え?!わたし異世界行っちゃうの?!(ここはなろうだけど行かないから!)
「お姉、起きなよー!」
また美嘉か……。
最近、あいつ毎日起こしに来るよな。 まあ、以前みたいに愛想悪く「起きろ!」と叫びながら、扉の隙間からクッションを投げてくるよりはマシなのかな。
「ねえ、あんた最近優しいよね〜? もしかしてツンデレ妹か〜?へへへー!」
「なっ! バカ姉! 何言ってんだよ! そんなわけないだろ! 早く降りて来なよ!」
結局、クッションが飛んできた。
眠たい目を擦りながら一階へ降りていった。
「おはよー……」
「おはよう、サキちゃん!」
ん? この声は……
「って、なんで鏡子ちゃんがいるの〜!」
わたし、パジャマ代わりのヨレヨレなトレーナー姿だし! めっちゃ恥ずっ!
「ちょ! ちょっと着替えてくるから!」
わたしは二階へ全力リターンし、制服に着替えて鏡の前で寝癖を整え、再び階段を駆け下りた。
リビングでは、鏡子ちゃんが優雅にコーヒーを飲んでいた。
美少女はどんな格好でもサマになるな〜。
「鏡子ちゃん、どうしたの急に? 」
「ん〜、駅で会ってもいいかなって思ったんだけど、久しぶりにサキちゃんのお宅にお邪魔しようかな、って」
「は、はい。嬉しいけど……でも、いきなり朝来るのは驚いたよ」
わたしが戸惑っていると、お母さんの美沙が横から入ってきた。
「そんなことないわよ! わたしも久しぶりに鏡子ちゃんに会えて嬉しいわ。この子、朝が弱いから、こういうことでもないと出かける直前までシャキッとしないし」
お母様、娘の恥を晒すのはやめて……
「いえいえ、わたしも低血圧で朝はキツいんですよ」
鏡子ちゃんが微笑む。……低血圧の女が、なぜこの時間にここにいる!? 全然キツそうじゃないし!
「受験の時にお泊まりでお邪魔してたので、半年ぶりくらいですかね」
「それくらいになるよね。鏡子ちゃん、良かったらいつでも遊びに来てね。サキも美嘉も喜ぶから。そうそう、朝ご飯食べてく?」
「ありがとうございます。自宅で食べてきましたから、コーヒーを頂けて嬉しいです」
「本当に鏡子ちゃんはいい子だね〜、サキも見習わないと」
お母様、もうやめて……挙げ句の果てに、交換したいって言わないでね。
鏡子ちゃんがニコニコと見つめる中、わたしは急いで食事を済ませた。
「「行ってきまーす!」」
「いってらっしゃい! 鏡子ちゃん、サキをよろしくね!」
「はい、うけたまわりましたー!」
朝からテンション高いな〜! 居酒屋かよ! 行ったことないけど。
いつものように蛇という名の腕を絡めてくる鏡子ちゃん。いつものようにご立派なお胸が当たってますよ。
「でも今朝はどうしたの? 家まで来て」
「うん、なんかね、心配だったから」
「心配? なんで? 小学生かい! 流石に家まで伊藤先輩は現れないでしょ〜?」
「うん、そうなんだけど……サキちゃんと一分一秒でも長く一緒にいられたらなって……」
鏡子ちゃんが顔を赤らめながら俯く。
くぅ〜! お胸の大きい超絶美少女にこんな顔されたら、もう幸せとしか思えないよ!
わたし、一体どうなるの!? 幸せすぎて天に召されちゃうの?
それともトラックに跳ねられて異世界行っちゃうの〜?
願わくば、転生するならお胸の大きくて美人のチート魔術師をお願いします!神様!
だが幸い、異世界召喚されることもなく駅へ到着。
ま、そんなもんだよね。
そこにはわたし達の密着度合いに、呆れた顔の茜が待っていた。
鏡子ちゃんが家に来たと伝えると、さらに顔が引き攣っていた。
まあ、そうなるよね。
学校への道中、美少女に腕を組まれて登校する私たちはもはや街の風物詩だ。
みんな当たり前のように挨拶してくる。人って環境に順応する生き物なんだね!
見えてきた校門には今日もいらっしゃいます、風紀委員の面々。
そして優花里先輩も……なんだか今朝は、すごく自然な笑顔で生徒に挨拶している。
みんな見惚れてるよ。あれだけの美人の笑顔だもん、破壊力は抜群だ!
「おはようございます」
わたしが挨拶すると、優花里先輩は満面の笑みを浮かべた。
「美山サキ様、おはよう」
……ん? 今、わたし、「様」って呼ばれた? フルネームで?聞き間違い? 名前を呼ばれるのはいつものことだけど…
しかも先輩、顔が真っ赤だったな。風邪なのかな?
と、その時、腕への力が急速に増していった。
「痛い痛い痛い! 鏡子ちゃん、また腕締め付けないで! いつもより強いよ!」
鏡子ちゃんは後ろをじっと睨みつけている。前を向かないと危ないよ。
「鏡子ちゃん、どうしたの? 痛かったよ」
「ああ、ごめんねサキ。……心配だったから」
鏡子ちゃん、明らかに優花里先輩を意識してるよね?
「ごめんね、サキちゃん、教室へ行こう!」
今度は強く腕を引っ張られて、わたしたちは教室へと走っていった。
サキへの気持ちが溢れる優花里に、警戒する鏡子。
どんどん混迷の度合いを増していきます。




