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硝子の靴と魔法の鏡

黒鉄くろがね 哲也てつや君。」


「・・・はい。」



今日は少年院を出られる日だ

小難しい事は頭に入ってこないが


とにかく今日はもう、出ていいらしい


俺みたいな殺人犯を野放しにするなんて

日本の警察はどうかしてる。


外なんかに出して、俺がまた人を殺す事になったら

本当にどうするつもりなんだ。



・・・何度も何度も思い出す、あの血のぬくもり

もう二度と味わいたくないのに


何度でも、何度でも・・・。

頭の中をあの感覚が永延に駆け巡る。



「・・・哲也!」


「てっちゃん!久しぶり!」



苦労太と、カラクサだ。

どんなふうに喋っていたのか思い出せないや



「帰ろう、哲也。」



そう言って、手をつないで

団子屋まで連れて行ってくれる、カラクサさん。


その一歩一歩が、嬉しいはずなのに



とても、痛い。



割れた硝子の道を裸足で歩いてる気分だ。


その痛みは足の裏から伝わって

全身に駆け巡る


痛い、つらい・・・。



そうだ、あの時

俺に殺された人は・・・。



「・・・吐きそう・・・。」


「・・・ここでちょっと休むか。」













胃の中を空っぽにしたら、少し楽になった。

気を使ったカラクサは、苦労太を家に帰してしまったようだった。



・・・幸せな時間のはずなのに・・・。



あの時の・・・いや、もっと前のもだ。

人を殺めた記憶は突然フラッシュバックして


俺は、記憶に怯えながら暮らすしか、もうないのかもしれない。




「・・・哲也、とりあえず、またここで、一緒に暮らそう。」


「・・・ありがとうございます・・・カラクサさん・・・。」


「ふふ、なんだ、気持ち悪いな。」




そういって、カラクサさんは頭を撫でてくれた。




「どうやって、話してたか、思い出せなくて。」


「いいよ、お前の好きなように話せば。」


「・・・うん。」



・・・学校は卒業まで行かないことになっている。

中学も、何処にいくか・・・決めてないし。


そもそも行くのも、億劫で。


この先どうしようかな・・・。



「・・・哲也、もしよかったらの話なんだが。」


「・・・?何ですか。」


「俺と一緒に、団子屋をやらないか?」


「・・・ここですか。」


「もし、お前が学校なんかで生き辛いなら、でいいんだ。」


「・・・ははは・・・カラクサさんには敵わないや。」




まるで、心でも読まれてるかのような気分だ。


でも、なんとなくわかる

顔に出てしまうのだろう。


出さないように演じるのも、億劫だもの。




「・・・お言葉に甘えます。」


「・・・ああ、助かるよ、テツブン。」




・・・あの時みたいに

てつや、だから、鉄だから


鉄分って


確か、小さいころ

栄養食品か何かを見て


カラクサさんがそうやって

俺をからかったんだ。




血の感触を知らない頃の

幸せな記憶が蘇った。




ガンガンガン!と

戸を叩く音がした。



「すいません、今日はお店は休みで・・・。」


「お前に用事だカラクサ!フハハハハ!久しぶりだな!」



・・・突然お店に入ってきたのは

中臣 天丸・・・カラクサさんの学生時代の先輩だ


相変わらず、悪役みたいな笑い方と服装だ

体中に撒いている有刺鉄線は本当にファッションなのか疑問なレベルだ。



「・・・お久しぶりです天丸さん。」


「話は聞いてるぞ、テツブン・・・お前やらかしたらしいなぁ!」



フハハハハ!と笑いながら、痛いところをついてくる

しかもなんだかうれしそうだ。


この人は昔っからそうだ、笑顔で一番やらかす人なのだ。



「はぁ・・・それ言ったら、ボクだって聞いてますよ天丸さん・・・貴方もやらかしたんでしょ?」


「クックク!暫く合わないうちに大人な喋り方になったものだな・・・!」


「・・・天丸、ごまかしてるようだけど本当に良かったのか?親父の会社を乗っ取ったんだろ?」


「何、もう8年も前の話だ・・・あの時はまだ高校生だった、若かったのだ。それに、今の方がもっとやらかしてるしな。」




・・・い、今の方がもっと?

