バレちゃった!?
ある日の放課後。
鏡子ちゃんはまたバスケ部マネージャーの助っ人を頼まれたらしい。今回は、2年生の絵麻先輩からの直々のご指名だそうだ。
彼女って気が効くから、気に入られちゃったのかな?
「サキちゃん、今日はバスケ部の練習だから遅くなりそう……。だから真っ直ぐに家に帰ってね! 寄り道したらダメだよ! 靴に履き替えたらすぐに学校から出ること! いいよね!」
「(小学生かよ!)……う、うん、分かったよ。じゃあ、鏡子ちゃん頑張ってね」
「うん、サキちゃん、真っ直ぐに帰ってね!」
名残惜しそうに見つめてくる鏡子ちゃん。
美少女の後ろ姿はどこか儚くて、絵になるなぁ……なんて思いながら見送る。
さて、言いつけ通り早く帰ってアニメだ! リリー以外の作品でも、コアラっ子さんや蜜柑ちゃんさんと盛り上がりたいな。ちょっと違うアニメの感想も書いてみようかな……。
そんなことを考えながら昇降口へ降りると、たまたま向こうから伊藤先輩が歩いてきた。生徒会室に向かう途中だろうか?
ふと目が合うと、先輩は立ち止まり、なぜか顔を真っ赤にしてモジモジしだした。
わたしより背が高いのに、なんだか小動物みたいで可愛い。
「伊藤先輩、さようなら」
「あ、あの……美山サキ様……!」
あれ? やっぱり今日も「様」付け?
「は、はい? 様……ですか?」
「あ、あのね……ほんのちょっと、お話いいかしら?」
今日はなんだろう。やっぱり象が好きか、とか聞かれるのかな?
「はい」
「あのお……サキ様は……アニメとか、お好きなの、よね……?」
え? アニメ? 急にどうして? 優花里先輩からの意外すぎる質問に、わたしは完全に面食らってしまった。
「はい、好きですけど」
「どんなのが好きなの?」
(……言っても分かるかな?)
「『魔法乙女リリー』とか、ご存知ですか?」
「もちろん知ってるわ!!」
食い気味のその迫力に、わたしは思わずのけぞってしまう。
「あ、ご存知なんですね。もしかして観られているんですか?」
「はい、観ております!」
なぜに敬語?
「あー、あれ面白いですよね」
「そうなのよね! あれはやっぱり、愛の物語ですわよね!」
(……あれ?このフレーズ、どこかで聞いたような……)
「そ、そうですよね……どんな時でも愛することを……」
「そうなのよね! 人を愛することの尊さを、全ての回で表しているわよね!」
「あ、はい、胸熱ですよね!」
「そうそう、次回はどんな展開になるのか楽しみですよね、 わたしはそろそろ、相棒のクッキー(マスコットキャラです)の正体が判明するんじゃないかと思ってるんですよ」
「ああ、クッキーね……わたし、あの子は実は敵と繋がってるんじゃないかと思うのですが」
「えっ? そう見ますか!? それは意外ですね! でもそうなったらもっと盛り上がりそう……」
「ですよね! よね!!」
なんだか優花里先輩、めちゃくちゃ楽しそうだな。この人のこんな顔、初めて見た。
「伊藤先輩がこんなにリリーを好きだなんて、知りませんでした!意外です!」
「伊藤先輩だなんて……わたしのことは、優花里って呼んでいいのよ」
ええっ!? いきなり距離感近っ! バグってない?
「あ〜……はい。じゃあ、優花里先輩」
あ? なんだかめちゃくちゃ嬉しそうなんだけど…
顔を真っ赤にして、目を瞑ってプルプル震えてるし。
「サキ様、もっと呼んでくれません?」
「あ、はい。優花里先輩(…あれ、わたし、今さらっと下の名前で呼んじゃった?しかも優花里先輩私のしたの名前呼びになってるし)」
「んん〜! 嬉しいわ、ありがとう…!」
「あ、あの、優花里先輩。それと…なんでわたしを様呼びなんですか? 『さん』でいいんですよ?」
すると、先輩はとろけるような、でもどこか誇らしげな笑顔でこう言った。
「だって…あなた、みっきん様なんでしょう?」
「……っ!!!」
(バレてる! なんで!? どうして!? ヤバい、やっぱり怒られるの? 今までのリリーの話は、わたしを油断させて白状させるための罠だったの!?罠にハマっちゃった?)
「ご、ごめんなさい! 優花里先輩、し、失礼します!」
わたしはパニックのまま、音速で靴を履き替え、昇降口からダッシュで逃げ出した。
「あ、みっきん様!」
垢名を後ろから呼ばれたような気がしたけれど、今のわたしの耳には何も入っていなかった。
いきなり逃げ出したサキ、この先どうなるのか?




