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あすかの幸せについて  作者: こうた
第3章 何より暑い夏

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第6話 二人だけの休日

休日の朝。



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目覚まし時計が鳴る前に目が覚める。



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最近、こんな日が増えた。



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理由は分かっている。



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今日は悠真と会う日だった。



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あすかはベッドの上で天井を見つめる。



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春の頃なら考えられなかった。



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休日に誰かと会う予定があること。



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その予定を楽しみにしていること。



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そして、その相手が悠真であること。



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窓の外は青空だった。



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夏らしい強い日差し。



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蝉の鳴き声。



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暑くなりそうだ。



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それなのに気分は軽かった。



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待ち合わせは午前十一時。



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今回は悠真が提案した。



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「水族館行かない?」



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最初に聞いた時は少し驚いた。



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もっと大人っぽい場所を想像していたからだ。



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でも悠真は笑いながら言った。



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「夏っぽいじゃん」



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その一言で決まった。



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待ち合わせ場所に着く。



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悠真はすでに来ていた。



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「おはよう」



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「おはようございます」



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自然な挨拶。



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もう緊張は以前ほどではない。



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でも胸は少しだけ高鳴る。



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それは変わらない。



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電車に乗る。



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並んで座る。



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車窓の景色が流れていく。



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二人で話す。



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他愛もない話。



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昨日見たテレビ。



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仕事の愚痴。



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最近暑いという話。



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どれも特別ではない。



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でも不思議と楽しい。



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水族館へ着く。



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家族連れが多い。



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子どもたちの声が響く。



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少し賑やかだった。



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館内へ入る。



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涼しい空気。



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青い光。



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大きな水槽。



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魚たちがゆっくり泳いでいる。



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「なんか落ち着くな」



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悠真が言う。



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「分かります」



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あすかも笑う。



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しばらく並んで歩く。



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言葉がなくても苦しくない。



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それが心地良かった。



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大きな回遊水槽の前で立ち止まる。



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巨大な魚がゆっくり泳いでいる。



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青い光が二人を照らす。



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その時だった。



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近くを通った子どもが走る。



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ぶつかりそうになる。



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あすかが少しよろめく。



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その瞬間。



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悠真が腕を掴んだ。



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「大丈夫?」



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ほんの一瞬。



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それだけ。



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でも。



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心臓が大きく跳ねた。



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「だ、大丈夫です」



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声が少し裏返る。



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悠真はすぐ手を離した。



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それなのに、


感触だけが残る。



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自分でも分かる。



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顔が熱い。



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幸い館内は少し暗い。



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気づかれていないと思いたかった。



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昼食を食べる。



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館内のレストラン。



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窓の外には海。



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夏の日差しが眩しい。



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「楽しい?」



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悠真が聞く。



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あすかは少し驚く。



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「楽しいですよ」



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即答だった。



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悠真は笑う。



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「よかった」



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その言葉が嬉しい。



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自分が楽しいことを、


喜んでくれる人がいる。



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それだけで幸せだった。



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午後。



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海沿いを歩く。



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風は暑い。



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でも時折吹く潮風が気持ちいい。



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空は高い。



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雲は白い。



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夏そのものだった。



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「ねえ」



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悠真が言う。



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「去年の今頃って何してた?」



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突然の質問。



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あすかは考える。



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去年の夏。



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仕事をして。



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家に帰って。



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休日は家で過ごして。



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それだけだった。



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「特に何も」



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正直に答える。



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悠真は笑う。



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「俺も似たようなもん」



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少し沈黙。



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そして続ける。



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「今年は違うな」



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その言葉に胸が揺れる。



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今年は違う。



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確かにそうだった。



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去年の自分は、


こんな夏を知らない。



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誰かと出かけて。



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笑って。



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未来を少しだけ期待する。



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そんな時間を知らなかった。



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夕方。



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帰りの電車。



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窓の外がオレンジ色になる。



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あすかはぼんやり景色を見ていた。



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今日一日を思い返す。



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楽しかった。



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本当に。



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だからこそ怖い。



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失いたくないと思ってしまう。



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駅へ着く。



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別れる時間。



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いつも少し寂しい。



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でも今日は特にそうだった。



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悠真が言う。



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「今日はありがとう」



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「こちらこそ」



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少し沈黙。



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そして悠真が笑う。



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「また行こう」



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その言葉に、


あすかは自然にうなずいていた。



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「はい」



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もう迷わなかった。



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行きたいと思ったから。



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もっと一緒にいたいと思ったから。



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改札へ向かう悠真の背中を見る。



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胸の奥が温かい。



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そして少し苦しい。



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恋は近づくほど幸せになるわけじゃない。



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近づくほど不安も増える。



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それでも。



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今日の思い出は確かだった。



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夏の海。



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青い水槽。



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一瞬だけ触れた手。



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その全部が、


あすかの心の中に静かに積み重なっていく。



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そして彼女はまだ知らない。



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この夏が最も熱くなるのは、


これからだということを。



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第3章 第7話「花火の夜に」へ続く

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