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傘に隠れて秘密の話を  作者: 塚銛イオ


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12/20

6.寂しい金魚 ①



 夏祭りの日まで僕が個人的に周と会う事はなかった。

 強いて言えば、部活に行った体育館で周の姿を2回見かけたけれど、2回とも言葉を交わす事はなかった。

 周の周りはいつも人に溢れていたから、僕が入り込む隙間なんてなかった。


 それは何時もの事だから、と自分自身を納得させたのに、マネージャーらしい女の子が周の腕に触れているのが見えて、イラっとしてモヤっとした。

 きっと今の僕は凄く嫌な顔をしている。


 そう思ったら、周に見つかる訳にはいかなくなって僕はそそくさと体育館を後にした。






 夏祭り当日。


 何時もは周の家か僕の家が待ち合わせ場所になるけれど、周の帰りが遅くなりそうだと言うので、僕は駅前に待ち合わせ場所を変更することにした。


 忙しそうな周は僕からのメッセージに「了解」の意味で0Kのスタンプを返していた。

 伝わっていると信じたい。


 その日は一応バド部の活動日ではあったので、午前中は学校へ行き、友達と昼をファストフードで済ませた。

 家に帰ったのは2時近くで、待ち合わせ時間にはまだ早い。

 ゴロンとベッドに横になって周の事を考える。


 最近考えるのは周の事ばかりだ。


 今日やっと周に会える。周と話が出来る。

 2人で出掛ける事が殊の外嬉しくてウキウキと心が弾む。


 夏祭りでは何を食べよう。焼きそばもたこ焼きも美味しいよね。透子にはりんご飴と綿あめをお土産にしよう。

 僕も綿あめ好きだから、2つ買って周と一緒に食べようかな。

 ヨーヨー釣りは子どもみたいだからやらないけれど、金魚すくいだけは絶対やってこないと。

 こればっかりは外せない。僕たちの昔からの恒例行事だ。


 頭に浮かぶのは、これから過ごせる楽しい時間の事ばかり。

 僕はニヤニヤとした笑みを浮かべながら寝てしまったらしい。


 次に目が覚めた時は既に待ち合わせ時間の30分前。

 あっ、大変だ。遅刻しちゃう。


 僕は大急ぎで準備をすると、「行ってきます」の言葉だけかけて家を飛び出した。




 道はいつもより混んでいた。

 お祭りの影響だと言えるのは、そこかしこに浴衣を着て可愛らしく装った女の子が沢山いたからだ。

 みんな娯楽に飢えているんだな、なんて他人事みたいに思う。

 自分だって楽しみにしているのにね。



 駅前に着くと、約束していた時間のちょうど5分前。

 5分前行動できる僕って偉い。


 待ち合わせの鉄板なのでどこにいようか迷ったけれど、シンボルツリーみたいな大きな木を囲ってある柵に寄りかかって待つことにした。

 ここなら改札から出てきた周の姿が一目で分かるし、向こうからも僕を見つけてもらいやすい。


 やっぱりニヨニヨしながら周を待つ。

 今日の僕は浮かれすぎていてちょっとおかしい。


 今日の試合、出してもらえたのかな。まだ1年生だし、難しいかな。

 あ、でもバレー部は完全に実力主義って言ってたし周はスカウトだって来ちゃうぐらい上手な選手だった。

 先発メンバーじゃなくても途中交代ぐらいならありそう。

 僕も応援、行けばよかったなぁ。


 詳しい話を聞いてなかったのは自分なのに、責任転嫁をしてしまう。


 大体、周が夏祭り一緒に行こうなんて急に言うからそっちに意識が持っていかれちゃったんだよ。

 今年は絶対無理だと思ってたから、周からのお誘いがビックリ過ぎて頭がその事でいっぱいになったんだよ。


 でも、夏祭り、今年も周と一緒で良かったなぁ。

 去年は受験生だからって早い時間に解散したんだよね。息抜きも必要だって言い訳してさ。

 ふふ、懐かしいなぁ。


 無事、2人とも合格したし今年はもっと一緒にいられると思ってたんだけどな。

 周、思った以上に忙しそうだし。


 待ち時間でさえも僕は周の事ばかり考えている。



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