元《怪盗》アレックス・ビューラー・ドライアー
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18:00に再び探索者ギルドの部屋に入るととほんの数ヶ月前まで見慣れていた格好のアレックスが立っていた。
「アレックス、君が出るの?」
「現状それが最善策だ。エド君の救出と行方不明者の保護、『蜂』の撲滅にはね」
朝の作戦会議で使用していた地図のある範囲を指でなぞり、確認する。
「エド君の担当ってここら辺だよね?」
「そうだよ」
「分かった。片っ端から確認して来る。ちょっと待ってて」
アレックスの手で部屋のカーテンと窓が開かれる。
飲み物を買って来るノリでアジトを突き止めるつもりのアレックスに声を掛けようとすると此方を見透かしたように話す。
「心配すんなって。俺を誰だと思う?お前らの元リーダー、《怪盗》のアレックス・ビューラー・ドライアーだよ」
「そうだったね。じゃあ、気を付けて」
見送りの言葉を聞くと暗くなりきっていない闇夜に消えていった。
元《怪盗》アレックス・ヴァンダー、旧名アレックス・ビューラー・ドライアー。
全ての罠を容易く解除し、影のような速さを持つ男。
大勢が避ける旨味の少ない依頼を好んで受けた元Cランク《悪食》フレディ・ドライアーと治癒魔法に長けた元Aランク《聖魔女》アイリス・ビューラーの間に生まれる。
アレックスは幼い頃に両親を失った事から両親の姓を残した。
瞬く間にアレックスの名が轟くも、自らの意思で探索者を引退し、婿に入った。
そんなアレックスが再び探索者として活動するのは何のためか。
窓を出る際に目に映ったアレックスの顔には笑みが浮かんでいた。
「やっぱりアレックスは変わらないね」
「そうか?だいぶ変わった気がするけど」
一人で懐かしい思い出に浸るランディの顔にもいつもと違う笑みが浮かぶ。
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街の屋根を伝って瞬く間にエドワードの担当地区周辺に着く。
「ここら辺でエド君が居なくなったのか」
そう呟くと怪しい建物内を虱潰しに探し始めた。
「あそこ、なんか怪しいな」
小1時間探した頃、大きな看板が目に入る。
廃地区に似つかわしくない建物。
勿論廃地区にも店はある。
上手く偽装できている。
しかし長年の勘が言っている。
エド君が攫われた場所かどうかはまだ分からないが「あそこがアジト」だと。
ランディとリリスの小遣い稼ぎに何度も付き合った自分から言わせてみれば確実に組織のアジトだ。
もしエド君の奴らと違ったら、後で2人に教えて潰してもらおう。
少し集中した後、店番の目を盗み店内へ入ると鍵の付いた扉があった。
元《怪盗》と呼ばれた俺でも大人数に囲まれては流石に見つからない事は出来ない。
そこで腕輪を触れる。
透明になり、周りから目視できなくなる。
魔道具《透明腕輪》一時的に透明になる魔道具。使用し続ける程消費魔力が二次関数的に増える為、連続では5分程度しか持たないが強力な魔道具だ。《透明》シリーズでは安い方だが、買うとなると余裕で9桁行く。
一息入れた後、容易く解錠して扉の先へ進む。
地下へと降りて行ったアレックスは直ぐにエドワードが檻に捕えられているのを発見した。
エド君は簡単に見つかった。
早く戻るぞ。
(ここに帰って来た時がお前ら『蜂』の最後だ)
アレックスの心の中で闘志が燃え上がる。
巣に近づく火に蜂は未だ気付いていない。
最近、書きたい部分が思ったより短くてビビっています。だから明日予定のやつをくっつけました。
これからは短いのが続くかもしれませんがご容赦下さい。1日1話か2話が限界なのです。




