鏡子の独白!
鏡子ちゃんがサキを好きになるきっかけと過程を描きました。
この彼女の気持ちはどこまでサキに届いているのでしょうか?
最近、2年生の風紀委員長である伊藤優花里先輩が、サキちゃんとやたらと接触しようとしている。
最初は、単に風紀委員長としての職務だと思っていた。
けれど、なぜか毎日わざわざ1年生のいる4階の通路を行き来し、他の生徒への注意の合間に、サキちゃんに対してだけ異常なまでに細かな指摘を繰り返している。
校章の歪み、目の下のクマ…他の子なら見逃すような些細なことまで、彼女は逃さず注意という名の声掛けをしている。
何より、サキちゃんを見つめる時の先輩の目が違うのだ。はっきりと言葉にはできないけれど、そこには義務感ではない「何か」が宿っている。
サキちゃんは、小学校時代からの大切な幼馴染だ。 昔からそそっかしくて、忘れ物も多く、道で転んでばかりだった。
いつの間にか私がお世話をすることが当たり前になっていたけれど、彼女との間には、忘れられない思い出がある。
ある遠足の時、私は人生で初めての大失敗をしてしまった。
お弁当を家に忘れてしまったのだ、「しっかり者」という周りの評価が重荷で、先生にも友達にも言い出せず、一人で木の陰に隠れていたわたしを、見つけてくれたのはサキちゃんだった。
「いつも鏡子ちゃんにいろいろと助けてもらってるから」 そう言って、彼女は自分のお弁当を半分も分けてくれた。
帰り道、お互いにお腹を鳴らしながら歩いたあの時間。謝り続ける私に、空腹のはずのサキちゃんは、ただ優しく微笑みかけてくれた。
今でもあの笑顔は忘れられない。
中学になってもずっと一緒で、高校受験の時。私が雲乃伊都女子校を受けると知ったサキちゃんは、寝不足でフラフラになりながら猛勉強をしてくれた。
「鏡子ちゃんと一緒の高校に行くんだ」と笑ってくれたあの瞬間の喜びも、わたしは一生忘れない。
だから、お互いの家へ泊まりがけで勉強会もした。
どちらかというと私が彼女に教える感じだったが、それでも楽しかった。
2人とも合格をした時には2人して抱き合い、天にも昇る思いだった。
彼女と一緒にいられるだけで幸せだった。
いつの間にか、サキちゃんが私の隣にいるのが当たり前になっていた。
サキちゃんの優しさにいつも助けられているわたしがいた。
どこに行くにもサキちゃんと一緒だった。
そして、いつの間にか、私はサキちゃんのことを友達としての関係以上に、好きになっていた。
だからこそ分かる。
伊藤先輩が、サキちゃんを「狙っている」ということを。
どこで彼女がサキちゃんを見初めたのかは分からない。
けれど、突然現れた部外者に、私の大切な場所を譲るつもりなんて微塵もない。
(……守らなきゃ。少なくともこの高校3年間、サキちゃんの一番隣にいるのは、私でなきゃいけない)
図書室でサキちゃんを連れ出し、その腕にぎゅっとしがみつく。
サキちゃんは不思議そうにわたしを見ているけれど、それでいい。
彼女の鈍感さは、今の私にとって都合がいい。叶うならいつまでもこうしていたい。
不気味なほど綺麗な夕焼けの中、私は腕の中にある温もりを確かめるように、さらに力を込めた。




