わたしの戦いがはじまる!
私立雲乃伊戸女子高校1年生の美山サキ、ごく平凡だったアニオタの彼女を好きになるのは、愛が重い女子ばかり。
百合とヤンデレを題材にした、突っ込みを入れながら笑えるラブコメを目指しています。
「……っ、はぁ、はぁ……」
うす暗く、静まり返った部屋。微かな香水の香りと、冷たい革の質感。
わたしの視界は、いま上下が逆さまになっている。なぜなら、お姫様抱っこならぬ、もっと荒々しい「荷物持ち」のような形で、縄でイモムシの様に縛られ、彼女の肩に担がれているからだ。そしてわたしは、ごろりと冷たい床に転がされる。
「……わたしから逃げられると思ったの?あなたを絶対に逃さない」
低く、けれど鈴を転がすような美しい声。 彼女の腕は細いのに、万力のような力で、床に横たわるわたしの身体を押さえつけ、逃がしてくれない。
「ち、違うの! わたしはただ、今夜放送のアニメの録画予約を忘れてたから……!だから……」
「嘘……あの女と会っていたのよね?これから、あなたの運命はどうなるのか、もう分かっているよね。でも安心してね。わたしもすぐにあなたの後を追うから」
その瞬間、彼女の瞳から光が消えた。
右手に握られている刃物にギラリと懐中電灯の光が反射する。
わたしは悟った。
ああ、これ自分の部屋でお気楽にアニメを見ながらポテチ食べてた頃にはもう二度と戻れないやつだ、あんなのが刺さると、すっごく痛いんだろうな……と。
思えば短い人生だった……どうせ逃れられないなら、せめて痛みを感じる前にひとおもいに……
そう考える間もなく、彼女の右手がわたしに向けて力一杯振り下ろされた……
ぐわーーーっ!!いたたたたーー!
ーーー
と、ここでわたしは目を覚ました。
全身に嫌な汗をかいていた。
いきなり夢オチ?
いえいえ、これはわたしがこれからの選択を一つでも間違えてしまえば、現実に起こり得る事なんです。
これからわたしと彼女たちとの愛情と命をかけた戦いが始まるところから、この物語は始まります。
ーーー
わたしは、私立雲乃伊戸女子高校1年、美山サキ、15才。
アニメが大好きで、今期の深夜アニメ魔法乙女リリー3期に、どハマりしてます。
推しのキャラを愛で、深夜アニメの感想をエンスタ(SNS)に投稿し、幼馴染で親友のクラスメイト、後藤鏡子ちゃんと「百合アニメ最高だね」なんて言い合って、ごく普通のアニオタ学生生活を満喫していたわたし。
ただ風紀委員長の2年生、伊藤優花里先輩に声をかけられるまでは、そんな日々が続いていくと思っていました。
わたしの入学以来1ヶ月しか持たなかった、こんな平凡な学園生活は、ここから音を立てて崩れ去っていきました。
わたしは叫ぶ。
「わたしはただ、毎日画面の中の女の子を愛でていたいだけなんだってばぁぁぁぁ!」
――これは、愛が重すぎる美少女たちに囲まれた、一人のアニオタ、つまりわたしの受難と闘争の記録です。 わたしの向かう先は、ハッピーエンドか?それとも、愛も命も無くしてしまうバッドエンドか……?
ーーー
時は入学から1ヶ月が経ち、ゴールデンウィークが過ぎてすこしずつ気温も上がりだした頃。
長かった一日の授業が終わり、ホームルームが終わた直後、わたしまたもやっちゃいました。
「あわわわ……鏡子ちゃん、帰る用意してて消しゴム落ちちゃったから拾おうとしたら筆箱の中身ぶちまけちゃったよ〜!」
「サキちゃん、落ち着いてー、ほら、転がったシャー芯はわたしが拾うから」
「ごめん!鏡子ちゃん!あたっ!も〜!机に頭ぶつけたよ〜くそ〜ふざけんなよ〜くそ机〜!」
私の小学校からの幼馴染の後藤鏡子ちゃん、彼女は学年でも一番成績優秀でお胸はクラス?いや学年?いやいや学校いち、で優しい性格……って成績でも胸でも性格でも全て負けてるわたしの立場って……うぅ……
「もー、サキは相変わらずおっちょこちょいだなぁ〜、机に八つ当たりしないの〜。はい、こっちにも転がってたよ〜」
「あ、茜! ありがとう…あぅ、こんな落ち着きないとまたテストの点数で茜に並ばれるのかも…」
「何言ってんの〜!いつもの小テストはサキの方が上でしょ〜この前は、たまたまだったのに、それってイ、ヤ、ミかな〜?わたしは部活があるから、頭脳労働はサキに任せてるんだよ〜!」
「いいな〜茜は少々成績悪くても部活を理由に出来るからな〜」
「いやいやお姉さん!成績悪かったら部活禁止になっちゃうから!赤点出したらわたしの楽しい部活生活終わっちゃうからね!」
スポーツ万能だが勉強は苦手な金石茜、高校に入ってたまたま体育で同じグループになって以来仲良くなった子で、筋肉質の割にお胸は私よりも…なんで〜!も少し頑張れよ!私の胸〜。
彼女はいたずらっぽく笑って私の肩を叩く。帰宅部のわたしとは正反対の生活してるんだけど、なんか茜とは気が合うんだよな〜。
もうわたしたち三人の賑やかなやり取りは、うちのクラス(1年B組)でも目立つので凸凹(もしかしてその漢字は胸を表しているのか?!そうなのか?)トリオとして周りから生暖かく見守られてます。
わたしのぶちまけた荷物をまとめ終えたので、早く家に帰って部屋の大画面でアニメを見ようと昇降口へと急いでいたら、廊下の角で誰かとぶつかりそうに!!
