『Hell side 2-6 アイテム』
『Hell side 2-6 アイテム』
「鎮静剤で意識朦朧とさせたのち、目と耳と口をテープで塞いだ上から宇宙服を着せて、あの部屋に放り込まれるってことですか?」
「そうだ、安心、安全だ」
「そうよ、安全で安心よ」
H2Bが所長に続ける。
そう言ってH2Bは「パイプ椅子」を机に乗せた。
その横にナイスガイが続けて「黒帯」を置く。
「で、これだ」
所長は古びたZIPPOをポケットから取り出して置く。
「これがアイテムだ。ページを捲ってくれ」
【アイテム】
・死後の世界で生成された物質。「力」がある。
・生成の因果は死節者
・使用できるのは生成の因果である死節者のワンオフ
・智川が管理している
・智川が発生に合わせ因果である死節者を呼ぶ
・「力」は使用してみなければ分からない
・「力」は集合無意識下の現象と影響にのみ有効
「な、そう言うことだ」
所長がまた読み上げて終わらそうとする。
「所長、自分のアイテムが死後の世界に仕上がってるってことですか!?」
「だから、そう言うことだ」
所長が同じこと言わすな的雰囲気を出す。
そこまで言い切ってくれよと、なんで知ってる前提なんだよと、最初に提示してくれよ、ってか所長もアイテム(力)持ってんのかよと三弥栄は思う。
「俺の黒帯は、巻くとCTを直接殴る蹴る出来るんだ」ナイスガイが説明する。
「私のパイプ椅子はOK牧場で負ったあらゆる傷、病、毒、心的外傷を壊して治すことができるの。現実世界で転んでも知らないんだから」H2Bはそう言うことらしい。彼女は医者でもなんでもない。現実世界で転んで挫いても痛いままだ。
「このZIPPOで火を付けたタバコを吸って吐く副流煙は、その日の体調次第だが、CTを煮たり焼いたり溶かしたりする。こいつを俺は不苦龍炎と呼んでいる」
三弥栄は、ここまでしれっと話を聞いてきたが、所長のアイテム(力)を聞いて「龍っていうか、モルボル(くさいいき)みたいだな」と思った。さらに「不苦龍炎は無いわ」とおっさんの中に息吹く少年誌感覚を疑った。
現状、三弥栄は所長をダサいと思っている。
「2人の力は実際に見たから大丈夫だな。改めてここまでの内容に何か質問はあるか?」所長から質問タイムが来た。
「H2Bさんは、救護室で傷を壊してましたけど、力って外で使えないんじゃないんですか?」三弥栄は割とするどい。
「それはね、傷がCTの所為で負った傷だからよ」H2Bが答える。
「黒帯って、どうやって使うんですか?」
「腹に巻くと、直接殴る蹴るできるよ」ナイスガイの返答だ。
「所長の体調によって息の効果が違うって、具体的にどのような......」
「息じゃない、炎だ炎」
質問が尽きなさそうなので所長が締切る。
「細かいことは追追分かる。まずは三弥栄、地獄へ道づれ、やんのか?」所長が三弥栄に問う。
研修のターニングポイントが来たようだ。
三弥栄は仕上がっているという、自分のアイテム(力)が何なのか、めちゃくちゃ知りたい。気になっている。