『Hell side 4-5 女子とはなんぞや』
『Hell side 4-5 女子とはなんぞや』
「まぶしっ!!」
部隊全員が突然の発光体出現に目を眩ませた。
光が収まり、目を凝らすと――ハリーの首から上は何かに覆われていた。
グラサンをかけ、赤いノースリーブジャケットを羽織り、金色の身体をした鰐。両肩には「百」の文字が刻まれている。CT「百鰐」。
ハリーの頭が鰐の顎に挟まれている。
ハリーの発光は、百鰐のグラサンで遮断され、奇襲へと転じられていた。
「奇襲!!」
虎太郎が叫ぶ。後手に回った。
百鰐はハリーを地面に叩きつけて倒す。
ハリーの頭を挟んだまま呻き声を上げ、身体をグルグルと高速回転させる。首を捻り、千切りにかかった。
回転の最中、ハリーが百鰐の顎を手に持って外す。
「もうー、そういうのやめな~」
まるで悪ふざけする男子をたしなめるように、軽いトーンで百鰐を叱った。
ハリーは無傷――ダメージは微塵もない。服も髪も汚れない。埃すらつかない。事態(CTの攻撃)を恐れる様子もない――場を支配する胆力が発生している。ハリーがキラキラと輝きを纏っている。
「ハリーの能力……」
部隊全員が察知する。
ハリーは外した顎を閉じて、百鰐を吊るし持つ。百鰐は百秒で捕まった。
吊るされたままピチピチともがく百鰐を、ハリーは三弥栄に向ける。
「ん!!」
「え?」
「んっ、んっ!!」
「え?あっ、ああー」
押し付けられる百鰐の意図に三弥栄は気が付いて、本を用意する。
ハリーのそれは、「義理チョコだからね」と乙女のベールを被せて渡す、聖バレンタインデーの様式美。
三弥栄はちょっと考えて、どうせならと、叩くのではなく、そっと触れてみた。
「ぽふぅ」と柔らかい音がする。
――やはり。
三弥栄の感が当たった。叩くまでもなく、触れることでCTの情報を取り込むことが出来ると分かった。ここから本の音が鳴るまでの時間を測る。
獲れたてピッチピチの百鰐はH2Bのパイプ椅子でシバかれて分解された。
ハリーの発光に乗じた百鰐の奇襲は、奇しくも能力の発動と同時だった為に失敗に終わった。奇襲のタイミングや狙った人物が違えば、部隊に深刻なダメージが残っていた。
「危なかった」
紙一重だったと俯瞰する虎太郎は、運が良かったと胸を撫で下ろす。
そして、ハリーの能力。
魔法瓶の中の液体を摂取することで「輝き」、百鰐の攻撃一切を受け付けないだけでなく、あれだけビビっていた恐れが消えている。
「女子とはなんぞや」
女子とは、
究極の「自己肯定」。
至高の「自己陶酔」。
ゼロ界という境地は、アイテムを通して、男の求める「力」と女の求める「力」とを等価に映し出す。
魔法瓶の不思議な液体――「ハーブティー」。
飲んで自分に酔う。酔えば酔うほど強くなる。
「女子力こそパワー」×「かわいいは正義」=「女子無敵」
これが、ハリー堀田の魔法瓶による「自己陶酔魔法」の効果である。
「私は、今、宇宙で一番かわいい」
銀河は、女子力でカールして渦巻く。




