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『Hell side 7-4 器』

『Hell side 7-4 器』


どうやら、ワンはどこかに隠れて洗脳電波を出し続けているだけで、八百万を焼き払われたことに気付いていない。

現場を見ないのか、何かあれば現場ごと切り捨てられるような構造主のようだ。


「俺と龍美のアイテム狙いか……」

虎太郎が呟く。


「つまり、俺の演奏と龍美の攻撃で倒せばいいってことだな──三弥栄君、ワンがどこにいるかわかる?」


三弥栄は洗脳電波を受信し続けている。

「ワンさまは、全能。ワンさまを理解できる特別な者でなくては、現在受信することができません。番号をお確かめのうえ、おかけ直しください」


「あっ……」

部隊が全員気付く。

「三弥栄が洗脳されている」と。


「わたしは、構造支配意識――ワン。この世界の構造主。お支払いしなければ、何かしらに呪われて地獄へ落ちるぞ」

三弥栄が仕上(洗脳)った。


「汝、お支払いせよ」


お支払い請求がきた。虎太郎が確認する。

「わかりました。おいくらですか?」


「汝のスーツと、ブレスレットをお支払いせよ」


「話の流れ、そうくると思っていました」

虎太郎は頷く。

「私のスーツをお支払いします」と言って、「ナイスガイ、三弥栄君を縛って、ワンのところへ連れていってもらおう」と、三弥栄を繋いで泳がせる作戦を仕掛けた。


虎太郎がスーツを脱ぐ動作で惹き付けておきながら、ナイスガイがひっそりと三弥栄を結び、物資の積まれたバスに繋げる。

完了を確認して虎太郎は三弥栄にスーツを渡す。


受け取った三弥栄が全力で走り出した。

繋げた紐がバスを引っ張り、三弥栄の走りをいなしながら抑える。

三弥栄を馬車馬として利用するつもりだ。

ナイスガイが補助して初動の慣性を働かせる。

動き出したバスに部隊は乗車し、ナイスガイが運転席でハンドルを握る。


洗脳された三弥栄を元に戻す方法を考えなくてはならない。


ワンに遭遇して、三弥栄の本で読み取り、虎太郎と龍美で仕留めて、

三弥栄が第二層の構造を乗っ取りたいのだが、三弥栄が乗っ取られている。


元に戻るには、機を見て自分の意思で「三弥栄文楽」と名前を言わなくてはならない。

馬車馬洗脳状態ではできない。


行き先も先行きも不明のバスが進んでいく。


バスを引っ張りながら休憩なしで走り続けて一時間。

三弥栄が止まる。

慌ててナイスガイがブレーキを踏む。急停止。

三弥栄の背後、ギリギリの距離で止まった。


肩で息をし、滝のように汗をかく神様コスプレの三弥栄。

両膝をつき、手を合わせて拝む。

「どうかワンチャンください」と祈願した。


光が空間の照らし方を変える。

光学迷彩のような視覚処理が施されていくと、そこには三弥栄っぽいシルエットが浮かび上がる。


「こいつ(ワン)は実体がありません。逆探して取り込みました。

これも表層化された断片ですが、直接繋がっています。本で読み込ませます」

謎のシルエットはそう言うと、三弥栄ギ・ワンが本を持って三弥栄シルエットに触れた。


「ぽふぅ」と音がする。


現れたシルエットは受信波を遡った「三弥栄」だった。

自ら自らを操り、本による読み込みに成功した。


ゼロを取り込み、構造支配意識の膜を持つ三弥栄は、

ワンの洗脳電波受信をあえて受け入れ、ゼロの膜で意識を隔離して洗脳電波を遡っていた。

身体を空の器にしていた。


虎太郎の取った作戦と噛み合ったのである。決して相性は悪くない。


「中に入ってわかった。

実体を持たないワンは、虎太郎のスーツが奏でる音の波動で表層化してくる。

表層化したワンを龍美とドラミの火が内部まで侵入して焼き消す。

二人はワンをDELETEできる。だからワンは二人のアイテムを支払えと言ったんだ」


三弥栄が、ワンの構造をハッキングして中から暴いた。

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