『Hell side 6-6 金貯めた』
『Hell side 6-6 金貯めた』
「やっちまった」
素のナイスガイがこぼす。
ゼロは、はだけた布を纏い直し、黒帯を腰に結ぶ。
「そうか、そういうことか!! そうやって最後まで抵抗しようとしていたわけだ。アホ男子め!!」
黒帯を締めたゼロは、男子の持つ何かしらの決定的な倒錯──
最強たらんとするその志を「アホ」と理解した。
「では、パパ、これはどうする?」
両手を右腰に当て、中腰になるゼロ。
構造支配意識が、奪ったアイテムの能力を使役する。
「かぁ〜」「ねぇ〜」「たぁ〜」「めぇ〜」「たあぁ~!!」
──「カネタメタ」
あの神話のあの技を、黒帯を締めたゼロが
**メタ認知改変応用で“メタ打ち”**した。
「えっ、待って?」
放たれた光線を片手で受け止める者がいた。
キラキラと光るハリーが、ナイスガイの前に立ち、
右手のひらでカネタメタを受け止めている。
「ありがとう、ナイスガイ。あなたが戦っている間に気づいた。
浮腫みが原因だったのよ。あの時もそうだった。
ピラティスでケアして、ハーブティーを飲めば──無敵……」
男児が、己が最強と身を呈して戦う最中、
女子はピラティスによって無敵を成す。
女子無敵を成すための男児最強。
男児最強であれるための女子無敵が、ここに顕れた。
虎太郎の演奏が変わる。
8つの演奏会用エチュード 思い出 Op.40-4。
ハリーには、父親の思い出があまりない。
2005年、ロンドンで起こった悲しい出来事に父は巻き込まれ、帰らぬ人となった。
どこかの街並みを、父の大きな体に肩車されて歩いた記憶が、ぼんやりとある。
その後、母方の国・日本で暮らしてきた。
言葉の違い、見た目の違いはあったが、
ハリーが憧れる美しさ、可愛らしさ、優しさ──
それらを共通して理解できる友達に恵まれてきた。
そして、ハリーの生活に不自由がないよう、
父の役割をも含めて支えてきた母の生き方を見てきた。
ハリーは父の悲しみを知るが、父の不在を悲観していない。
それは、環境を嘆くのではなく、自身が環境を整えてきたからに他ならない。
ハリーは、ずっと準備して整えてきた。
──「ハリー」に対して「魔法瓶」が形成された原理である。
虎太郎の奏でるエチュード4番「思い出」が、ゼロから記憶(思い出)を奪う。
ゼロが、今、なぜこの状態なのかが分からない。
エチュード1番を奏で始めた時まで、ゼロと三弥栄の記憶が戻っている。
虚に陥るゼロ。
無敵を盾に、部隊の攻撃がゼロを畳み込む。
ドラミが黒帯を奪い返して、ナイスガイに渡した。
ゼロの反撃はすべてハリーが受け止める。効かない。
ドラミと久慈の攻撃に翻弄され、ナイスガイの攻撃を喰らい続ける。
「ティロリ・ティロリ」
本が仕上がり音を鳴らす。
三弥栄は、何かが鳴ったような気がしたが、虎太郎の演奏でよく聞こえていない。
音を聞き過ごし、演奏のデバフでゼロを読み込んだ記憶も飛んでいる。
次にページを開くまで、仕上がりに気づくことはないだろう。
ゼロは、ナイスガイのすべての攻撃を、為す術なく、分解し
切るまで叩き込まれて、消えた。




