慣れとは油断と紙一重ながら成長への第一歩でもある
昨日更新しようとしたらメンテ中で書けなかった…。
ジェーンの周りを無数の紫電の紫陽花が埋め尽くす。一瞬で花開いたそれは目を奪われる程美しく、力強い。
バチバチと音を立てる紫陽花は迫り来るエドワードに触れた瞬間に放電して散った。
連鎖的に紫の電気の花吹雪が起こり、土煙を立てる。
倒した!?
身体が鉛のように重い。頭が回らないしクラクラする。魔力がもう殆ど無い。
土煙の中、口をローブで抑えて肩で息をするジェーン。毎日丁寧に手入れをしている杖を地面について身体を支える。
私の切り札『花開く電気』これを防がれたら負け。魔法で攻撃するどころかまともに動けない。
「ゴホッ、ゴホ」
土煙の中から聞こえる軽い咳。ジェーンは降参を決意した。
*
探索者には『嫌な予感、危険信号はよく当たる』という言葉がある。理由は諸説あるが、これまで死線をくぐり抜けてきた経験や鍛えた魔力が五感よりも鋭く察知する為と言う。
一瞬の静寂、ジェーンから溢れ出る魔力を感じる。周りも見えない、音も聞こえない、匂いもしない、そこにあるのは魔力。そしてジェーンの口が動き出すと同時に危機感が全身を刺激する。
この感覚、カイルとの修行で偶に感じたやつだ。全身が凍えるような、暑苦しいような、痺れるような感覚。この感覚のままに従うと5割しか避けられないところを体感8割避けられる。
そして足を踏み出した時、足元に紫電が走り始めた。
極限の集中、1秒が数分にも引き延ばされる。
足が地面に触れると花弁が散り始めた。
それに呼応して他の花弁が花吹雪を作り出す。
僕が後ろに下がったのは花吹雪とほぼ同時だった。
これ喰らう!
後ろに跳びながら電撃に備える。盗賊のような防御力が無い役割の僕が備えたところでダメージは殆ど変わらない。しかし、静電気も来ると分かれば少しはマシな物である。
………
大きな音と共に土煙が発生した。
………
あれ?
いつまで経っても身体を走らない電撃に煙の中で首を傾げる。
気づくタイミングちょっと遅れちゃったのに?カイルやランディの魔法だったらあのタイミングは絶対に『生存する腕輪』発動コースだったけど…。あの2人の魔法速度ってこの大会では次元が違うくらい速いの?
心を整えようと深呼吸をする。
「ゴホッ、ゴホ」
土煙が喉に入った。
鼻と口を服で覆い、息を整える。
確かにカイルとランディはBランク、前ちょろっと言ってたけど特にカイルは魔法速度なら王都5本指に余裕で入るって聞いていたような。
もしかして2人(特にカイル)の理不尽な速さの魔法を避けているうちにこのくらい慣れちゃった?そりゃ『生存する腕輪』があるとはいえね。それにチャージ切れていてもやってたし、命の危険があればそれは必死になるか。
でも修行の最初の方の僕殆ど見えなかったのに…、慣れって怖い。
自分と人体に戦々恐々としている内に土煙が少しづつ晴れてきた。
僕はすぐに思考を切り替えて集中を取り戻す。
無傷の僕を見たジェーンの顔は青褪め、どこか悔しそうな表情を浮かべる。
ジェーンは僕をじっと見つめた後、弱々しい震えるような声を出した。
「私、ジェーン・スミス、降参します」
「ジェーン・スミス降参、よって優勝はエドワード・クレイ」
新人探索者大会の優勝が決まった瞬間、僕は疲れと睡眠不足からか喜ぶ間もなく地面にへたり込んだ。
この新人探索者大会編は後1話を予定しています。
しかし、この先も物語はざっくりですが決まっているので続けて読んで下されば幸いです。