開始早々いきなりのラブコメ展開かよ!
「きゃっ!」
「危ないわよ、廊下は走らないこと、気をつけてね。あら?あなた確か1年の美山サキさん、だったかしら?」
目の前に立っていたのは、腕章を巻いた風紀委員長の伊藤優花里先輩。なぜか少し驚いた表情、そりゃあ急に飛び出したのはわたしだったから…
凛とした立ち姿、そして風紀委員長としての鋭い眼差し。この人学校でもトップのめっちゃ美人の超お嬢様なんだけど、厳しいし、目つきも鋭くて、ちょっと怖いから苦手なんだよな……
「あ、あ、伊藤先輩……! すみません、やっちゃいました」
「いい?廊下は走らないように!ぶつかって怪我をしたらお互い大変でしょ?ほら、髪の毛もボサボサになってるわよ」
伊藤先輩の手が、私の乱れた前髪をふわりと整えてくれて。その指先の熱に、わたしは思わず顔が林檎のように赤く熱くなるのを感じた。
「へぁ?あ、ありがとうございます!ごめんなさい!し、失礼します!」
怖いんだか、優しいんだか。でも美人だったな〜、でもあんなに近寄られたらドキドキだよ……
あれ?でも何でわたしの名前フルネームで知ってたの?
わたし何かいままで風紀委員に目つけられる事やらかしたっけ?
う〜ん、ぶつかりそうになったのは今回初めてだし、校門での風紀チェックも今のところは問題ないし……なんでだろ……?
あ、そんな事より、早く帰らないと妹の美嘉がうざ絡みしてくるから部屋に鍵かけとかないと、ゆっくりアニメ見れないしー!
その頃、わたしの自宅の美山家では。
中学3年生のわたしの妹、美嘉は親友の丸山晶と自分の部屋で話の真っ最中。
「……で、お姉からまた『今日のご飯何?』ってスタンプ。こういうのウザくない?そういうの母さんに直で聞けよな〜」
「美嘉〜そう言いながらお姉さんからのRINE(LINEみたいなやつ)、いっつも通知オンにしてるよねー、放課後とか通知気にしてるし〜なんで〜?」
「な!それは生存確認だって!ほ、ほらうちのお姉っておっちょこちょいだから〜どこで野垂れ死んでるか分からないし〜」
「あれ〜?美嘉ってシスコンのツンデレかな?」
「もー!晶のアホ〜!」
美嘉はスマホを放り出し、顔を赤くしてクッションに顔を埋めてしまった。
わたしの前ではそんな可愛いとこ見せないのに…こいつやはりツンデレなのか?!
その夜、美山家の食卓。
「ただいまーぁ。今日も会議が長引いたよ」
深夜近くに帰宅したのは、大和商事で課長を務める美山誠で、わたしの父親。
わたしは満面の笑みで。
「お父さん、お仕事お疲れ様!ご飯温め直すね」
疲れ果てていた父の顔がパァッと明るくなる。
「おお、サキ! ありがとう。サキの顔を見ると疲れも吹っ飛ぶよ。何か欲しいものはないか? パパが何か買ってあげようか?」
(ふふふ、これを狙ってたんだよ。遅くまで起きてた甲斐があったよ〜、じ、つ、は!そろそろ魔法乙女リリーの欲しいアクスタの予約が始まるんだよな〜)
と、思わず悪い顔になるわたし。
「もう、パパはお姉に甘すぎ〜!わたしにも〜!」
リビングの隅で、妹の美嘉がスマホをいじりながら冷ややかに言い放つ。
「おぃ美嘉!しっ!悔しいなら手伝え!」
もー!折角作戦成功しそうなのに、いらぬひと言を言うでない!
甘くていいんだよ!甘々で虫歯になるくらいがちょうどいいんだよ〜!
(……お姉要領良すぎ!パパも、お姉も、もっとわたしにかまえよな)
そんな心の声なんて、もちろん知るよしもなかった。わたしに対しての彼女の表の顔はただのうざい妹だった。
ここから愛の思い女の子達とわたしの戦い?が始まるのでした。
少しスロースターター気味の作品なので、読み進めて頂ければ、どんどん面白くなっていきます。
小説家になろう初投稿なので、よろしくお願いいたします!!




