『Hell side 2-7 ふくりゅうえん』
『Hell side 2-7 ふくりゅうえん』
モヤモヤする。三弥栄は「不苦龍炎」にモヤモヤしている。ちゃんと考えた名前とは思えない。苦しくない龍の炎。「不苦龍炎」。効果が無さそうである。文字面の意味で考えると、痛かったり苦しかったりしなさそうである。敢えてなのか?その辺がモヤモヤしてるので実際に「力」を見てみたいと思っている。
自分の力を使ってみたい。
所長の力を見てみたい。
「やんのか、三弥栄」と所長に煽られ、三弥栄は強気に出る。
「逆に、断るなんて選択肢はあるんですか?」
自分に認められた特別な「力」。これを簡単に無視することはできないはず。自分が加わることでCTとの戦いに少しでも利するなら無理にでも死節者として地獄へ道づれに放られるのだと三弥栄は想像して、これは選ばれし者の悲しい定めだと自分にほろ酔っている。
「無理しなくていい。失敗したら死ぬぞ」
「え?」
「うん?」
互いに表情を伺う。
所長は何かを察して「あー、匂わせてごめん、無理しなくていいんだ。本当に死んじゃうから、その気になっちゃうよね、ごめん」と言って無理強いをしない。
所長に引き止めるつもりがない。
肩を透かされた三弥栄は「死ぬぞ」「本当に死んじゃうから」と言った所長の言葉の意味を改める。
力が欲しいではだめだということだ。
死ねるのかどうか、殺せるのかどうかを聞かれている。
「断ったとしても、三弥栄は今と何も変わらない。我々の心配などもっての外だ。これは、お前自身がどう生きてどう死ぬかの問題だ。三弥栄がこの段階でその覚悟を持てるのか、俺は見極めなくてはならない。試さざるを得ないんだ」
資料を読むだけだった所長のギアが一段上がっている。三弥栄に覚悟を突きつけた。
覚悟は湧いている。ゆらぐかも知れない。三弥栄は1つ楔を打って退路を断つ。
「やります。但し、給料を上げて下さい」賃金の交渉。
「死ぬには安すぎる」三弥栄は率直な意見を述べる。
所長はその返しを聞いて「覚悟有」と判断する。
この覚悟から行われる契約行為を含め「地獄へ道づれ」という事なのだろう。
「よし、三弥栄、次のページを開こうか」
所長と三弥栄がページを捲る。
【ゼロケイ】
・国家公安委員会の異局が管轄
・死節者が隊員の部隊
・公安異局の特務、零号警備、通称ゼロケイ
・特務ELVが繋ぐ「0階(ゼロ界)」に発生するCTを倒す
・お給料と年金が良い
「な、そう言うことだ」
所長が資料読み上げモードに戻る。
三弥栄は躊躇わず聞く「お給料はお幾らなんですか」と。