何やらかしたって言うんだ・・・。

そもそも人が傷心中だというのに、わざわざやってきて

なんのつもりだこの人。



「実は我が社は裏で兵器開発をしててな・・・。あちこちに売り捌いてる。」


「はぁ!?日本でそれはまずいだろ天丸!」


「フハハ!もっとやばいぞ!今度の客はお前らよろしくの桜組なのだ!」


「は・・・!?」



裏で兵器開発をしている会社と

・・・元々知り合いだったとはいえ・・・。


桜組がくっつくなんて・・・。



「黒鳥財閥は力を付けてきた、狙う組織は過激になってきている。」


「・・・まぁ確かに・・・。」


「いまこそ桜組が中臣コーポレーションと力を合わせて。彼らを守るべきだ、そうだろう?」


「・・・しかし、一気に社会の裏って感じになるなぁ・・・大丈夫なのか?兵器とかって・・・。」


「大丈夫な訳あるか、それを隠し通す為に、黒鳥財閥の財力や、桜組の兵力が必要なのだ。」



・・・話が難しくってよくわかんなかったけど・・・。

この人はきっと、この街のラスボスとか


そういうやつなんだろう


だって、兵力を欲しがるなんて

普通の人ならまずありえないし。



「・・・素晴らしいじゃないか、桜井、黒鳥、中臣・・・そしてお前、学生時代に切磋琢磨した我らが、またこうして力を合わせ生活をおくるのだ。」


「まぁ、確かに・・・俺だって、桜井の決めたことならついていくけどさ。」


「そこで、哲也・・・お前にも頼みがある。」



・・・ん?

今聞きなれた名前が・・・あれ?



「オレ!?」


「ボーっとするな、お前にも用事があって今日来たのだ。」


「な、なんすか・・・。」


「クク、話し方がもどってきたな・・・何、難しい事じゃあない、お前にも社会の裏に、闇の社会に身を落としてほしいというくらいだ。」


「RPGで同意したら即ゲームオーバーになるタイプの魔王の囁きじゃないですか・・・!」


「・・・まぁそうだな・・・だがこれも、お前の抱えるトラウマともいえる『実績』からの頼みだ。」



・・・え・・・。

それって・・・もしかして・・・。



「待て天丸!!哲也はまだ子供だぞ!?そんな・・・!」


「子供だから言っているのだ!あんな思いをして、子供が普通の暮らしに戻れると思うか!?」



・・・確かに・・・俺は、もう

普通の暮らしには、どちらにしても戻れないだろう


ふとした瞬間に、いつも蘇る、あの記憶。



「だからこそ・・・我らの戦力となり、桜組の兵士として・・・そのトラウマを飼い馴らせ、哲也。悪い話ではないはずだ。」


「・・・。」


「まぁ、無理にとは言わん。ただ率直に俺は、お前の才能が、戦力が、桜組に欲しいだけだ。」


「・・・俺・・・やりますよ。」


「・・・哲也!」


「天丸さんの言うとおりなんです、カラクサさん。俺はもう・・・。」


「そうか・・・まぁ、好きにしろ・・・。」



カラクサさんもなんだか諦めたようだった

心配してもらったのに少し申し訳ないけど。



・・・もう迷うことはない。




「・・・よし、それでは普段はカラクサと一緒に団子屋として暮せ、堂々とやりすぎるな・・・身を隠せ、自分を守るんだ。」


「・・・はい。」




どうやら俺は

やはり、外に出ても


人を殺すことをやめられないようだ


ほらみろ、警察

お前らがずっと俺を捕まえておかないから




ドンドン俺が辛い目に合うじゃないか。





だけど・・・。

無理やり幸せなフリをして

一生をやりすごすより




随分と気が楽だ。

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