運命の行進曲
「ねー!黒雷!あれって一体なんだったのさー!」
・・・ああもうしつこい
僕の心は真っ暗病みだ。
せっかく騎士団本部に帰ってきたというのに
相変わらず小汚い死神がつきまとう。
「・・・仕方ないな、教えてあげるよ・・・。」
説明すれば納得してどっかにいってくれるだろう
そもそも何でこんなに拒否し続けているのに
こいつはつきまとうのか・・・。
「カノンって子が居ただろう?彼こそがあの世界の、『運命』なのさ。」
「・・・運命?」
「彼はね、運命そのものなんだ・・・だから彼の思想は現実になる。」
「ふぅん・・・それで黒風は負けちゃったのかぁー。」
・・・そもそも、そのために彼女が選ばれたのだろう。
彼女を選んだ黒時は未来が見えるのだ
時を遡ったり未来に行くことも出来るあいつが
彼女の死を、受け入れている・・・つまり
予定どうりだったのだろう。
彼女を『運命』に殺させることで
黒の騎士団は『運命』を味方につけたのだ
おそらく黒時の言う、最強の集団になるために・・・。
「・・・で、僕らがいた消えてしまった世界は・・・。彼が望まなかった未来なんだよ。」
「『続いた方の世界』の王子様は、しっかりしてたもんねぇ。」
「・・・あんな風に、全てを思いどうりに出来る彼を、騎士団は探してたんだよ。」
黒の騎士団は最強の集団で
世界の秩序を守るために結成された
全ての世界の中心に存在する組織らしい
そのために絶えず
騎士団にふさわしい人材を
探しているそうなのだが・・・。
「・・・ねぇ黒死・・・。」
「あ!カイくんでいいよ!黒雷はなんて名前なのー?」
「黒の騎士団は、世界のバランスを守るために最強の集団にならなきゃいけないんだよね?」
「え?無視?僕無視?話しかけといて?無視なの?」
「僕らを集めたのは本当に・・・その為だけなのだろうか?」
「・・・どういうこと?」
確かに、運命を操る者が・・・いや、運命そのものが
味方になってくれれば、秩序だのなんだのを守るには役立つだろう
まして少人数のこの黒の騎士団だ、仲間は必要かもしれない。
でも、人材を探して増やすのならそれでいいはずだ
『黒の騎士団を倒した者を次の団員にする』ルール
これは何のために存在するんだ?
本当に必要なのか?
「・・・君にはわかんないよね、ごめんね、頭が悪い奴にこんなこと聞いて・・・。」
「あのさぁ!僕!別に頭悪くないし!失礼だよ君!」
「もとから君に礼なんてないからこれ以上失うハズ無いだろ、視界に入るな失礼な。」
「ば・・・ばーか!バーカバカ!黒雷の馬鹿ぁぁ!!!」
本当に五月蝿いガキだ・・・。
もううるさいなんてもんじゃないな・・・。
休日昼寝中近所工事だな。
そうこう考えていると
見覚えのある少年と出会った。
「・・・やぁ、商人さん・・・君も黒の騎士団だったんだね。」
「・・・ああ・・。カノン君だっけ?よろしくね・・・ぼくは黒雷だ。」
「黒雷・・・皆、そんな感じの名前なんだね・・・。」
「・・・多分、皆本名じゃないよ。」
・・・自分が運命だと気がついて
この子はどんな思いをしたのだろう
親友の父親を殺したのも
信頼できる世話役を生み出したのも
・・・親友の弱い部分を認めず消し去ったのも
自分がやったことなんだと・・・理解してしまって・・・。
自ら黒の騎士団への入団を希望したと聞いているが、この子の顔を見ていると
不安でそうせざるを得なくなるまで・・・追い詰められている感じだった。
できることならこの子の力になってあげたいが・・・。
「・・・黒雷・・・顔、隠すもの・・・もってない・・?」
「顔を隠すモノ?」
「ここの人たち・・・美男美女ばっかで僕・・・浮いてる気がして・・・。」
ええっと・・・。
その不安な顔は・・・そういう不安なの?
罪悪感とかじゃなくて?なんなの?
混乱しすぎて頭がおかしくなりそうだ。
「・・・心配してくれてありがとう、黒雷・・・だけど僕は大丈夫だから。」
「・・・なんで大丈夫でいられるんだ・・・あの世界で起こったことは全部・・・。」
「わかってる、わかってるさ・・・でも。」
そう言うと彼は息をスゥッと吸って
真っ直ぐな顔で僕を見つめてきた
その顔に迷いは無く
不安も、後悔も感じさせなかった・・・。
「全てを犠牲にしてでも、歌い続けたかったんだ。」
・・・僕には解らないけれど・・・。
彼にとっては、それが・・・
答えのようなものだったのだろう。
「・・・そうだ、売り物で余った狐のお面でよかったら、あげるよ。」
「ありがとね、じゃあこれはお礼!」
・・・そういって手渡されたのは・・・。
王子様からもらっていた・・・王家ではどこにでもありそうな・・・髪飾りだった。
「カノン君これはあの子から貰った・・・。」
「僕はもう、カノンじゃないんだ。」
狐の仮面で顔が見えなくなった彼が
その時何を思っていたのかは解らないけれど
「黒歌って言うんだ・・・これからよろしくね!」
この髪飾りを誰かに渡したかったのだろう
自分では捨てられない物だから
・・・それでも過去の自分と決別したかったから・・・。
「じゃあ、僕初めての仕事に行ってくるよ!人員勧誘みたいだから!」
そう言って彼は出かけてしまった
世界を移動して
黒時の力で未来へ渡って・・・。
「・・・君みたいに強い人間だったら、どれだけ良かっただろうね・・・。」
「ふっふふふー・・・憶測だけでよくもまぁそんなに干渉に浸れますね!」
「黒時・・・僕は君達と違って繊細なの、放っておいてよ。」
「貴方のロマンチックな語りは私、結構好きですよ?」
・・・?
何を言ってるんだこいつは・・・?
っていうか・・・。
だれがロマンチックだ誰が。
「しばらく黒雷に仕事はありませんが・・・良かったら見に行きます?」
「・・・何を?」
「運命の、続き・・・ですかね?」
・・・運命・・・つまり、カノン・・・いや
黒歌の様子を見に行く・・・ようなものか・・・。
「・・・特別に付き合ってあげるよ。」
内心、気になって仕方なかったのだ
彼が黒の騎士団に入って
何を思って何をするのか・・・。
こうして僕は
次の物語へと歩みを進めた。




