『Hell side 2-9 あなたの知らない世界』
『Hell side 2-9 あなたの知らない世界』
研修資料、最後のページを開く。
【あなたの知らない世界】
・智川のいる死後の世界
・地獄へ道づれを通った先に存在する
・我々のいる世界と死生が表裏
・相互に転生する世界
・智川は死後の世界で生きている
・アイテムは転生する魂の先走り
・アイテムは死節者が手に取って存在が確定する
・ゼロ界を共通とする
「死後の世界は説明しても伝わらないかもしれん」
所長が読み上げたあと、諦め気味に言う。
「どう?意味わかる?」
所長が逆に三弥栄へ尋ねる。
「いや、ちょっと...死後の世界に生きてるって、もう、何だかとっても詩的な...ポエリーで自分には難しいかな...」
三弥栄は複雑な心境を語った。
「あっちからすると私たちが死後の世界なのよ」
H2Bがクルクル椅子と太ももの間に手を挟んでクルクル回しながら口走る。
「あっ」
三弥栄が察する
「そう言うことなの?」
H2Bの一言で何となく理解した。
つまり、死生表裏、互いに死んだ先、生まれ変わる世界、どっちにとってもクルクル椅子のように死生が回る「死後の世界」なのである。
「どっちも生きてんのか」
「そう言うことだ。あっちで生きてる智川がこっちに化けて出て、三弥栄を呼んだ。アイテム仕上がってますよってな」
「今朝、うんこ踏んでたのがそれか」
三弥栄は研修で説明を受け、改めて意味を知る。
「なので、死後の世界に先走りして現象した、お前の魂の欠片であるアイテムを取りに行く必要がある。アイテムは自身が直接手に取るまで不安定なんだ。放っておくと消えちまう」所長が補足する。
「何が目的で、どう言う必要性があって、これを行っているのかわかりました」三弥栄が理解を告げる。
所長は続ける。
「地獄へ道づれってのは、先走った魂の欠片でアイテムの元である、魂の本体を連れ去ろうとする現象だ。失敗すると、死んでどこかに転生することになる」
「棺桶に片足突っ込んだ感じっすね」
「上手いこと言うね。最後に、集合無意識は智川の世界と共通している。CTへ対応する為、お互いOK牧場で協力して共闘することになる。戻ればまた智川とも会うことになるから、よろしくな」
所長に言われ、三弥栄はスケールがどこまで膨らむのかとおかしくなって来た。
「承知しました。アイテム持って帰ります」
三弥栄は準備が整ったと気合いを入れる。
これから諸手続きの後、三弥栄は鎮静剤を打って意識を低下させ、テープで目と耳と口を塞いだ状態で宇宙服に詰め込んで、死節管理部へ放りこまれる。
地獄へ道づれが始まる。