死神と命
黒死が落ち込んでいると聞いた僕は
すぐに元気付けるべく
地獄へと足を運んでいた・・・。
「・・・黒死っ!」
「ほぇ!?黒命!ど、どうして君が地獄に・・・!」
「えへへ、遊びに来ちゃった。」
「彼女か!」
か、彼女だなんて・・・照れちゃう・・・。
もう・・・君は僕に、ついてるものはついてるだろ!なんて
いつも言うくせに!
彼女だなんて・・・!
彼氏でもいいんだぞっ!黒死!
僕ら天使に性別なんていう概念はないのだから!
君との恋仲になんの障害もないのだから!
遠慮しなくていいんだぞ!
なんなら今晩体の・・・!!
おっとっと!
そうじゃない、そうじゃない
黒死を元気づけに来たんだった。
「ねぇ、黒死?なんだか最近元気、ないよね?」
「・・・ギクッ・・・そんなこと・・・な、ないよ?」
「嘘つくの下手くそなところも可愛くって好きだけどね?ごまかしたって無駄だよ!」
「ん・・・君には、かなわないな・・・。」
そう言って少しうつむく黒死
なにこれかわいい
頭撫でてってことかな?
そうなのかな?
撫でていいのかな?
・・・いや違うな!落ち着け僕!
「僕でよかったら、話くらいなら聞くよ?」
「・・・迷惑かも、しれない話だし・・・。黒命はこの話、嫌いだよ。」
やっぱり渋るか・・・。
この子・・・人に迷惑かけたり
心配かけたりするのが苦手なんだよな。
僕としては、黒死の迷惑ならご褒美だし
黒死の事を心配したいのに・・・。
距離を感じる・・・。
だけど、僕は
黒死を元気付けに来たんだ!
「・・・ねぇ黒死!僕、君が辛いほうが嫌だよ?好きな人には笑顔でいて欲しいから・・・。」
そう言って唇を奪おうとすると
いつものようにやんわりと腕で拒否された
今度は手を掴んで、じっと目を見た。
「・・・お願い、黒死・・・僕に、話して。」
「・・・こ、後悔するぞ・・・。」
僕が真剣な眼で見つめていたら
やがて黒死はゆっくりと話はじめた。
「あの・・・あのね、ボク・・・ホントは・・・命なんか・・・奪いたくないんだ。」
「ああ・・・なんとなくそうなんじゃないかなって、思ってたよ。」
「うん・・・だから、この間、いっぱい命を奪ったの・・時々、思い出しちゃってさ・・・。」
「・・・うん。」
「なんの労力もなく・・・死んでいくんだ、命が・・・みんな・・・死にたくないって声が、無限に広がっていくんだ・・・。」
「黒死・・・。」
「僕は死そのものだから・・・こうやって、皆から嫌われていくんだって・・・僕は、ずっとひとりなんだって。」
黒死は、もうあとひと押ししたら泣いてしまうだろうというくらい
目が潤んでいた。
心が痛んだ
聞いてしまって少し後悔していた。
黒死の中の苦しみや悲しみに気づいてしまったから。
・・・今まで僕はコレから目を背けていたのだから。
自分が少し、情けなくなっていた。
「だから僕はずっと不幸でいたいのに、きっとそれが僕にとっての罰なのに・・・幸せでいる時間が増えてきて・・・それで。」
「それで、不安になった?」
「うん・・・怖いんだ・・・。」
「・・・じゃあ、君は今幸せなんだね。」
僕には今はこれくらいしかできないけど
いつか、この子を救ってあげたい
本気でそう思った。
「・・・泣くの、我慢してるの?」
「・・・そんなこと、ないもん。」
僕は、黒死の目の前で
思いっきり猫だましをした
大きな音に驚いた黒死は
ボロボロと涙を流し始めた。
「う・・・ぁ・・・。」
「おいで、黒死。」
僕は黒死を抱きしめた。
普段なら嫌がって絶対にさせてくれないけど
今日は大人しく胸の中に収まってくれた。
「ううぅ・・・うああぁん・・・。ひどいや、黒命ぇ・・・。」
「泣きたい時はちゃんと泣かないとダメだって・・・自分で言ってたじゃないか、黒歌に。」
「だって・・・だってぇ・・・。」
「今日は・・・僕が全部受け止めてあげるから・・・いくらでも泣けばいいよ。」
「・・・やだぁ・・・そんなこと言わないで・・・僕・・・幸せは嫌いなんだ・・・。」
・・・今黒死は
僕に抱きしめられて、幸せなのか
でもこの子は幸せが怖いのだろう
ずっとずっと不幸だったから
手放すのが怖くなるのだろう
・・・思えば僕は
黒死が入団して来た過程も
それからのこともそれまでのことも・・・。
全部知っているハズなのに。
なんで気づいてあげられなかったんだろう
ぼくは何を見てきたんだ
馬鹿・・・僕の、馬鹿。
泣き疲れて眠ってしまった黒死の唇を奪った
少し顔が赤くなった
今までよりもっと、黒死が愛おしくなった。
僕が一人でなんとかできるほど
問題は小さくないし
この問題を解決するのだって
君は望んでないだろう。
だけど僕は、多分
君が一番嫌がる事を
してしまうだろう。
それは君のためと言えるのか
本人が嫌がる事を
勝手にして
本当にそれでいいのか・・・。
僕には解らないけれど。
それでも僕は黒死が好きだから。
黒死が安心して幸せになれる未来を
この手で作りたいと思った。
多分、これが本当に
愛してるって事だと、思うから。




