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『Hell side 5-4 アリゲーターのままで』

『Hell side 5-4 アリゲーターのままで』


調子に乗って突っ走ったナイスガイは、怒られてしょんぼりしている。大人がちゃんと怒られる姿は、見てていたたまれない。


害獣(人間活動に害をもたらす哺乳類に属する動物一般)と化した昭和男性像。自身の洗濯への理解不足は非常によろしくなかったとナイスガイは省みる。自分の行動が少年誌黄金期の栄光を傷つけることの無いよう、自分自身の変革に努めながら、過ぎし日への望郷と哀愁を漂わせる。


しょげるナイスガイに「捕まえといてくれてありがとう」と三弥栄が声をかける。ナイスガイはニコリと笑って右手の親指を立て、三弥栄の胸にあてた。ナイスガイは行動で示す敬意が好きである。


「どうすんの?洞窟入る前に鰐になっとく?」

ハリーが確認する。


これが物議を醸す。

三弥栄の能力には3つの問題がある。

①虎太郎のグランドピアノとすこぶる相性が悪い。

②本人に戻る時、瀕死状態の場合がある。

③「②」に至るため、連続して使えず試しにくい。


とりあえず三弥栄は本のページを捲った。

本は百鰐(大)を加えて改稿されている。そこには、図とステータスが表記されていた。


本の能力が拡張している。CTの各種ステータスのパラメーターが数値表記され、使うスキルやCT化の原因である暴走意識の内容まで解説してある。本が図鑑化・トリセツ化している。


「商業化へ向けてのマーケティング失敗でこう(CTに)なっちまったのか」

三弥栄は百鰐(大)の中で対立する意識の連結に触れて、言葉の暴走を悲しむ。


久慈は「洞窟に入る前に、三弥栄の能力の検証はしておいた方がいい。幸いH2Bがいる。中に入ってからだと状況に対応しきれない場合がある」と言って三弥栄を伺う。


要は、三弥栄がH2Bの破壊復込み(死にかけからの回復前提)で百鰐(大)への変態を行うかどうか、である。


三弥栄は予防接種の注射を待つ小学生のように恐怖している。泣かないと思っていた友達が泣いた時の恐怖は計り知れない。“そんなに痛いのか”と。肩を脱脂綿で抑えながら教室に戻る友達に「痛くなかったか」と必ず聞いてしまう。何度も破壊復を喰らって生還した三弥栄の経験則と、共感性から来る恐怖のフラッシュバック。


これまでPTSDトラウマは都度に破壊復されたが、時間が経つと湧いてくる思い出し笑いならぬ、思い出し恐怖。感情とはそういうものである。


――そんなのは理解っている。


三弥栄は痩せ我慢を決行。

「大丈夫です。やってみます!!」


ページを開き、大きめの声で恐怖を痩せ我慢。

「百鰐(大)」と音読した。


金髪ロン毛。

グラサン。

赤いレザー(鰐革)ノースリーブジャケット。

赤いレザー(鰐革)スキニーパンツ。

赤いロングブーツ(鰐革)。

発達したシャクレに咬合力の強度を感じる。

胸元を広げたジャケットからは確かな毛量。

野性味溢れるワイルドセクシーな男性。

肩に刻まれた文字のみ、「百」に代わって「三」の表示。


先程、ナイスガイに首を捻り切られた百鰐(大)が、三弥栄に完全再現された。


三弥栄(百鰐)が、ジャケットのポケットに常備されたブルーベリーサプリを食べて言う。

「これが…わかさ(生活)か……」


「ナイスガイ、試せるか?」

久慈がナイスガイと比較して三弥栄(百鰐)の実力を測る。


パワー、スピード、跳躍。

身体能力は、他のCT(大)と申し分ない。ナイスガイから仕掛けた攻撃にも順応できている。


この状態であれば熊問(小)の時のように腕を引きちぎられることもない。CTへの十分な実力が担保された。


虎太郎がCTへのデバフではなく、部隊へのバフを主とする演奏を行えば、三弥栄への影響は抑えられる。応用性は狭まるが戦術的に機能できる。


「いいじゃん。何があるか分からないから、とりあえずこのまま洞窟に入ろう」

能力を確認した久慈が、金髪ロン毛のままでの洞窟侵入を決定。


「洞窟入る前にスタート地点に立てたね」

虎太郎がホッとした様子で三弥栄に声を掛ける。


「キモい」ハリーにはワイルドセクシーが通じない。

「待って、顎髭と胸毛繋がってない?」龍美にも通じない。

「男っぷりよ」H2Bに通じる。


洞窟の入口が“ひゅるる”と風の音を立てて誘う。

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