『Hell side 4-3 月と洞窟』
『Hell side 4-3 月と洞窟』
久慈の戦闘記録から、熊問(小)と三弥栄のコンタクトを解析する。
接触は2回。
① 三弥栄が本の角で熊問(小)を叩く
② 熊問が三弥栄の左手を持って引き千切る
能力発動の可能性とするならば前者。
「三弥栄が本の角でCTを叩く」が発動条件の1つと考えられる。
そして、本が鳴らす音。鳴る前と鳴った後、何が違ったかと言えば、閉じたままの本が開いたこと。
つまり、角で叩くことで始まり、音が鳴ることで仕上がったと考えられる。
さらに、ページを開いて三弥栄が行ったのが「音読」。
読むことで熊問(小)へと変態した。
叩く。鳴る。読む。
久慈は能力が発動しきるまでの工程をそう仮定した。
久慈は三弥栄にそれを伝える。
「なるほど。それはそうと、どうやって戻ったら良いんですかね」三弥栄は戻り方が分からない。
「試しに自分を本の角で叩いてみたら?」
三弥栄が熊問に変態した工程そのままを、三弥栄自身に充ててなぞることを龍美が提案する。
「確かに。仮定を試せる」
H2Bは頷く。
「待って、その前に試します」
三弥栄が閃く。
「三弥栄文楽」
叩く前に読む。本名を声にした。
熊問(小)から三弥栄にメタモルフォーゼした。
名前を言ったら自分に戻れる。確定である。
「すごい。もう1回やって、もう1回」
ハリーがご家庭で行う手品感覚でアンコールする。
「熊問(小)」
三弥栄がページを開いて名を読み上げると再び熊問(小)へと変態。
「あ、あんまりやり過ぎない方がよいのでは……」
虎太郎の懸念。
「三弥栄文楽」
三弥栄が名乗り、ご本人に戻ると、目と鼻と耳と口から血を垂らして倒れた。
「やばい。H2B、いけるか?」
久慈が破壊複を指示する。
「ちょっと微妙だけど、トドメになったらメンゴ!!」
そう言って三弥栄の頭をパイプ椅子でシバく。
「あふう」
三弥栄が元に戻った。能力の副作用的なダメージに破壊複が効く。熊問(小)、つまりCTによるダメージと識別されたと考えられる。
何度も連続してやるべきではない。三弥栄はそう学んだ。
「これは……CT限定、なの?」
龍美がもう一歩踏み込む。
「確かに。人で仮定を試せるかも。なっ、ナイスガイ」
H2Bは頷いてナイスガイを推す。
適任であると一同は感じている。
「いいよー」
ナイスガイはナイスガイだ。軽い。仕事を選ばない。
三弥栄はどうせなら別の……と言いかけてやめた。
「了解です。では」
本の角でナイスガイの頭を小突く。
「あつっ!」ナイスガイがおでこを摩る。
The Bookは割と重いので、自重が痛い。
「あ、地震」
ハリーが揺れに気づく。
ゆらゆらとした緩やかな揺れが数秒の後、激しい縦揺れが襲い、ゼロ界が歪む。
本でナイスガイを小突いたから?
タイミングから全員がそう思ったが、三弥栄の能力発現がトリガーとなって起きたゼロ界の変動(地震)。誰もそうと知る由がないので、「二度と本で人を小突くまい」と三弥栄は誓った。
そして、無線が鳴る。
「特務ELVシステムダウン。ゼロ界設定不可」
OS側も含む、双方に地震が影響している。
部隊は、ゼロ界から帰還不能となった。
地震が収まり見渡すと、平野だった地表が隆起して目の前に洞窟が現れ、空に白月が昇る。
ゼロ界の景色が変わった。




