識はあるわ。


だからこのあとのことも・・・。




「ねぇ、かんでいい?」



さすがの私も少し覚悟がいるわね・・・。

大丈夫、注射みたいなものよ・・・!



「ちょっとよ、ちょっと!」


「ありがと、おねーさん!」



お、おねーさん・・・!最近のクソガキはおばさんとか呼びやがるのよね

なかなかいい子じゃないの!この子・・・!


なんて関心してたら首筋に、グラシアの口が近づいてきて・・・。



「ん・・・おねーさんの血・・・美味しい・・・。」



こくん、こくんと喉をならす小さな吸血鬼・・・。

痛いどころか、どちらかというと快感に近い感触だった


相手が嫌がらないようになっているのね

お化けとはいえ生命の神秘だわ。



「あ・・・ああアンジュ!!」


「あら、ヴィヴも帰ってきたしそろそろお預けよ。」


「お預け・・・。」


しょんぼりするグラシア、なんだ素直でいい子じゃない。

なんでこの子を助けたら罪になるのか・・・全く解らない。

・・・そんなことより・・・。


「ヴィヴ、あんた鼻血出てるわよ?」


「え、あ、あの、転んだの!」


「全く、どんくさいわね・・・。」


「ほら!グラシアくん!怪我を治そう!」



手際よくグラシアの怪我を直していくヴィヴ

なんだかんだで面倒見いいのよね、こいつ


「おねーさん・・・僕、ここにいていいの?」


「いいわよ、そう言ってるじゃない?」


「皆・・・僕の事嫌って・・・怖いことしてくるから・・・。」


「アンジュはそんなことしないよ、グラシアくん・・・さっきはゴメンネ、僕ももうしないよ。」



ヴィヴがそういうとグラシアはまたポロポロと泣き始めた

ああ!もう!さっきの思い出したんじゃないの!?


「わわ、ごめん!ごめんね!こわかったよね!」


「ちがう・・・違うんだ・・・。ぼく、うれしくって・・・こんな、初めてで。」


・・・辛い思いをしてきたのね、この子

この時私ははっきり誓った

しっかりこの子を育ててあげるって


だって最後まで面倒見ないんなら

こんなの無責任の自己満足だわ。




それから、私と小さな吸血鬼の生活が始まった。

吸血鬼の知り合いなんか居ないから毎日大変で・・・。


「うわああぁぁん!怖いよおおぉ!」


「朝からどうしたの?!」


「明るいよぅ、眩しいよぅ、怖いよぅ。」


どうやら明るい部屋が苦手らしく、布団にくるまっていた

とりあえずクローゼットを改造してそこに住まわせる事にしたの・・・。


その日から家に帰ったら、玄関で嬉しそうのに私を迎えて

ごはんをおねだりするの・・・その度にしっかり歯を洗わせて


私の食生活は鉄分中心にもなった・・・そんなある日・・・。



「ただいま・・・あれ?」



その日はお出迎えがなく、おかしいなとおもって

グラシアの部屋(元クローゼット)をあけたら・・・。


泡を吹いて倒れていたの。

慌ててヴィヴを呼んだわ・・・。



「・・・お隣のお昼ご飯が餃子だったみたいだね。」


「明るいの、怖くって・・・お外、出れなかったの・・・。」


「・・・つまりにんにくの匂いでやられて気を失ったと・・・ごめんねグラシア・・・。」



さっそくヴィヴに命令して、グラシアの部屋に換気扇と消臭水晶を取り付けさせたわ

これならお隣がにんにく料理でも平気ね・・・!




「おねーさん、おねーさん僕、おねーさんの為に何かしたいよ!」


ある日グラシアがこんなことを言い出した。

そうよね、恩返しもしたくなるわよね・・・。


「じゃあ、今日は私のご飯をあなたが用意してくれない?」


そう言って料理の本を渡すと、一生懸命それを見つめて

しばらくしてから立ち上がって・・・。


「まかせて!ぼく!がんばるから!!」


そう言って意気揚々とキッチンにむかったのだけど

ほんの15分くらいでキッチンから・・・。



「うわああぁぁぁん!!!!」



大きな鳴き声が・・・慌てて行って見たら

落としたお箸が十字架の形になっていて・・・。


怖くて泣いてしまったそう、吸血鬼って本当不便ね・・・。



そんな毎日は、私に潤いを与えてくれていた

たまに貧血になるのがたまにキズだけれど


この子が元気に暮らしてくれるのは私にとっても幸せだった。

でもある日ヴィヴがこう告げたの・・・。



「ねぇ、アンジュ・・・吸血鬼ってものすっごく長生きらしいよ。」


「へぇ・・・亀みたいね・・・。」


「何その感想・・・グラシアが大人になる頃には、僕らの孫も寿命で生きてるかどうかだってさ。」


「・・・じゃあ、私たちはグラシアが大人になるまで見て上げられないのね。」


「うん・・・このまま、僕らが寿命で死んじゃって・・・そしたらグラシアは・・・。」



・・・今のままじゃいけない、そう思ったの。

だって自分で血をもらう術を身につけないと

この子はまた飢えてしまう・・・。


「ということで、グラシア!とりあえず夜は散歩に行くわよ!」


「おさんぽ?」


「外に出歩くのにまずは慣れてもらうわ、それで・・・将来的には、ご飯の確保は自分でできるようにしなさい。」


「どうして・・・?おねーさんも、僕が嫌いになったの?」


「・・・私たちはね、あなたほど長生きできないのよ。」



グラシアの目に涙が溜まって来た

ああもう!この子はなんだってそんなすぐ泣くのよ!


まるで昔のヴィヴみたい・・・。



「・・・みんな、そうだ・・・仲良くなっても皆死んでしまう・・・。」


「・・・グラシア・・・。」


「でも、わかってる・・・仕方ないんだ・・・。」



この時彼がなんのことを言っているのかわからなかったし

これからもわかることはないような気もしたわ。


だって今のグラシアの目には

一点の光もなくなっていたのだから・・・。



「ぼくは、運命に選ばれなかったから・・・。」



・・・この子を本当の意味で救うのは私だけの力では

絶対に無理なのでしょうね・・・。

でも、元気付けるくらいはできるわ!



「そんなのいいからさっさと散歩にいくわよ!」



私はグラシアを連れて真夜中の街を歩き出す。

街の明かりはもう、道を指し示すキャンドルだけ


月明かりと相まって幻想的な雰囲気の街・・・。

そして、その街を見渡せる展望台があるの



「うわぁぁ・・・!すっごい!きれい!」


「でしょう?」


展望台につくと、機嫌が治ったグラシア・・・。

この景色を見て泣き止まない子供は居ないと

昔から言われているのよね・・。


「この景色はこの時間しか見えないのよ。」


「・・・そっかぁ、こんなに綺麗なのにね・・・。」


「朝は朝でいい天気なんだけど・・・。」


「朝はキライ・・・明るいし、眩しいしそれに・・・。」



いかにも吸血鬼らしい言い分が続くと思ってた

吸血鬼だから当然みたいな

そんな理由が発せられると思っていたのに。




「起きてくるこの街の人間達は・・・アンジュと違って皆僕をいじめるんだ。」



・・・そうか・・・。

この街は裕福なのに、こんな子供を受け入れられるほど

心は裕福じゃないんじゃないだろうか。


みんなより裕福になるために

一生懸命になって・・・心をすり減らしてるから・・・。


それは本当に、いいことなのだろうか・・・。




その日はもう二人で帰ったの

街の人の心まで、どうにかできると思ってなかったから・・・。





あの日あのピエロに出会うまでは。

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